年表:動物の権利

1975

動物の解放」出版 ピーター・シンガー(著)
 ※出版後、動物の権利・解放運動が急速に拡大していく。

1978

10月27日
動物の権利の世界宣言 原文(UNESCO:国連教育科学文化機関本が発表)

1989

動物の権利の世界宣言 改定(UNESCO:国連教育科学文化機関が発表)

1994

GAP:Great Ape Project:大型類人猿プロジェクト 発足(設立者 (パオラカヴァリエリ/ピーター・シンガー)

1999

ニュージーランド|大型類人猿に法的権利を与えた

2000

動物福祉に関する世界宣言:UDAW:The Universal Declaration on Animal Welfare(WAP/RSPCA/IFAW/HSUSのプロジェクト) 

2001

大型類人猿の権利宣言 原文(パオラカヴァリエリ/ピーター・シンガー)

2007

NhRP:Nonhuman Rights Project:人権以外の権利プロジェクト設立(弁護士 スティーブンM.ワイズ)

2009

リスボン条約
EUおよび構成国は、動物が感覚のある生物であるので、動物の福祉を十分考慮しなければならない。

2010

5月
鯨類の権利宣言

2011

動物の権利宣言:地球環境保護団体 OurPlanet

2013

6月
インド|鯨類を「人類でない人」と認める

2014

12月
アルゼンチン|裁判所がオランウータンを「人間ではない人」として認める。

2015

フランス|フランス民法典が、これまで動産としてきた動物を、知覚能力のある生物として認めた

スペイン|カスティーリャ・レオン州トリゲロス・デル・バジェで、犬と猫は「非人間の住民(non-human residents)」であるとし、権利を認める条例が可決

2018

インド|インド州が動物に法的人格を認める判決

アメリカ|NhRPによる、チンパンジーのペアに権利を認め解放を求める裁判が、NY最高裁判所で否決された。

1989 動物の権利の世界宣言(改定版)

前文

「生命」はひとつであり、すべての生物は共通の起源をもち、種の進化の過程において分化してきたことに鑑み、
すべての生物は生来の権利をもち、神経組織をもつすべての動物は特別の権利をもつことに鑑み、
これら生来の権利の無視、否(いな)、単なる無知すら「自然」に対する重大な侵害をひき起こし、動物に対する犯罪を人間に犯さしめることに鑑み、
世界における種の共存は、人類が他の種の生存権を認めることを前提とすることに鑑み、
動物の尊重は、人間自身の間の人間の尊重と不可分であることに鑑み、
つぎのように宣言する。

第一条

すべての動物は、生物学的均衡(equilibres biologiques)の枠内で、等しく生存の権利をもつ。この平等性は種ならびに個体の間の差異を覆い隠すものではない。

第二条

すべての動物(vie animale)は、尊重される権利をもつ。

第三条

いかなる動物も、虐待または残虐行為の対象とされない。
A動物を殺すことが必要な場合には、即座に、苦痛なく、不安を生ぜしめないやり方で死にいたらしめなければならない。
B死んだ動物は品位(decence)をもって扱われなければならない。

第四条

野生動物は自然な環境のなかで自由に生き、その中で繁殖する権利をもつ
A野生動物の自由を長期間奪うこと、娯楽のための狩猟と釣り、そして生命維持に不可欠でない目的での、あらゆる野生動物の利用は、この権利に反する。

第五条

人間が自分の支配下においている動物は、扶養され、注意深く世話をされる権利をもつ。
A前項の動物は、正当な理由なく、遺棄され、死に至らしめられてはならない。
B動物の飼育・利用の形態がいかなるものであれ、その種に固有の生理と行動を尊重しなければならない。
C動物を使った展示、見世物、映画もまた動物の尊厳を尊重し、暴力を一切含んではならない。

第六条

肉体的・心理的苦痛をともなう動物実験は、動物の権利を侵害する。
A代替方法が開発され、組織的に用いられるべきである。

第七条

必要なく動物の死を伴う行為はすべて、ならびにそのような行為へといたる決定はすべて、生命に対する犯罪を構成する。

第八条

野生生物の生存を危うくする行為はすべて、ならびにそのような行為へといたる決定はすべて、ジェノサイド、すなわち種に対する犯罪を構成する。
A野生動物の殺戮、ビオトープの汚染と破壊はジェノサイドを構成する。

第九条

動物の法人格とその権利は、法律によって認められるべきである。
A動物の擁護・保護については政府機関のなかに代表者をもつべきである。

第十条

啓発と公教育によって幼いうちから動物を観察し、理解し、尊重するよう、人間を導くべきである。


「動物の比較法文化 — 動物保護法の日欧比較」
青木 人志 (一橋大学助教授) (著)
有斐閣(2002/02)
ISBN 4-641-02772-2

1978 動物の権利の世界宣言(初版)

前文

すべての動物は権利をもつことに鑑み、
その権利の無理解と無視が、これまで人間を自然と動物に対する犯罪へと駆り立て、今後も駆り立て続けることに鑑み、
人類が他の動物種の生存権をみとめることがこの世界における種の共存の基礎をなすことに鑑み、
種の虐殺が人間によって犯され、犯されるおそれがあることに鑑み、
人間が動物を尊敬することは、人間自身のなかの人間の尊重につながることに鑑み、
教育によって、幼いうちから動物を観察し、理解し、尊敬し、そして愛することを教えるべきことに鑑み、
次のごとく宣言する。

第一条

 すべての動物は生命の前に平等に生まれ、同等の生存権をもつ。

第二条

すべての動物は尊敬される権利をもつ。
A動物の種としての人類は、他の動物を絶滅させたり、その権利を侵害することによって動物を搾取したりしてはならない。人間はその知識を動物たちのために役立てる義務を負う。
Bすべての動物は、人間に注目され、世話を受け、保護される権利をもつ。

第三条

いかなる動物も虐待され、残虐行為の対象とされない。
A動物を殺すことが必要である場合は、即座に、痛みや不安を与えないやり方で殺さなければならない。

第四条

野生種に属するすべての動物は、その固有の自然環境、地上、空中、水中の環境のなかで生きる権利をもつ。
Aたとえ教育目的であっても、あらゆる自由の剥奪はこの権利に反する。

第五条

人間の環境に伝統的に生活してきた種に属する動物は、その種に固有の生命と自由のリズムと条件に従って生活し生育する権利をもつ。
A人間が商業目的で強いるこのリズムと条件の修正は、すべてこの権利に反する。

第六条

人間が伴侶に選んだすべての動物は、その本来の寿命をまっとうする権利をもつ。
A動物の遺棄は、残虐で下劣な行為である。

第七条

すべての労役動物は、その労働の期間と強度を適正に制限される権利、体力を回復する食餌の権利および休息の権利をもつ。

第八条

肉体的・心理的苦痛をともなう動物実験は、医学的、科学的、商業的、その他いかなる実験形態であれ、動物の権利に反する。
A動物実験の代替技術が利用され開発されなければならない。

第九条

動物が食用に飼育されている場合は、動物になんら不安も苦痛も与えぬようなやりかたで、食餌と住居をあたえ、死に至らしめなければならない。

第十条

いかなる動物も人間の娯楽のために利用されてはならない。
A動物の展示と動物を使った見世物は動物の尊厳に反する。

第十一条

動物を不必要に死に至らしめる行為は、すべて生物殺(biocide)すなわち生命に対する犯罪である。

第十二条

野生動物の多数を死に至らしめる行為は、すべてジェノサイド(genocide)すなわち種に対する犯罪である。
A環境の汚染と破壊はジェノサイドにつながる。

第十三条

死んだ動物は敬意(respect)をもって扱われなければならない。
A映画とテレビ放送における動物に対する暴力行為は、それが動物の権利の侵害となることを示す目的である場合をのぞき、禁止されなければならない。

第十四条

動物を保護する機構は、政府レベルで代表されなければならない。
A動物の権利は人間の権利同様に、法律によって擁護されなければならない。


「動物の比較法文化 — 動物保護法の日欧比較」
青木 人志 (一橋大学助教授) (著)
有斐閣(2002/02)
ISBN 4-641-02772-2

2001 大型類人猿の権利宣言

われわれは平等なものの共同体を拡張して、この中にあらゆる大型類人猿、すなわち人類、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを含むようにすることを求める。

 「平等なものの共同体」とは、一定の基本的な道徳原則や道徳的権利が、われわれ相互間の関係を支配するものとして、また法によって強制できるものとして認められているような道徳的共同体である。このような原則や権利の中には次のものが含まれる。

1 生存への権利

 平等なものの共同体の成員の生命は守られるべきである。平等なものの共同体の成員は、たとえば正当防衛のように非常に厳しく定義された状況を除いて、殺されてはならない。

2 個体の自由の保護

 平等なものの共同体の成員は、その自由を恣意的に奪われてはならない。もし正当な法的手続きをへずに監禁されるようなことがあれば、直ちに解放される権利が彼らにはある。何の罪の宣告も受けていないもの、あるいは犯罪に責任のないものの拘禁が認められるのは、次の場合に限られるべきである。すなわち、拘禁が彼ら自身にとってよいことと証明されうる場合である。ないしは、自由にさせておくと明らかに他者に危険を及ぼしかねない共同体の成員から、公衆を保護するのに必要であることが証明されうる場合である。そのような場合には、平等なものの共同体の成員は、直接に、あるいは適切な能力に欠けている場合には代理人を通して、法廷に訴える権利をもたねばならない。

3 拷問の禁止

 平等なものの共同体の成員に対して、理由なく、ないしは他者の利益のためと称して、故意に激しい苦痛を加えることは拷問とみなされ不正である。


「大型類人猿の権利宣言」
パオラ カヴァリエリ (著), ピーター シンガー (著), 山内 友三郎 (翻訳), 西田 利貞 (翻訳)
昭和堂 (2001/04)
ISBN-10: 4812201098
ISBN-13: 978-4812201091

1999 ニュージーランド|大型類人猿に”法的権利”を与えた原文を翻訳

New Zealand:
ニュージーランド

Animal Welfare Act 1999
動物福祉法 1999
http://www.legislation.govt.nz/act/public/1999/0142/56.0/DLM49664.html

Public Act       1999 No 142  
一般的法律 1999年第142号
Date of assent    14 October 1999  
1999年10月14日承認
Reprinted as at 1 March 2017   
2017年3月1日転載

This Act is administered by the Ministry for Primary Industries.
この法律は1次産業省によって施行される。

  • Part 1 Care of animals  
    第1編 動物のケア
  • Part 2
Conduct towards animals 
    第2編 動物への行為
  • Part 3 Animal exports  
    第3編 動物の輸出
  • Part 4 Advisory committees 
    第4編 諮問委員会   
  • Part 5 Codes of welfare 
    第5編 ウエルフェア規定
  • Part 6
Use of animals in research, testing, and teaching 
    第6編 研究、実験及び教育における動物の使用
  • Part 7
Provisions relating to administration 
    第7編  管理に関する規定
  • Part 8 Offences 
    第8編 違反
  • Part 9 Miscellaneous provisions 
    第9編 雑則 

Part 6
Use of animals in research, testing, and teaching
第6編 研究、実験及び教育における動物の使用
80  Purposes
   目的
81  Effect of this Part
   本編の発効

Restrictions 制限事項)

82  Restrictions on research, testing, and teaching involving use of animals
動物の使用
を含む研究、実験及び教育上の制限
83  Restrictions on carrying out of projects
プロジェクトの実施における制限
84  Power to carry out certain projects
特定プロジェクトの実施における権限
・84A  Prohibition on use of animals in research, testing, and teaching for making cosmetic
化粧品製造目的での研究、実験及び教育における動物使用の制限
85  Restrictions on use of non-human hominids 
  人間以外のヒト科動物の使用の制限
86  Revocation of approval
承認の撤回

(Codes of ethical conduct 倫理的行為規定

・87  Codes of ethical conduct
倫理的行為規定
・88  Contents of code of ethical conduct
倫理的行為規定の内容
・89  Application for approval
承認の適用
・90  Changes to proposed code 
提示された規定の変更

・91  Approval of code of ethical conduct  
倫理的行為規定の承認

・92  Time limits 
時間制限
・93  Approval to be personal to code holder
規定を保有する個人の承認
94  Duration of approval
承認の継続期間
95  Application for amendment, suspension, or revocation of code of ethical conduct
倫理的行為規定の修正、保留又は撤回の適用
96  Amendment, suspension, or revocation
修正、保留又は撤回
97  Review of decisions
決定の再調査

Animal ethics committees 動物倫理委員会

98  Establishment of animal ethics committees
   動物倫理委員会の設立
99  Functions and powers
   機能と権限
100  Criteria
   基準
101  Membership
   構成員
103  Report of non-compliance
   不履行の報告
104  Protection of members of animal ethics committees
   動物倫理委員会委員の保護

Reviews of code holders and animal ethics committees
 規定保有者と動物倫理委員会の再調査

105  Independent reviews
   独立した審査
106  Purpose
   目的
107  Period to which independent review relates
   独立審査に係る期間
108  Conduct of independent review
   独立審査の施行
109  Accredited reviewers
   正式認可を受けた審査員
110  Performance of duties
   義務の履行
111  Applications for accreditation
   認証評価のための申請
112  Performance standards
   パフォーマンス基準
113  Provisions applying in respect of accreditation and accredited reviewers
   認証評価と審査員に関する適用条件
114  Review
   審査
115  Report
   報告
116  Level of compliance
   適合性の水準
117  Power of Minister to commission review
   委員会の審査に対する省の権限
118  Power of Minister to approve research or testing
   研究や実験の許可に対する省の権限

Penalties 罰則

119  Penalties
   罰則


  • 85  Restrictions on use of non-human hominids 
    85  人間以外のヒト科動物の使用の制限

    (1)No person may carry out any research, testing, or teaching involving the use of a non-human hominid unless such use has first been approved by the Director-General and the research, testing, or teaching is carried out in accordance with any conditions imposed by the Director-General.
     何人も、人間以外のヒト科の動物の使用を含む研究、実験又は教育を行うことができない。ただし、それが第1次産業省長官によってはじめに承認された使用であり、その研究、実験又は教育が第1次産業省長官によって課せられるあらゆる条件に従ってなされる場合は、この限りではない。


(2)The Director-General may, in giving approval under subsection (1), impose, as conditions of that approval, such conditions as the Director-General thinks fit.
  (1) のもとで承認を与える第1次産業省長官は、その承認の条件として、当該長官が適切と考える条件を課すことができる。

(3)The Director-General may from time to time, by notice in writing to any person holding an approval under subsection (1),—
 第1次産業省長官は、文書による通知により、 (1)のもとで承認を得る人々に対して、適宜、次のことを行うことができる。

  (a)  revoke any condition of that approval:
    承認条件の撤回。
  (b)  revoke any condition of that approval, and impose another condition in its place:
    承認条件の撤回と、それに変わる他の条件を課すこと。
  (c)  amend any condition of that approval.
    承認条件の修正。

(4) The Director-General must consult with the National Animal Ethics Advisory Committee before exercising the powers conferred by subsection (1) or subsection (2) or subsection (3).
 第1次産業省長官は、(1)、 (2)又は (3)にかかる執行権を行使する前に、国立動物倫理諮問委員会に相談をしなければならない。

(5) The Director-General must not give approval under subsection (1) unless he or she is satisfied—
 第1次産業省長官は、申請者が次のことを満たしていない場合に、(1)のもとで承認を与えてはならない。

  (a)  that the use of the non-human hominid in the research, testing, or teaching is in the best interests of the non-human hominid; or
    その研究、実験又は教育における人間以外のヒト科の動物の使用が、人間以外のヒト科の動物にとって最大の利益となる場合。又は

  (b)  that the use of the non-human hominid in the research, testing, or teaching is in the interests of the species to which the non-human hominid belongs and that the benefits to be derived from the use of the non-human hominid in the research, testing, or teaching are not outweighed by the likely harm to the non-human hominid.
    その研究、実験又は教育における人間以外のヒト科の動物の使用が、人間以外のヒト科の動物が属する種のためになり、かつ、その研究、実験又は教育における人間以外のヒト科の動物の使用による利益が、人間以外のヒト科の動物に対して与える可能性のある危害よりも上回らない場合。

(6)The Director-General must monitor the carrying out of any research, testing, or teaching to which an approval given under subsection (1) relates.
 第1次産業省長官は、(1)の元で与えられた承認に関連する研究、実験又は教育の実施を監視しなければならない。

(7)A person commits an offence who contravenes subsection (1).
 (1)を違反するものは罪に服す。

(8) Nothing in sections 82 to 84 applies in relation to research, testing, or teaching that involves the use of a non-human hominid.
 82節から84節のすべての条項は、人間以外のヒト科の動物の使用を含む研究、実験又は教育に関して適用されない。


(Penalties 罰則)

119  Penalties
   罰則

A person who commits an offence against section 82(2) or section 83(2) or section 84A(3) or section 85(7) is liable on conviction, —
第82(2)節、第83(2)節、第84A(3)節又は第85(7)節のいずれかに対して規則違反を犯す者は、次の有罪判決の責任を負う。

(a)  in the case of an individual, to imprisonment for a term not exceeding 6 months or to a fine not exceeding $25,000 or to both; and
  個人の場合、6ヶ月を超えない懲役、$25,000を超えない罰金、又はその両方に処する。


(b) in the case of a body corporate, to a fine not exceeding $125,000.
 法人の場合、$125,000を超えない罰金に処する。

Section 119: amended, on 10 May 2015, by section 42 of the Animal Welfare Amendment Act (No 2) 2015 (2015 No 49).
Section 119: amended, on 1 July 2013, by section 413 of the Criminal Procedure Act 2011 (2011 No 81).
第119節:改定動物福祉法(No 2) 2015 (2015 No 49) 第42節により、2015年5月10日に修正された。
第119節:刑事手続法2011 (2011 No 81) 第413節により、2013年7月1日に修正された。