本ガイドは、イルカの活動をしたい活動家、イルカのために何かしたい人、イルカや イルカ漁 に興味を持った人が、イルカ漁を訪れ、観察・調査できるようになるためのガイドです。
もくじ
解説動画
解説動画
『イルカ漁調査完全ガイド』を順番に解説しました。
ガイドの内容、使い方を一緒に見ていきましょう。
1 ガイドの使い方
使い方
地球の歩き方という本を知っていますか?
「イルカ漁調査 完全ガイド」は地球の歩き方のように、旅の各段階で開いて情報を得られるように作られています。
旅のプランニングや、宿泊先を予約するときは、「2. 準備編」
調査当日、何時に起きて、どこに行き、何をすれば良いかは、「3. 当日の流れ」
見ておいたほうがいいスポットは、「4. イルカがいる場所」「5. 施設・史跡・その他」
お腹が空いたら「2. 準備編 4. 食事」でレストランを探すこともできます。
本ページを、お気に入りに登録して、あなたの旅の友としていつでも開けるようにしておいてください。
イルカ漁調査という得がたい体験の旅、きっとあなたの役に立つでしょう。
目的
イルカに対しての考え方を変えて、守っていかなければならない、と思う人が増えてきました。
楽しいイルカショーの陰で、イルカたちは、監禁状態による精神異常や病気に苦しんでいることがわかってきました。
世界中の水族館のイルカショーのイルカたちのほとんどが、日本のイルカ漁で捕獲されていることがわかってきました。
捕獲されるイルカ以外のイルカたちは、殺され、食べられていることも知っています。
世界で最もイルカを捕獲し、利用し、殺しているのは、私たち日本人です。
私たち日本人が変われば、イルカの苦しみを大きく減らすことができます。
本ガイドの執筆者、目黒は、複数回にわたって長期間、太地を訪れています。
イルカ漁を調査し、追い込まれるイルカたちの姿、引き上げられるイルカたちの姿を記録し、レポートしてきました。
太地に関する書籍を読み、史跡を訪れ、太地町民や議員、役場の人々など、多くの人と話しました。
そんな私が言えることは、太地を訪れ、実際にイルカ漁やイルカたちを見てくることは、とても貴重で得難い経験です。
私と同じように、イルカたちの苦しみの根源となっている日本のイルカ漁について知りたい、自分の目で見てみたいという人が増えていることを感じています。
本ガイドは、そんな人々のためのガイドです。
ガイドを片手にイルカ漁を見に行き、体験し、感じて欲しい。
そして、何かをするきっかけとなって欲しいと望んでいます。
一人一人の想い・行動が、人を、社会を動かします。
イルカを解放しよう。
2 イルカ漁 調査 準備編
準備編では、具体的な旅行準備についてお伝えし、多くの人が疑問・不安に思うことについて回答します。
1 旅行準備
1 スケジュールの立て方
まず多くの人が疑問に思うことに回答します。
Q. 土日休日にイルカ漁はある?
A. あります。多くの人が土日休日を利用して訪れることになると思います。荒天でない限り、イルカ漁は行われます。
Q. イルカ漁でイルカが捕まる頻度は?
A. 季節や天候、イルカが回遊してくる時期によってまちまちです。イルカ漁を見に行ったとしても、毎回イルカが捕まるわけではありません。もちろん、イルカが捕まらないことが最も望むことですが、イルカ漁を実際に見ることも大事です。一度の滞在日数が多い方が、イルカが捕獲される確率が高まります。
Q. イルカ漁が行われない日は?
A. 台風など荒天の日。イルカ漁にとっては雨よりも風が重要です。雨が降っていても風が無ければ出漁するときがありますし、晴れていても風が強ければ出漁しません。台風の翌日などは、風の強さを確認して出漁するかどうかを予想しましょう。
ここでは土日を利用したスケジュールを2パターンご紹介します。長期滞在できる方は、滞在最初の参考とすると良いでしょう。
おすすめはパターン1です。漁を2回見ることができます。
パターン1
金曜日 那智勝浦着 夜:宿泊
土曜日 朝:漁を見に 昼:太地町見学 夜:宿泊
日曜日 朝:漁を見に 昼:太地町見学 夕:帰宅
パターン2
土曜日 朝:那智勝浦着 昼:太地町見学 夜:宿泊
日曜日 朝:漁を見に 昼:太地町見学 夕:帰宅
2 交通手段
車、電車、高速バスのいずれかです。
宿泊は太地町の隣、那智勝浦町が良いので、那智勝浦に向かうと良いでしょう。
しかし、那智勝浦を起点とする場合、車が必須です。
車で行くか、現地でレンタカーを借ります。
レンタカー660が安いです。
レンタカーサービス比較。
東京から
車:東京→ [ナビ検索]→ 那智勝浦(7時間〜)
電車:東京[東海道新幹線]→ 名古屋駅[JR紀勢本線 特急]→ 紀伊勝浦駅(5時間30分〜)
高速バス:(2021年現在 感染症により運行停止中)
大阪から
車:大阪[阪和自動車道][紀勢自動車道(無料区間)]→ すさみ南IC[R42号]→ 那智勝浦(3時間30分〜)
電車:新大阪駅[JR紀勢本線 特急]→ 紀伊勝浦駅(3時間30分〜)
3 宿泊
ホテル・民宿、ゲストハウス、車中泊のいずれかとなります。
ホテル・民宿
那智勝浦には、外国人活動家の定宿、ホテル シャルモントがあります。当時の事情に詳しいスタッフ(リンク先の写真の方)もいるので、話を聞いてみたいという方にはおすすめです。
ゲストハウス
車中泊
道の駅 なち(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町浜ノ宮361-2)
夏山園地(和歌山県東牟婁郡太地町夏山3845)
* 入浴は、道の駅 なちで温泉に入れます。近隣には温泉が多いですので検索してみてください。
4 食事
MAP:イルカ漁 ヴィーガンマップ
ヴィーガンが気になるのは食事。ヴィーガン対応してくれるお店、スーパーなどをマップにしましたのでお役立てください。
マーカーの色
青:ヴィーガン対応
緑:スーパーなど
イルカ漁調査当日の食事
イルカ漁調査当日は、まだ暗いうちに起床します。
イルカ漁の進行は、その日によって違います。
ですので、食事を摂るタイミングがつかめず、疲れ切ってイルカ漁の進行を追うことになってしまいます。
ここでは食事の取り方について、おすすめのパターンをお伝えします。
朝食
出発前に食べるか、太地へ移動した後、イルカ漁船出港待ちの時間に、事前に用意したものを食べます。
那智勝浦にあるパン屋「コッペ」のパンを買っておくのは、朝食、非常食におすすめです。日曜日は休日なので注意が必要です。
暖かい飲み物を用意しておくのもおすすめです。まだ暗い寒い朝に飲む温かい飲み物は、癒されます。
昼食
大きく3パターンあります。
1 イルカ漁がなかった場合
→ 帰ってどこかで食べます。
2 イルカを殺害する場合
→ 追い込みから、殺害、水揚げまでが途切れなく行われ、時間は短いです。食事をする時間無し。車の移動時に少し食べるか、帰ってどこかで食べます。
3 イルカを捕獲する場合
→ 追い込んだ後、捕獲準備とイルカトレーナー水族館関係者の到着を待つ時間があります。その時間を利用して、食べることになります。
2と3の見分け方は、イルカを追い込んだ後、イルカ漁師が続々と影浦に入っていったら2。イルカ漁師の大部分が太地漁港に帰ったら3です。
3の場合、動きっぱなしになります。短い時間で食べられるものを持って行くか、タイミングを見て「漁協スーパー」で果物かお稲荷さんなどを購入して食べると良いでしょう。
( * 漁協スーパーなどにお金を落とすことに関しての議論があります。購入に反対する人は、太地町や漁協の資金となりイルカ漁の存続を利するという理由。購入する人は、太地町で何かを購入することで人との繋がりが生まれる、自分の人となりを知ってもらえるなどの理由です。どちらが正解ということはない議論、どちらもメリットデメリットがある議論ですので、自分の考えに従えば良いと思います)
夕食
「MAP:イルカ漁 ヴィーガンマップ」をご参照ください。
夕食は、夕方には食べ終え、できるだけ早く就寝すると、翌日充実した調査ができます。私は15時には食べ終え、20時には就寝していました。
5 調査当日 持っていくもの
食べ物(例)
おにぎり、パン、バナナ、栄養バー、ピーナッツバター等、暖かい飲み物、水。
衣料
朝
ニットキャップ、口を覆うもの、マフラー、手袋、防寒インナー、パーカー、ジャンパー、防寒ズボン、防寒靴 等
朝は冷えます。特に、イルカ漁船の動きを観察する場所は岬の上で、吹きっさらしです。少しオーバーかなと思うくらいに暖かい格好をするのが良いでしょう。皮膚が外気に極力触れないようにし、開口部(鼻・口・耳)を塞ぐと熱が逃げません。足が冷えないように、靴下を重ねばきし、背が高い防寒用の靴を履くとベストです。
昼
ハット、サングラス、手袋、長袖Tシャツ等
日が昇ると気温が上がり、Tシャツになることもあります。日を遮るものがないため、日焼け対策が重要です。
雨
カッパ、長靴、防水ハット等
カッパは防寒着にもなりますので重宝します。
調査の際の服装の考え方は、登山と似ています。様々な天候を予想し服を用意、現場ではフレキシブルに着脱して、気温や日差しから身体を守ります。
6 機材
参考までに、リブが調査の際に使用する機材を紹介します。
機材
カメラ:ニコン COOLPIX P1000、Canon kiss
三脚:大型三脚 Manfrotto(ビデオ用雲台)、小型三脚
スマホ:3台(SNS中継用:Insta、Facebook、Twitter)、固定用マウント
モバイルルーター:通信用(田舎なのでDocomoが良い)
充電池:大容量のもの
双眼鏡:Vixenのものがコスパが良い
カメラバッグ:上記機材(大型三脚以外)がすべてはいるもの
特におすすめは、ニコン COOLPIX P1000と、双眼鏡です。
P1000:光学125倍ズーム、ダイナミックファインズーム250倍と、遠くで泳いでいるイルカの姿も捕らえられる非常に優れたカメラです。遠くから畜舎の中を撮影する時などにも使えます。一台持っておくと便利です。
双眼鏡:イルカ漁調査に必須です。岬の上からイルカ漁船を探すとき、漁船の動きを観察するとき、イルカの種類や様子を見るときなどに使用します。イルカ漁調査だけではなく、動物園や水族館、サファリパークで、動物の怪我や皮膚の状態、目などを観察する時にも使用できます。
あると良いアプリ
現地でイルカ漁の流れを予想するときなど、以下の情報がわかるアプリを入れておくと便利です。天候による漁のパターンなども次第に見えてきます。
風、潮汐、気圧配置、降雨の範囲、気温、日の出、方位
7 予算
基本:交通費+ガソリン代+宿泊代+食事代
他:機材、双眼鏡、おみやげ代等
2 疑問・不安
太地の人はこわくないの?
こわくありません。優しい人が多い印象です。いろいろ教えてくれますし、親切にしてくれます。こちらが不快な態度、価値観を否定するような態度を取らなければ、ほとんどの人は優しくしてくれるでしょう。
漁師はこわくないの?
数年前から太地に通っていますが、これまではお互いあまり干渉せず、会えば挨拶するなど、適切な距離を保っていました。
しかし2020年後半、イルカ漁師や漁協関係者と活動家の関係は、私が体験した中で最も悪化しました。
攻撃的な態度を取ったり、侮辱的な態度、社会的に適切で無い態度を取れば、漁師の方や関係者の方が気分を害することもあるでしょう。
それらを踏まえ、適切な距離を保ち、もし機会があれば普通に挨拶をすれば良いと思います。
社会人として当たり前に礼節を保ち、行動し、言葉を選ぶことが大事です。
右翼はいるの?
普段はいません。
映画「The Cove」や、YouTubeでシーシェパード狩りを見たことがある人は、その印象が強く、怖いと思われるかもしれませんが、ほとんどの期間は来ていません。
イルカ漁期が始まる前日や初日など、特別な日に来ています。
特に2021年現在、感染症の影響により外国人活動家が少ないので、活動は活発ではないようです。
個人的な経験から言えば、普通に礼儀正しく接していれば問題ありませんでした。座るときにレジャーシートを貸してくださるなど、優しく接してくれます。
警察はいるの?
漁期中は、陸は警察、海は海上保安庁が、警戒に当たっています。
場合によっては警官に職務質問されることもあります。対抗しようとする活動家もいますが、私は協力した方が良いと判断しています。警察にとって、私たち活動家は警戒対象でもありますが、同時に守ってもくれています。私自身は、自分が太地町にいるということを知られていた方がメリットがあると考えています。友好的に接して悪いことはありません。
活動家について
活動家には様々な人がいます。良い人もいますが、問題がある人もいます。
誰と関わるかには、慎重になった方が良いでしょう。
3 当日の流れ
太地町でイルカ漁調査を行う基本ルート、イルカが囚われている場所、その他施設等をMAPにしました。現地に行かれた際には、お役立てください。
GoogleMAP:太地町 イルカ漁調査マップ
マーカーの色
紅:3 当日の流れ(イルカ漁調査ルート)
青:4 イルカがいる場所(生簀)
橙:4 イルカがいる場所(施設)
緑:5 施設・史跡・その他
簡易マップ
イルカ漁調査のルートは、①→②→③と進行します。
1 起床、出発
日の出前、周囲がうっすら明るくなってきたら、イルカ漁船が出港します。
ゆえに、
起床:日の出の2時間30分前
那智勝浦出発:日の出の1時間30分前
太地到着:日の出の1時間前
と設定すると時間に余裕がもてます。
到着場所は、以下の三ヶ所のいずれかが良いです。
1-1 太地漁港:東の浜駐車場(トイレあり)
1-2 堤防の上(東の浜から堤防に近づくと、右端に階段がある。転落注意)
1-3 旧道(県道240号の坂を上りきった横断歩道の十字路を右折し、細い道を下る。少し広くなった、ベンチが置いてある場所。)
これら場所から、イルカ漁船を見送り、撮影することができます。
2 イルカ漁 開始、イルカ漁船の見送り
日の出前、周囲が明るくなってきたら11〜12隻のイルカ漁船が列をなして出港します。
ここで、撮影・中継するなどしながら、イルカ漁船の特徴を覚えておくと良いです。
イルカ漁船の特徴は、船の左右にバンガーが設置されているか否か。
バンガーとは、イルカを追い込む道具のことです。
物干し竿ほどの太さの金属製の棒で、音を拡散させるために、先が傘のようになっています。イルカを追い込むときは、先を海中に差し入れ、操縦しながらもう一方の端を金槌で叩き、音を出します。
航行時は、操縦席の後ろ側あたりに棒の上がきていて、船の前方に向かって下になっています。(写真参照)
イルカ漁船が出漁していないときは、MAPの「イルカ漁船 係留場所」に停泊しているのでそこで確認もできます。
イルカ漁船が沖合に出て行ったら、岬の上へ移動。
岬の上は、以下の三ヶ所のいずれかが良いです。
2-1 燈明崎(県道240号の坂を上りきった横断歩道の十字路を左折。突端からよく見えるが、少し歩く)
2-2 展望台(県道240号の坂を上りきった横断歩道の十字路を左折。よく見える)
2-3 梶取崎(遠いので車での移動でないと厳しい)
早く移動すれば、沖合いへ向けて展開していくイルカ漁船が見られます。
(*交通法規遵守のこと。特に、2-1 燈明崎、2-2 展望台へ行く際は、道が狭く、子供もいるのでゆっくり走る。2-3 梶取崎への道はシカがよく出ます)
3 イルカ漁船の動きを観察
岬の上から、イルカ漁船の動きを観察します。
ここからの展開は2つしかありません。
Ⅰ イルカ漁船がイルカを追い込み始めた。
Ⅱ イルカ漁船がイルカ捕獲を諦め帰ってきた。
Ⅰか、Ⅱかを判断するため、双眼鏡で海上を観察し続けます。
判断基準は以下。
Ⅰ イルカ漁船がイルカを追い込み始めた。とする判断基準
沖合に10隻前後の船が横一列に並び、左(北)の方向に向かっていたら追い込まれ始めたと判断する。この一列になった姿を、フォーメーションともいう。
イルカ漁の流れはこちらです。事前に目を通しておくと、当日の流れがわかります。
太地町 イルカ漁ドキュメンタリー
Ⅱ イルカ漁船がイルカ捕獲を諦め帰ってきた。とする判断基準
イルカ漁船が連続で帰ってきたら。
漁船は、水平線より向こうまで行き、イルカを探します。
沖に出ている船は多いので、双眼鏡やP1000を駆使し確認。
双眼鏡で全体を見て、P1000で撮影しバンガーの有無を確認すると、確認作業がスムーズにできます。
土日は海に出ている船の数が多いので、注意深く観察するようにします。
イルカ漁の調査を繰り返していると、雰囲気(形、大きさ、色、操舵の仕方、向かう方向やスピードなど)で判るようになってきます。
1 イルカ漁船がイルカを追い込み始めた。と判断した場合
イルカが追い込まれているとき
次のいずれかの場所に移動します。
3-1 たかばべ(畠尻湾のトンネル近く、ホテル「白鯨」へ向かう道に入る。「白鯨」を左に見て通り過ぎ、堤防の横の道に登る。近隣住民の邪魔にならないように、車をなるべく堤防に近づけて止める。(参照:たかばべに登る際の駐車スペース)徒歩で「白鯨」の駐車場へ入ると左側に階段がある。登り切ると広場になっている)
3-2 畠尻湾=The Cove(車はくじらの博物館手前の駐車場に止める。観察に適した場所はいくつかある。上の道路から、道路脇の小さい広場から、下の浜から)
3-1 たかばべ
たかばべ左側:
階段を登り切ってすぐ左側の真下が、「影浦」。
イルカを捕獲・殺害する小さな湾です。
場所によっては、イルカが子どもを守ろうとしている姿、ダイバー(イルカ漁師)が海に入ってイルカを捕獲している姿や、イルカトレーナーがイルカを運んで行く姿がはっきり見えます。
イルカが捕獲・殺害される場所はグレーのシートでカバーされ、見ることができないようになっています。
影浦が見えない場所からは、イルカの呼吸音、暴れる水しぶきの音、イルカ漁師の声、イルカトレーナーがイルカを選別している時の声が聞こえます。
たかばべ奥:
階段を上がって一番奥の場所から、太地漁港方面から徐々に追い込まれていくイルカの姿が確認できます。
イルカが追い込まれたとき、たかばべには、警察官、太地町役場職員が警戒に当たっています。
3-2 畠尻湾=The Cove
漁網に閉じ込められたイルカたち、網を徐々に狭めていくイルカ漁の方法が観察できます。「影浦」(かげうら)は岩の陰になり見えません。
イルカが追い込まれたとき、畠尻湾には、警察官、海上保安庁が警戒に当たっています。
日によっては、水産庁職員、水産庁関係の研究機関の職員、動物専門学校の教師と生徒などが見学しています。
そこここに監視カメラが設置されています。
水族館へ販売すると決められたイルカが、畠尻湾に一晩とどめ置かれることがあります。夜に様子を確認しに行くと、イルカたちの呼吸音が聞こえます。一晩中、太地町に雇われた警備員が警戒に当たっています。
例外)カマイルカの捕獲の場合は「1-2 堤防の上」へ
ただし、追い込んだイルカがカマイルカの場合、太地漁港の堤防の外で捕獲します。
カマイルカは他のイルカと異なり、まとまってではなく、四方八方に逃げます。ゆえに、この地点でカマイルカのポッド(群れ)を網で取り囲み、捕獲します。カマイルカは、水族館販売用の捕獲のみです。美味しくないので殺害しません。
ハナゴンドウをこの地点で捕獲殺害したこともあります。このときは、畠尻湾に追い込むのに手間取ったため、労力削減のためにこの地点で捕獲したものと思われます。
追い込んだイルカがカマイルカかどうかの判断は、太地漁港の堤防の外で、小船が作業し始めたらその可能性を考えます。
たかばべからは、その作業をしているかどうか確認できますが、畠尻湾に移動した後だと、この作業の確認は不可能になります。
その場合は、船が来るのがあまりに遅かったら、「1-2 堤防の上」に行くかどうか検討します。
単に追い込みに手間取っているだけのこともあり、その場合はすれ違いになります。
イルカ漁調査時は、常に漁の進捗を推測し、先回りする難しい判断を繰り返します。
イルカが捕獲・殺害された後
追い込まれたイルカは、
Ⅰ 殺害
Ⅱ 捕獲
Ⅲ リリース
のいずれかの運命をたどります。
Ⅰ 殺害された場合
イルカの遺体は、小舟からイルカ漁船に移されるか、小船に乗せたまま、太地漁港へ向かいます。
太地漁港の「施設:7 卸売市場」の海側からイルカの遺体が引き上げられ、中で解体されます。
引き上げる際はブルーシートで隠されますが、隙間から見えることもあります。
Ⅱ 捕獲された場合
イルカを乗せた小舟は、太地漁港に向かいます。日によっては森浦湾方面にも向かうこともあります。
イルカは、太地漁港内の「生簀:1 太地漁港」に移され、しばらく経つとイルカトレーナーがきて、体長測定や身体的な特徴の確認を行います。
捕獲当日や翌日、ストレスで死んでしまったイルカが生簀から引き上げられ、卸売市場に運び込まれることもあります。
なお、森浦湾方面に向かった場合は、ドルフィンベェイス、森浦湾、那智勝浦の生簀のいずれかに搬入されると思われます。
Ⅰ 殺害された場合、Ⅱ 捕獲された場合、いずれの場合も、急いで(交通法規遵守のこと)太地漁港へ移動すれば、殺害されたイルカが卸売市場に引き上げられるところや、捕獲されたイルカが生簀に入れられるところが見られます。生簀に入れられるところは、「1-2 堤防の上」からよく観察できます。
Ⅲ リリースされる場合
2パターンあります。
① 水族館販売用に捕獲した上で、それ以外のイルカが入った網を外し、イルカ漁船がバンガーを鳴らして追い払います。これは、イルカが仲間を心配するなどして太地漁港周辺に残り、定置網に入って漁業者に被害を及ぼさないためです。
②残ったイルカを小船に乗せて、沖に運んで捨てます。
撮影したいときは、①、②、共に「1-2 堤防の上」へ移動し、撮影します。
②は、「2-1 燈明崎」までいって撮影することもできますが、時間との競争となりかなり大変です。
どちらの場合もかなり遠いので、P1000がないと撮影できません。
2 イルカ漁船がイルカ捕獲を諦め帰ってきた。と判断した場合
早朝、イルカ漁船出港を見送った場所、
1-1 太地漁港:東の浜駐車場
1-2 堤防の上
1-3 旧道
へ戻り船の帰港を見ます。
出港時の船の数を数え、帰港する船の数を数え、確認します。
日によっては、数隻帰ってこない時もありますが、その時は他の漁をしているか、珊瑚を取っているようです。
イルカ漁船のデザインは一隻一隻異なるので、「1-2 堤防の上」から観察しても良いでしょう。
なお、他の漁を行っている漁船が、イルカの群れを見つけ、漁協に連絡したら再び出港する場合もあります。
4 イルカ漁 終了
太地漁協裏の「イルカ漁船 係留場所」にすべてのイルカ漁船と、小舟が帰ってきたら漁が終了したと最終判断します。
大方の船が帰ってきたら漁は実質終了ですので、時間があれば、
4 イルカがいる場所
5 施設・史跡・その他
へ行かれてみると良いでしょう。
5 アドバイス
太地町で活動するにあたって、守った方が良いこと、心がけておいた方が良いことをお伝えします。
・法律は遵守する(交通法規(制限速度・一旦停止・歩行者優先)、立ち入り禁止区、ドローン飛行禁止区、その他全ての法律)。
・感染症対策を行う。
・町の人に敵対的な態度を取らない。イルカ漁問題に関しては、敵対的な態度をとることによって解決を遅らせてきた。
・シカやイノシシが多いので運転に注意。
・津波について。南海トラフ地震がいつ来てもおかしく無い状況です。震源地の有力な候補とされている場所は、太地町沖合すぐの海底です。太地はこれまで、津波によってなんども壊滅的な被害を受けてきました。津波は、早い場合数分で到達することが予想されています。いつどこにいても、避難できる高台とルートを確認し、身を守ってください。
4 イルカがいる場所
イルカ漁が終わったら、あるいは漁が無かったら、イルカたちが囚われている場所を中心に回ると良いと思います。イルカたちは、海に浮かべた生簀(いけす)か、コンクリートとガラスのプールに入れられています。
なお、生簀は枠と網でできており、深さ3〜4mほどのボックス型になっています。イルカを引き上げるときは、四方から網を引き上げ、深さを浅くして、イルカを泳げなくしてから捕獲します。
1 生簀
4 イルカがいる場所 生簀は、青のマーカーで示しています。
太地漁港から回るルートで記載します。
1 太地漁港
太地漁協所有。国内外の水族館、ブローカーに販売する用のイルカのストック
2 クジラ浜海水浴場
畠尻湾=The Coveの別名。冬はイルカ漁が行われ、夏は観光客がイルカと泳げるサービスが行われる。
3 太地町立くじらの博物館
クジラショーエリアの生簀と奥の生簀に分かれている。繁殖用、研究用、ブローカーへの販売、国内水族館とのブリーディングローン用のイルカのストック。白変種のハナゴンドウ「ハマタ」がいる。
1969年開館当初、コビレゴンドウを捕獲監禁したが、ほどなくすべて死亡した。その後、シャチなど様々な鯨類を監禁してきた。
4 ドルフィンベェイス
ドルフィンスイム、イルカトレーニング、イルカトレーナー育成などを行う。社長の三好晴之氏は、元くじらの博物館職員。くじらの博物館設立時、イルカ追い込み漁を開始し、確立させた人々の一人。日本のイルカトレーニングの黎明期を作った。元太地町議会議員。町長選にも立候補されている。著書に「イルカのくれた夢」。
5 森浦湾①
太地漁協所有。イルカショー、イルカトレーニングを行う。太地フィールドカヤックの事務所を抜けて、海上の歩道を歩いていく。
6 森浦湾②
所有者不明。白変種のハナゴンドウ「ユウジ」がいるとの話も。
7 森浦湾③
太地町立くじらの博物館、太地町開発公社所有。森浦湾鯨の海構想の繁殖用のイルカ、娯楽利用のイルカ、国内外の水族館・ブローカーに販売する用のイルカのストック。
森浦湾は、おそらく世界で最も大量のイルカを監禁している場所。
8 那智勝浦
所有者不明(ワールド牧場?)。
2 プール
4 イルカがいる場所 施設は、橙のマーカーで示しています。
1 太地町立くじらの博物館 ショープール
くじらの博物館開館当時からのショープール。1969年開館時点では最新式だった。カマイルカ、スジイルカのショーを行っている。
2 太地町立くじらの博物館 マリナリュウム
狭い水槽に、アルビノのバンドウイルカ「スピカ」、スジイルカ、マダライルカ、シワハイルカ、カズハゴンドウが入れられている。
3 ドルフィンリゾート
イルカタッチ、イルカトレーニング、イルカトレーナー養成などを行う。
見学は予約が必要ですが、中学生以上200円、4歳から小学生100円、3歳以下無料で入場することができます。
大阪府出身、海原壱一(かずいち)氏が設立。現在イルカ見学が行われているプールは、かつては海原氏の別荘のプールであり、ペットとしてイルカを飼育していた。当時、大阪との間をへリコプターで移動するなどの豪華な暮らしを、メディア等で指摘されていた。
5 施設・史跡・その他
5 施設・史跡は緑のマーカー、その他は黄で示しています。
那智勝浦から太地に入るルート順で記載します。
施設
1 梛(なぎ)
将来的に、森浦湾くじらの海と遊歩道でつなぎ、ホテルやレクリエーションを提供する一大リゾートとする予定。梛の前身は、公的年金流用や、歴代の厚生労働大臣の地元へ設置されたことから利権の存在が問題となったグリーンピア(大規模年金保養基地年金施設)の一つ、グリーンピア南紀。また、2007年「那智勝浦町が中国系ペーパーカンパニーのボアオと、二階俊博経済産業大臣室で賃貸借契約を交わした」とされ問題となった。
2 道の駅 太地
施設は町所有、運営は太地漁協。イルカ肉やクジラ肉を販売している。トイレは必見。ホテルのような豪華なトイレ。太地町は住民あたりの公衆トイレの数が日本一。三軒町長がトイレの拡充に情熱を燃やしている。「イルカがトイレに変わる町」。
3 捕鯨船(第一京丸)
母船式捕鯨の、キャッチャーボート。母船式捕鯨は、巨大な母船1隻とキャッチャーボート数隻で行う。母船は巨大であり、クジラの解体・冷蔵を行い、キャッチヤーボートは母船より小型で、クジラの捕獲殺害を行う。第一京丸の前方はまっすぐの道であり、そこに立つと殺されるために追われるクジラから視点を感じられる。
4 太地町立くじらの博物館
1969年開館。太地町の近代的イルカ追い込み漁は、くじらの博物館で展示利用するイルカの捕獲を行うために始まった。バンガーでイルカを追い込む方法は、静岡県伊豆半島の技術。最初期のイルカ追い込み漁は、くじらの博物館主導で、漁師たちに依頼して行なった。博物館職員もイルカ漁を行い、銛を打ち込むなどしていた。
最初にイルカ追い込み漁が成功したのは、1973年になってから。
5 太地町役場
イルカ・クジラ産業基盤整備、イルカ・クジラを軸とした観光立町政策等を行う。
役場内に太地町開発公社の事務所がある。太地町開発公社は不動産業とともに、生体イルカの販売(ブローカー)、鯨肉の学校給食への導入、地方への販促など、普及促進事業を行なっている。社長は三軒町長。イルカの生体販売を、太地町くじらの博物館から、太地町開発公社に移動することにより、販売先を公開しなくてよくなった。
6 太地町漁業協同組合(太地漁協)
定置網組合など4つの組合で構成されている。いさな組合(イルカ漁師の組合)は太地漁協の一部。
7 太地漁協スーパー
太地漁協直営のスーパー。果物など食料品を購入できる。生鮮イルカ肉や冷凍クジラ肉がが並ぶ。イルカ漁があった日、翌日は、殺害されたばかりのイルカの肉が売っている。写真撮影は不可なので、遵守する。
8 卸売市場
太地漁協所有。イルカの水揚げ、解体、イルカ肉の競りが行われる。混獲されたクジラの解体も行う。卸売業者が競りに参加、イルカ漁の翌日には、福岡、岡山、大阪などの市場に供給される。
9 和田の岩門
太地で古式捕鯨を成立させた和田家に通じる門の跡。岩をくりぬいて作ったもの。現在、門の奥は住宅が所狭しと並んでいる。
10 定置網
2020年、ミンククジラとザトウクジラの混獲で話題になった定置網。日本全国の定置網にクジラやイルカが混獲されている。
11 古式捕鯨 網船待機場所
古式捕鯨は、山見がクジラを発見、沖のクジラ漁師に知らせ、勢子船はクジラを音で脅して、網船が広げている網に追い込む。この場所で、網船はクジラが追い込まれてくるのを待っていたという。
12 日本鯨類研究所(建設予定地)
立派な建物のデザインが公開されている。
13 平見台
燈明崎、梶取崎と同様、古式捕鯨時代の山見(やまみ:クジラを発見し、クジラ漁師に指示を送る場所)であった。また、生まれすぎた人間の赤ちゃんを間引きするために、赤ちゃんを投げ落とした場所でもある。
3 当日の流れの、
2-1 燈明崎には古式捕鯨の施設跡
2-3 梶取崎にはクジラ慰霊碑や灯台がある。
その他
1 「生簀:森浦湾①」が見える場所
立ち入り禁止になっていなかったら海岸に降りられる。
2 「生簀:森浦湾①」が見える場所
道路の横断に注意。
3 覆面パトカー待機場所
イルカ漁期中、活動家の警戒に当たる覆面パトカーが常時待機している。
6 おわりに
映画「The Cove」などの影響で、太地町は怖いところだというイメージがあります。
しかし、実際の太地町は、海や自然がとても美しく、穏やかでのんびりした場所です。
太地町はイルカを資源として利用したい、私たちはイルカを守りたい。
立場は真逆ですが、人間同士、考え方を交換し、議論することができます。
太地の人々は一枚岩ではありません。
イルカ漁を続けたい人、本当は止めて欲しい人、全く関心が無い人。
地元の人に聞くと、関心が無い人がほとんどだと言っていました。
日本人全体も同じような構造だと思います。
イルカについて知識がなく、イルカ漁や水族館で起こっていることに無関心です。
とすれば、イルカのこと、私たちが体験し、知っていることを伝えれば、イルカを守りたいと思う人々を、もっともっと増やすことができるはず。
イルカ漁では、イルカたちは次々と捕獲され、殺害されていきます。
世界中の水族館では、イルカたちはたった今も苦しんでいます。
私たちは、イルカをはじめとする動物たち側に立ち、解放しようとしています。
その日を一日でも早くしたい。
一人でも多くの人々が動物に関心を持ち、表現することで、解放は実現できます。
多様性ある人々が、多様性ある活動を行うことによって、多様性あるターゲットを動かします。
イルカたちを守るために、より多くの人に太地町に行ってもらいたいと思っています。
太地町に行くのに勇気は入りません。
ただ行き、見て、体験し、感じて欲しいと思っています。
きっと、あなたの中で何かが変わるでしょう。
そしてそれは、あなたにとって、とても大切な体験となるでしょう。
《資料》
GoogleMAP:イルカ漁 調査ルート
GoogleMAP:イルカ漁 ヴィーガンマップ
イルカ漁ドキュメンタリー
イルカ漁調査 完全ガイド.pdf(準備中)