娯楽に使われている動物

太地町 イルカ漁の手順

  • 2019/03/11
  • 2023/03/19

イルカ漁の1日を追う

太地町のイルカ漁は、イルカ類は毎年9月1日から翌年2月末日まで、ゴンドウ類は毎年9月1日から翌年4月末日まで行われます。
イルカ漁に関する議論は様々ありますが、イルカ漁を実際に見たことがある人はほとんどいません。
2019年2月25日のイルカ漁を参考に、イルカ漁の手順、方法、問題点等を書きます。
この日は、ハナゴンドウのポッド(家族)が捕獲され殺されました。6時15分〜13時57分までの調査でした。短いですがまるで何日も経ったような気がしました。

このページを、人に伝えていただければうれしいです。
動物への共感・配慮・善意の連鎖が続いていくことを望んでいます。

6時15分 イルカ漁船の出航

イルカ漁船出港時のライブ

(4:25)

出港の条件

船の出港は、早朝、夜明け前です。夜が開けたときに、沖に入ればすぐにイルカを探すことができるからです。
イルカ漁の実施に関する条件は、天気、風、波です。イルカ漁船が出港する天気は、晴れ、曇り、小雨で、風や波が無いか弱いときです。出港しない天気は、雨、大雨、台風、風や波が強いときです。台風一過の時など晴れていても風や波が強いときは出港しません。
イルカ漁師はまだ暗いうちから、寒いときは焚き火をたいて太地漁港に集まります。集まっていないときは漁がない時、集まっていても相談して出港しない時があります。

出港時の様子

夜明け前、停泊しているイルカ漁船にポツポツと電気がつき始めると、イルカ漁開始の合図です。全部のイルカ漁船のアイドリングが終わると列をなしてゆっくり出航します。漁港内は制限速度があるからです。出港する漁船の数は、日によって変わりますが、最大12隻です。

説明図 イルカ漁船の出港

沖に出た後、船は180°展開し、それぞれの場所でイルカを探します。

説明図 180°展開するイルカ漁船

イルカ漁の目的

イルカ漁の目的は2つです。
①遺体販売(鯨肉食。伝統)
②生体販売(水族館等に販売。伝統ではない)
収入が多いのは生体販売です。
太地町や推進派が主張するのは伝統(①遺体販売)ですが、本当の目的は収入が多い②生体販売です。

生体販売されたイルカたちは、水族館・リゾートホテル・ドルフィンセラピー・ふれあい体験・ドルフィンスイム施設によって娯楽商材利用されます。また、かつては軍事利用を目的として行われていました。
生体販売されるイルカの半数は海外に販売されており、主要販売先は中国です。
2000-2015の販売先は、中国216頭 ウクライナ36頭 韓国35頭 ロシア15頭 など12カ国でした。
太地漁港と森浦湾には多くの生簀があり、生体販売されるイルカや繁殖させられるイルカたちが監禁されています。

太地町全体に、常に100名を超えるイルカが、多いときでは200名以上のイルカが監禁されています。ロシアの「イルカ監獄」がイルカを100名以上監禁していると問題になりましたが、その比ではありません。

イルカ解放活動について

イルカは、暖かい黒潮に乗って太地沖を通り過ぎて行きます。イルカは自然に自由に、自分達のために生きており、イルカ漁師や水族館のものではありません。

リブは、イルカ漁のみを問題視しているわけではありません。イルカの繁殖に対しても同様です。繁殖とは、一生人間を喜ばせるためだけに生きる奴隷・商材を作る、別の表現をすれば野生動物を家畜化するという、前時代的な極めて非倫理的な行為であるからです。それを、動物園水族館は「種の保存」と表現しています。
しかし世界の環境意識、動物倫理の進化に逆らうように、太地町森浦湾では鯨類の一大繁殖地を作ろうと計画しています。

イルカ保護活動家やクジラ保護活動家には、さまざまな立場や価値観の団体や個人がおり、一様ではありません。そういった中で日本では、団体や活動家はどれも一緒の価値観や方針で行動しているという誤解があります。
鯨族のみを守ろうとする団体、すべての動物を守ろうとする団体、差別や人権侵害を良しとしない団体や個人、それらを行っている団体や個人など、様々です。
また、海外の団体に対しては、日本だけを攻撃する差別主義者といった誤解があります。しかし、彼らは日本だけではなく、アメリカ・メキシコ・ギリシャ・フェロー諸島など、世界中でイルカを守る活動をしていることは記憶しておかなければなりません。

9時40分 イルカ漁船がイルカを発見する

イルカ漁船がイルカを発見した時のライブ映像

(2:24)

イルカ漁船がイルカを発見したと判断する方法

イルカ漁船はかなり沖合に出ていますので、陸地から見ると水平線上にある点にしか見えません。他にも、土日休日には特に多くの遊魚船が出ています。

その中からイルカ漁船を見分けるのは、複数の船が一箇所に集まっているのを発見することから始まります。一箇所に集まっていたとしても、偶然の場合もあります。その場合は、集まっている左右の広い範囲からその場所に全速力で向かっている船があるかどうかを見ます。そのような船が複数あったら、可能性は高まりますので、注視します。

イルカを追い込み始める準備

イルカを発見したイルカ漁船は、無線で他の漁船に連絡し、集まるように伝えます。発見した漁船はイルカのポッド(家族や仲間)を見失わないように、遠巻きに静かに追っていきます。
その間に他のイルカ漁船が到着し、ポッドを囲うのに十分なイルカ漁船が集まってきたら、イルカを囲います。
陸から見ると船が一直線に並んでいるように見え、これを「フォーメーション」と呼びます。

写真:フォーメーション
フォーメーション(かなりの望遠で撮影しています)

実際はイルカ漁船は、沖側からイルカを囲み、太地漁港方面に口を開ける形で展開しています。

説明図 イルカ漁船がイルカを囲む

追い込んでいるイルカの種類がわかった時

イルカ漁船からの観察でイルカの種類が分かった場合、
食用にするイルカだったら、漁協に伝え、漁協横の卸売市場=解体場で屠殺の準備を始めます。
生体販売用にできるイルカだったら、水族館から注文が入っている、あるいは太地町立くじらの博物館・太地町開発公社・太地漁協で確保しておきたいイルカだったら、水族館にも伝えます。水族館からは、イルカトレーナーや獣医、関係者が捕獲や注射の準備をし、和船に乗って影浦に集まってきます。

なぜイルカたちは捕まるのか

好奇心に漬け込む

イルカが船に好奇心を持ち、近寄ってき、船の船首波や船尾の波に乗ったりして遊び、一緒に泳いだりする映像を見たことがある方もいるでしょう。イルカは遊び好きでオープンマインドです。
イルカ漁は、その好奇心や一緒に遊びたいという気持ちに付け込みます。
イルカ突き棒漁は近づいて来たイルカの背中に上から銛を突き刺して殺し、イルカ追い込み漁は、近づいて来たイルカの群れを追いかけ回し捕獲し、あるいは殺します。

子連れのイルカを狙う

また、イルカのポッド(群れ)は、家族や仲間です。ポッドの中には、ナーサリーポッドと呼ばれる家族がいます。これは女性と子どものポッドであり、子育ての経験の浅い女性には、母や祖母や仲間の女性が子育ての仕方を教え、食べ物を獲りに行っているときは代わりに面倒を見るなど、協力して子育てをします。昔の日本社会のようです。
またポッドは、体の弱いイルカや赤ちゃんイルカ、子どもイルカを守りながら、彼らのペースに合わせて泳ぎます。イルカ漁師に追われたとき、若くて体力のあるイルカたちは逃げられますが、赤ちゃんや子供を連れている場合は、母親や仲間が両脇を泳ぎ、守りながら逃げます。

《参考》真ん中の赤ちゃんイルカを守りながら泳ぐバンドウイルカ
《参考》真ん中の赤ちゃんイルカを守りながら泳ぐバンドウイルカ

イルカ漁師は、このようなポッドを狙います。理由は、逃げるのが遅く捕まえるのが容易だから、若い女性がいる確率が高いので捕獲して水族館に高く売ることができるからです。
太地町でも行われていた古式捕鯨時代から、親子のクジラを狙うのは常套手段でした。親仔クジラを捕獲する方法は以下です。まず泳ぐのが遅く抵抗できない子どもに狙いを定め、半殺しにします。子どもを殺してしまうと、母親は諦めて逃げるからです。しかし半殺しにしておくと、母は子どものもとに泳いできて、前びれで子どもを包むように守ります。クジラ漁師たちは、その時を狙って母子共々殺していました。
このやり方は現代にも引き継がれています。太地町の捕鯨、イルカ漁の伝統と言えるでしょう。

胎児の殺害

目に見えている殺害だけではありません。
イルカ漁船に追われるのは心身に多大なストレスを与えます。ですので、イルカ漁船に追われている時に出産してしまいそのまま赤ちゃんとはぐれるイルカ、ポッドがパニックになってしまい付いていけずはぐれてしまう子どもイルカがいます。当然胎児は亡くなりますし、親が殺されてしまった子どもが生きていける確率はかなり低いでしょう。
また屠殺されるとき、妊娠している女性のイルカは、捕獲されるショックや銛を刺されるショックで胎児を出産してしまいます。
太地町立くじらの博物館には、イルカの胎児のホルマリン漬けが並んでおり、鯨類学者たちがイルカの胎児のサンプルを得られるのは、こういうわけです。イルカ追い込み漁の悲惨な現状の影に、もう一つの悲惨な現状が隠されています。

9時56分 太地沖 イルカ漁船がイルカを追込む 

イルカ漁船がイルカを追い込む時のライブ映像

(0:49)

追い込み開始

イルカの家族を静かに囲み、そっと追いかけているイルカ漁船が追い込みを開始する時、一斉に「バンガー」を叩き、海中に轟音を立てます。あまりの轟音にイルカは一瞬でパニックになり、逃げ始めます。

イルカが全速力で泳ぎ始めると、イルカ漁船がエンジンを全開にして追いかけます。この時イルカ漁船からは黒煙が立ち上り、異様な雰囲気となります。水平線で追い込みが始まったときは、水平線状にイルカ漁船の数だけ黒煙が上がります。
陸からイルカたちが見えなくても、黒煙を吐きながら進むイルカ漁船団の先にイルカの群れがいることが想像でき、居た堪れない思いになります。
一番前にいるイルカ漁船がイルカが外海に逃げられないように行く手を阻み、後ろの方にいる漁船団が後ろからイルカを追い立てて進みます。

バンガー

「バンガー」とは、中に油を充填した鉄の棒の先にトランペットのように開いている部分を取り付けた道具です。

写真:バンガーの先の部分
バンガーの先の部分

バンガーは水中に轟音が響き渡らせます。音の大きさは170〜205dB。人間だったら150dBで鼓膜が破れ、198dBでは死ぬ可能性があります。
イルカは超音波を使い、コミュニケーションし周囲を認識していますので、バンガーはその機能を混乱させ奪う。轟音に囲まれたイルカたちはパニックに陥り、音から逃げようと追い立てられます。

説明図 イルカ漁船がバンガーを鳴らす

パニックになったイルカはパニック全速力で泳ぎ、体力を奪われ、呼吸が浅くなり、深く潜れなくなります。
若い男性のイルカは体力と気力で逃げ切れることもありますが、必死で子どもを守ろうとする母親は、例え自分が逃げることができても子ども守るために残ります。
イルカ漁師たちはそれをよく知っています。

10時26分 コーヴ:イルカ漁師が準備を始める

イルカ漁船がイルカを追い込む時のライブ映像

(0:45)

イルカ漁師は3手に分かれる

太地漁港の沖まで来ると、イルカ漁師は3つのグループに分かれます。
1つ目のグループは、引き続きイルカ漁船でイルカを追い込みます。
1つ目のグループは、一旦太地漁港に戻り、和船に乗り換え追い込みを手伝います。このグループはコーブにイルカを追い込んだ後に、網を張りでれないようにする、船のエンジン音などでイルカを影浦に追い込む、漁の後に網を外すなどの役割を行います。
3つ目のグループは、同じく一旦太地漁港に戻り、殺害道具などを準備し、海に入る役の漁師(活動家はダイバーと呼んでいる)はウェットスーツに着替え、和船に乗り換えてコーブに向かいます。このグループは海に入り、イルカを追いかけ、イルカトレーナーに見せるために捕獲する役割、量の後に、海の底に沈んで死んでいるイルカを見つける役割などを果たします。

コーブに追い込む漁船の動きと、海底の地形

上記の映像にはありませんが、コーヴでイルカ漁師が準備をしている間イルカ漁船は、一度太地漁港方面にイルカの群れを追込み、コーヴに向かわせます。この時イルカ漁船は一塊になって追っています。イルカ漁を見たことがある人の中には、イルカはその左右から沖に逃げられるのではないかと思った人もいるでしょう。

説明図 太地漁港方面に追い込んでからコーブに向かわせる

イルカ追い込み漁で重要なのは海底の地形です。

沖の方でイルカを追い込んでいる時、時々イルカ漁船が手こずる場所があることに気づきました。海底図で確認すると、深い場所から海底200m程へと急激に浅くなるラインがありました。
太地漁港近くの海を海底図で確認すると、上記図に白い矢印で示した部分が深くなっていて、コーブに進むにつれ徐々に浅くなり、コーブでぐっと浅くなります。イルカ漁船はその海底通路をイルカに進ませるように追い込んでいます。

イルカの目線で想像してみると、イルカはバンガーの音とイルカ漁船から逃れるため、できるだけ岸から遠く、そして深いところへ逃げようとするはずです。つまり、より海底が浅くなる場所に行ってしまうということは、より死の危険が増大することを意味します。そのため、イルカたちは海底が浅くなる箇所で、なんとかイルカ漁船の下をくぐり抜け、沖側に逃げようとします。実際に、イルカたちがイルカ漁船の沖側にのがれ、イルカ漁船が慌ててUターンし、黒煙を吐きながらイルカを追いかけていく姿を何度も見ています。

太地漁港まで来ると、太地漁港はかなり浅くなっているため、イルカたちは、深い場所を求め右に曲がり、コーブの方に行かざるを得ません。そちらに待っているのは一生の奴隷の人生、あるいは苦痛に満ちた死とも知らずに。

太地漁港周辺の海底は、まさに追い込み漁に適した海底であることがわかります。

説明図

コーヴ、畠尻湾と影浦について

映画「The Cove」のコーヴとは、畠尻湾(はたけじりわん)のことです。太地町立くじらの博物館と太地漁協の間にあり、くじらの博物館から500mほどしか離れていません。畠尻湾でイルカの捕獲や虐殺が行われている最中に、くじらの博物館からイルカショーの歓声が聞こえてくることがあります。観光客たちのためにショーをさせらているイルカたちはもちろん、畠尻湾で捕獲され、家族や子どもを殺されたイルカたちです。

以前は国道沿いの誰もが見れる場所で、海を血に染めながら捕獲・殺害作業を行なっていました。活動家の発信によりその残虐性が知られ、現在は見える場所では行われていません。代わりに、畠尻湾の右側に入り込んでいる国道からはまったく見えない湾、影浦(かげうら)で行われるようになりました。影浦では、イルカの捕獲・選別・殺害が行われます。

イルカ追い込み漁の時、畠尻湾にいる人々

イルカ漁が行われているときに、畠尻湾や太地漁港にいる関係者について整理しておきます。

漁があるときは毎回いる人々
イルカ漁師 20〜30名ほど。
イルカトレーナー 5〜15名ほど。水族館などに売るイルカの選別を行います。逆に言うと、殺害するイルカを選別しているとも言えます。
警察官 陸上の警戒に当たっています。
刑事 同様に陸上の警戒に当たっています。
海上保安庁 海上の警戒に当たっています。

時々いる人々
獣医 1名 (?)。獣医が参加していることもあります。捕獲してすぐのイルカに注射を打っていることもありました。
水産庁所管法人関係者 
この日は、国立研究開発法人 水産研究・教育機構 国際水産資源研究所の人々が5名来ていました。話しかけると不遜な態度を取られましたが、致し方ないことかと思います。
専門学校生 イルカトレーナーの育成を行なっている専門学校生の学生が引率されてきていることがあります。 
一般市民 地元の方や観光客が見物していることがあります。

活動している人々
団体関係者 複数の団体、グループが活動しています。
個人活動家 平日はほとんどいません。土日に訪れる活動家が多く、イルカ漁開始時やデモやパネル展などが行われるときは数十人が集まります。

10時30分 イルカが追い込まれる。しかし必死で逃れた。

(1:54)

イルカ漁船が、コーヴの入り口までイルカを追い込んで来ましたイルカ漁師の手にはバンガーを叩くための金槌が見えます。この船は、畠尻湾を越えて(画面左側へ)イルカが逃げないようにバンガーを鳴らすストッパーの役割です。

ついにイルカの群れの姿が見えてしまいました。イルカ漁船が次々とコーヴに姿を表し、和船が網を張る準備を始めます。イルカがコーヴに入ったらすぐに網を張り、イルカが外に逃げられないようにするためです。

追い込まれているイルカはバンドウイルカとハナゴンドウの混群でした。水族館でもおなじみのイルカたちです。この時点で、確実にイルカトレーナーたちや水族館関係者が影浦に来ている、あるいはこれから来ることがわかります。バンドウイルカが捕獲できるからです。

バンドウイルカは頭が良く泳ぐスピード速い、ハナゴンドウは息が長く続き深く潜れるイルカです。しかし、ここまで追い込まれてきたイルカは、長時間イルカ漁船に追われ、バンガーの轟音で攻撃され、パニックで呼吸が浅くなっており、そんな中でも子どもを守り、精神的にも肉体的にも疲れ果てています。

もうだめか諦めかけた直後、イルカたちが包囲網から必死で逃れました。(1回目の脱出)
この時、体が震えるほど感動したのを覚えています。

イルカ漁師が、イルカが逃げたことに気が付き、イルカ漁船を転回させ、エンジンを全開にして黒煙を噴きあげて追いかけていきます。

10時36分 バンガーを叩くイルカ漁師

(0:34)

「バンガー」について。
バンガー(BANGER)とは、バンバン(BANGBANG)と音を鳴らす棒のことです。静岡ではチャンチャンと呼ばれていました。

バンガーは、金属の棒にオイルが充填してあり、棒の先端は広がっており、音が拡散しやすいように作られています。
イルカ追い込み漁では、バンガーを水中に差し込み、金槌で叩くことによって轟音を出し、イルカをパニックに陥れ追込んでいきます。

音は空気中で秒速340m、水中では秒速1500mという極めて早いスピードで伝わります。

バンガーからは、170dB〜205dBの音が発せられてており、1.2Km先のイルカにも聞こえる可能性があるそうです。

55dB以上で苦情が多くなり、80dBで極めてうるさいとされ、130dBで肉体的な苦痛を感じる限界、140dBでジェット機のエンジンのすぐ近くで聞く音になります。150dBで鼓膜が破れ、198dBでは人が死ぬ可能性があります。

イルカは人間の7倍の可聴域を持っており、音でコミュニケーションし、空間を把握する、音の動物です。イルカにとってバンガーの音がどれほど苦痛であるのか想像もつきません。たとえ追い込みから逃れたとしても、一生障害が残る可能性があるとの研究結果もあります。

かつて静岡で大量のイルカを追い込んでいた時代、2000名をこえるバンドウイルカのスーパーポッドをイルカ漁船が囲み、一斉にバンガーを叩いたとき、イルカたちは恐慌をきたし、一気に息を吹いたため、あたりは獣の匂いが充満したそうです。

10時39分 再びイルカたちが追込まれ、そして再度逃れる

(1:34)

イルカたちが再びコーヴに追い込まれて来てしまいました。
しかし、10時40分、再度イルカは逃れ、(2回目の脱出)
イルカ漁船は転回し、黒煙を噴きあげて追いかけていきました。

10時40分 フェイスブック中継:イルカたちの息を飲む闘い

(22:35 )(画面が揺れます)

10時45分30秒
再びイルカがコーヴに追い込まれてきます。畠尻湾にバンガーの乾いた音が響いています

10時47分
1枚目の網を張り始めます。
イルカを影浦に追い込むときには、網は全部で3枚張ります。
第一の網はコーヴの岬と岩の間に張ります。これを張り終えたら、もうイルカたち逃げることはできません。
第二の網は第一の網の内側に張り、群れを分裂させます。小型ボートのエンジンをイルカに向け、音と泡で影浦方面に追い詰めていきます。
第三の網はさらに内側に張り、その中で選別と殺害が行われます。

10時47分37秒
イルカたちが再度、イルカ漁船の包囲網から逃れました。(3回目の脱出)
追い込まれてきた後、一瞬姿が見えなくなっています。おそらく船の下を潜って逃げていると思われます。
イルカ漁船は黒煙を吹きながらイルカを追っていきました。

10時49分2秒
再びイルカたちが追い込まれてきてしまいました。

10時50分40秒
イルカたちは再度イルカ漁船の包囲網から逃れました。
これで4回目の脱出。(4回目の脱出)
すごい。

10時51分43秒
黒煙を吹き上げてイルカを追い詰めていく漁船は、イルカに対する人間の一方的な戦争のようでした。

10時52分41秒
隣にいた国際水産資源研究所の人々が、その光景を笑って見ていました。

10時53分57秒
イルカたちが再度、コーヴの入り口まで追い込まれてきてしまいました。

10時54分19秒
イルカ漁師たちが第一の網を張り始め、イルカたちを奥へ追込み、イルカたちは完全にコーヴの中に入ってしまいました。

10時56分3秒
イルカが外に出ないように脅しながら、第一の網を張り終えました。

説明図 第一の網を張り終える

イルカたちは捕らえられてしまいました。
もう逃げられません。
一生を奴隷として人間の見せ物になるか、殺されて遺体を食べられるか運命が決まった瞬間です。

10時57分22秒
漁師たちは、小船のエンジン音でさらにイルカを湾の深くに追い込み、第二の網を張り始めています。

10時58分55秒
第一の網の外に、網に入れられなかったイルカの群れが戻ってきていました。捕らえられてしまった仲間を心配しているように見えます。このとき、追い込み漁船は離れたところにいたので、追い込まれてきたわけではなく、自分たちで戻ってきたようです。
家族や仲間が捕らえられてしまったので、危険を冒して迎えに戻ってきたのかもしれません。

11時00分28秒
第二の網が張り終わり、最初に捉えられたイルカたちはその中に閉じ込められました。

11時02分23秒
漁師たちが第一の網を外しはじめました。
このときは気付きませんでしたが、残りの群れをさらに追い込み、一網打尽にするためにいったん網を外す作業でした。
仲間を獲られたイルカはこの場所から離れないということを熟知していたから、他のイルカをほっておいたのでしょう。言葉に表せないほどの憤りを感じました。

11時11分 網の外にいたイルカたちが追い込まれてくる

(0:55)

家族を仲間を心配するように網の外にいたイルカたち。
一度逃れたのですが、また追い込まれてきてしまいました。

11時11分 イルカたちが5度目の脱出!

(0:12)

イルカたちが再びイルカ漁船の包囲網から逃れました。
これでなんと5度目。(5回目の脱出)
この光景を見ている世界中の人々が、心の底から逃げ切ることを祈っていました。

11時14分 追い込まれるイルカたち(中継)

(1:44)

家族や仲間を心配して残っているイルカを、さらに追い込もうとしています。

11時19分 群れの残りが追い込まれてしまった

(2:38)

残りの群れが追い込まれて、ついにコーヴに入ってしまいました。
第一の網が張り終わり、イルカたちの自由、そして人生が終わりました。

11時23分 最初に捕まったイルカたちが、第三の網に追い込まれる

(0:48)

最初に捕まったイルカたちが、小船のエンジン音と泡で脅され、第二の網から第三の網に追い込まれます。

11時27分 後に捕まったイルカたちが、第二の網に追い込まれる

(3:05)

後に捕まったイルカたちが、第一の網から第二の網に追い込まれました。
漁師たちは、イルカを順繰りに追い込み、網を狭めていきます。

説明図 最初のイルカたちを第二の網、後のイルカたちを第一の網に追い込む

パニックに陥ったイルカたちは、自ら岸に座礁していきます。場合によっては、ジャンプして脇の壁に激突し、吻(口の部分)が折れ、血を噴き出すイルカもいます。

11時34分 イルカトレーナーたちが選別に来た

(1:09)

イルカトレーナーたちが船に乗ってイルカの選別に来ました。この日は、生体販売用イルカを搬送する小船が計3隻来ました。

イルカトレーナー

水族館に販売するイルカが捕獲された場合、漁協から、水族館に連絡が行きます。連絡が来ると、イルカトレーナーと水族館関係者は、捕獲の準備をしてボートに乗って影浦に来ます。
イルカトレーナーは、イルカ漁師が網で捕まえたイルカを見て、性別や肌、従順かどうかなどを確認し、販売するイルカを選別します。イルカトレーナーがウェットスーツを着て、イルカ猟師とともに生体販売用イルカを捕獲することもあります。
イルカトレーナーに選ばれなかったイルカで、食用にする場合は、イルカ漁師たちによって殺害されます。つまり逆に言えば、イルカトレーナーは殺害されるイルカを選んでいるとも言えます。
イルカトレーナーがいるかを選別するときは、はしゃぎ、笑いながら行なっています。パニックに陥り、家族や子供と引き離される恐怖に陥っているイルカを見ながら。あるときは、活動家が「イルカを殺さないでください」と必死のお願いをする姿を、イルカトレーナーが笑いながら見ていました。

リリースについて

捕獲したイルカをリリースすることがあります。理由は、捕獲枠を超えている、食用として不味いカマイルカだから、娯楽商材として自然繁殖が期待されるバンドウイルカだからなどです。
リリースの問題点は、バンガーによる聴覚障害を負っている可能性がある、捕獲筋障害を起こしている可能性がある、トラウマを抱えている可能性があるなどです。
また、子どものイルカをリリースしたとしても生きていくことは当然難しくなります。人間で考えればわかりやすいですが、子供の家族を殺し、リリースしても生きていくことはできないと同じことです。

11時35分 一生の奴隷になるか、虐殺かを待つイルカたち

(0:31)

イルカトレーナーによって一生の奴隷の運命を与えられるか、イルカ漁師に殺害されるか、イルカたちには知るすべもありません。
結局、この日は海に戻されるイルカは一人もいませんでした。

11時44分 次のイルカトレーナーが選別に来る(中継)

(0:28)

イルカトレーナーと水族館関係者が選別にきました。
この日は、水族館への販売用のイルカを搬送する和船は計3隻来ていました。

選別と殺害は、幕を張り、その下で行われます。マスコミや活動家に撮影され、世間に見られるのを避けるためです。

12時8分 イルカを運び出すイルカトレーナー 1隻目

(0:48)

この船には、イルカトレーナーが7名、イルカ漁師が6名乗船していました。女性6名は全員イルカトレーナーです。
イルカは船のこちら側に1名、あちら側に2名、括り付けられています。この日も血を流しているイルカがいました。

イルカトレーナーが、柄杓で海水をかけながら運び出します。海水をかけるのは、怪我をしたイルカの血を洗い流すため、また太陽からの皮膚の保護や乾燥からの保護のためです。もちろん、純粋な優しさからではなく、皮膚が綺麗なイルカほど高く売れるので、商品価値が下がるからです。
資金を持っている都会の大企業運営水族館のイルカの皮膚と、地方やお金がなさそうな水族館のイルカの皮膚とを見比べると、その違いに気づくでしょう。

12時12分 イルカを運び出すイルカトレーナー 2隻目

(0:12)

イルカトレーナーが、イルカを”拉致”していきます。
水族館で、まるで人間に笑いかけているようなイルカたちは、こういう体験をしてきています。

12時13分 生体販売について(中継)

(2:34)

この日の前日2月24日にはシワハイルカ12名が、水族館用に売られるために捕獲されました。仮に1名500万円で売ったとして、1日で6000万円の売上です。

今日追い込まれたイルカはハナゴンゴウとハンドウイルカ 。イルカトレーナーがボートの脇にイルカを括り付けて、連れ去っていきます。
この漁で、いさな漁協・太地町立くじらの博物館・太地開発公社・イルカブローカーは大きな利益を得、水族館やイルカトレーナーは優秀な商材を手に入れることができます。

一方、さっきまで自由だったイルカたちは、狭いタンクの中で一生奴隷として人間を楽しませ死んでいくか、今日この場で殺されます。

もしあなたが水族館でイルカショーを見ているとしたら、目の前でショーをしているイルカが今日捕獲されたイルカかもしれません。

12時27分 連れ去られるイルカ、殺されるイルカについて(中継)

(7:28)

ハンドウイルカ6人、ハナゴンドウ2人が連れ去られました。そして残りのハナゴンゴウがコーヴの奥に追い込まれています。

動画の中で「イルカたちは自分たちが殺されると思っていない」と言っています。
しかし、後からわかったのですが、選別しているすぐ横で、同時に、殺害も行われているようです。
ですので虐殺が起こっている横で、選別されているイルカ、これから追いこまれようとしているイルカたちは、自分の家族や恋人が目の前で殺されるところを見ているということです。また、次に殺されるのは自分たちだということを知っているということです。

岩の向こうから船のエンジン音が聞こえます。イルカたちは、なんとか逃れようと必死に頑張っています。しかし、決して逃れることはできません。

もしこれが自分だったら、自分の恋人や家族や子供が同じ目にあったらどうでしょうか。
恐ろしいことです。

13時3分 最後のハナゴンドウを小船3隻で追い詰める

(3:44)

最後のハナゴンドウを3隻で追い詰めます。

追い詰め終わった後、静寂が戻りました。

コーヴの奥では、最後まで生きようとしたハナゴンドウたちが、体に銛を突き刺され、静かにのたうち回っています。

屠殺方法

図 イルカの屠殺道具

かつて行なっていた長い槍による屠殺方法は、イルカの苦しみを長引かせるとの批判を受け、フェロー諸島で使われている道具、ムヌスティンガリを模した屠殺道具に変更しました。
この方法は、銛に似た屠殺道具を呼吸口の後ろから脊髄に突き刺し、脊髄をねじ切りるもので、苦痛の少ない”人道的”な殺害方法とされています。しかし以下の点からイルカは耐え難い苦痛を感じているという批判があります。
1. 刺した後も死なずに暴れ続けるイルカが、活動家によって観察されています。20分以上、場合によってはさらに長い時間動いていたイルカもいたそうです。そのまま船にくくりつけられ運ばれたので、苦痛に加えおぼれ死んだのではないかとのことでした。
2. フェロー諸島では、屠殺道具で脊髄を捻じ切った後、速やかに喉を切って放血します。しかし日本では、屠殺道具で刺した穴にコルクのようなもので蓋をします。そのことによって血はイルカの体内にとどまります。イルカは自分の血で溺れているのではないかと考えられておりフェロー諸島のイルカ漁師からも批判されています。

13時6分 第三の網を外す作業

(1:47)

イルカ漁師たちが、第三の網を外す作業をしています。
イルカ漁が終わりに近づいています。

13時11分 イルカを運び出すイルカトレーナー 3隻目

(1:33)

イルカトレーナーたちが和船の両脇に、生体販売のイルカをくくりつけ運んでいます。
彼らは、影浦の奥で行われているイルカの虐殺を見ています。

13時24分 イルカの遺体を運ぶ和船 1隻目

(0:47)

イルカの遺体をくくりつけた和船が、イルカ漁船に向かっています。イルカ漁船に渡し、太地漁港まで運ぶためです。イルカ漁師が遺体に被せたビニールを足で押さえつけていますが、イルカたちのヒレが見え隠れしています。

遺体を食品として並べる時、太地町ではイルカの名前(ハナゴンドウ 、オキゴンドウ等)を記載しますが、東京や大阪を始め、他の自治体ではイルカ肉と記載されます。

13時25分 和船が、イルカ漁船に遺体を渡す

(0.35)

イルカの遺体は、小船のグレーのビニールの下から、イルカ漁船のブルーのビニールの下に渡されます。遺体を見られたり、撮影されたりするのを避けるためです。
遺体を太地漁港まで運ぶ方法は、イルカ漁船が運ぶ場合と、和船がそのまま運ぶ場合があります。
遺体を運んでいる船は、かなり遅いスピードで進むためすぐにわかります。

13時27分 イルカの遺体をくくりつけた和船 2隻目

(1:28)

イルカの遺体をくくりつけた小船 2隻目が太地漁港へ向かい、それに続いて残りの漁師を乗せた和船が太地漁港に帰っていきます。これで畠尻湾での作業は終わりです。
この後、太地漁港でイルカの解体作業が始まります。

13時42分 遺体を運ぶ船・イルカの生簀の上で談笑するイルカトレーナー

(1:13)

太地港へ移動しました。

最初の船はイルカトレーナーが乗っている船です。

生簀の上にいるのは、捕獲作業をしていたイルカトレーナー。太地港方向行きの船に乗っていたイルカトレーナーなので、生簀には先ほどの漁で捕まえたイルカが入っているのでしょう。談笑しています。

最後に太地港に入ってきている船は、イルカの遺体を運んでいます。
船の向こう側にビニールを掛け、その下にイルカの遺体を引いています。

13時50分 イルカの遺体を解体場に運び入れる

(4:32)

最初に、小舟がイルカの遺体を運び入れます。船の向こうにかけてあるビニールの下の遺体を、青いビニールの下に入れ、ウィンチでイルカ解体場に引き上げます。解体場の青いビニールの左側に、一瞬ハナゴンドウの頭が映ります。

小船と入れ違いに、イルカ漁船が遺体を引いてきます。その奥に見えるグレーの大きな船は、沿岸捕鯨用の捕鯨船、太地漁協の第七勝丸です。船首の捕鯨砲には青いビニール袋が巻いてあります。捕鯨砲は、クジラの体に突き刺さり、体の中で鉤爪が広がり、抜けなくなる構造になっています。イルカ漁と同様、惨い殺害方法です。

なお、2022年現在、日本の広義の捕鯨は4種類。母船式捕鯨、基地式捕鯨、イルカ突き棒漁、イルカ追い込み漁です。太地町では基地式捕鯨以降の3種類を行なっています。

13時52分 ハナゴンドウの遺体が浮かんでいる

(1:49)

ついさっきまで生きていたハナゴンドウたち。

13時57分 引き上げられるハナゴンドウの死に顔

(3:22)

イルカたちは闘い抜きました。
8名が監禁、19名が殺されました。

悲しい。


イルカ漁賛成派、イルカ漁反対派で議論がすれ違っています。
イルカ漁賛成派は、人間目線から人間同士として、イルカ漁の是非を論じています。
しかし、そもそもイルカ漁反対派の多くは、”イルカ漁反対派”ではありません。

『イルカを含めた、すべての動物の自由と権利と生命を守ろうとする人々』です。

動物を守ろうとする人々は、動物の目線に立ち、仲間を監禁して欲しくない、傷つけて欲しくない、殺して欲しくないと思っています。

動物を搾取する人々は、さまざまな理由を考え出し、既得権益を保持しようとします。
伝統・感謝・いただきます・弱肉強食・持続可能・環境保全、、。
しかしこれらすべて人間のみに利益のある人間中心主義の視点です。
人間の欲や暴力に晒されている動物たちの、苦しみ、悲しみ、恐怖は置き去りにされています。

子牛とあなた、どちらが価値が上でしょうか。
子牛よりあなたの方が価値があるという客観的、合理的な理由はありません。
イルカとあなたは?ブタとあなたは?マグロとあなたは?サンショウウオとあなたは?
あなたに特別な価値があるというのは幻想です。

我々は地球に共に生きる仲間です。
私たちはこれまで一方的な搾取を欲しいままにしてきました。

地球にとって最大の害獣は誰でしょう。

私たちは変わるべき時が来ています。
パラダイムシフトの時です。


動物を解放しよう。

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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