2名の子犬

娯楽に使われている動物

ペットビジネスの問題:ペットショップで動物を買ってはいけない理由

  • 2024/11/24

ペットは、私たちにとって癒しや愛情を与えてくれる大切な存在かもしれません。

しかし、その一方で、ペットを取り巻く現実には、多くの人が目を向けていない深刻な問題が潜んでいます。繁殖ビジネスやペットショップ、飼育放棄、殺処分、そして動物を「所有物」として扱う文化など、ペットを取り巻く課題は多岐にわたります。

この記事では、これらの問題を体系的に整理し、それぞれの背後にある構造や原因を明らかにします。

ペット産業の実態と問題

現在、国内でペットとして飼われている動物の飼育頭数は、

犬 684万4,000頭(2013年に比べ、187万頭減)
猫 906万9,000頭(2013年に比べ、187万頭減)[1]
鳥 91.8 万羽以上(2019)  [2]
他にも爬虫類や魚類までペットにされています。

犬や猫や猛禽類などの繁殖を行なっているのは、ペットショップ、ブリーダー、個人ブリーダーです。目的は金銭的利益。一般の飼い主が繁殖させてしまうケースもあります。

繁殖に使われる動物は、妊娠出産を繰り返し、痛みや怪我や病気などに苛まれます。

令和5年時点で動物の販売を行なっている業者は2万2,057業者。そのうち犬猫を販売している業者は1万6,812業者。そのうち犬猫の繁殖を行っている業者は1万3,267業者もあります。

1万3,267もの業者が利益を最大化しようと、次々と犬や猫を産ませて、日本中で販売しています。彼らの経済活動により、売れなかった犬猫や、繁殖で使い捨てられる犬猫、ブリーダーや飼い主によって捨てられた犬猫、保健所で死を待つ犬猫たちが発生します。

その犬猫をレスキューし保護するために、保護団体は、人的、金銭的余裕もない中、必死で活動を行っています。しかし、保護する先から、ブリーダーが産ませ、ペットショップが販売し、消費者が買い、場合によっては捨てていたら保護団体がどれほど頑張っていたとしても、永遠に問題は解決せず、疲弊していくばかりです。  [3]  [4]

劣悪な子犬生産工場:パピーミル

パピーミルは、犬を利益のための「商品」として扱う繁殖工場です。ここでは、母犬たちは小さなケージに閉じ込められ、休む間もなく妊娠と出産を繰り返させられます。劣悪な環境の中で、犬たちは適切なケアを受けることもなく消耗し、健康を損ないます。生まれた子犬も病気を抱えたまま市場に出され、売れ残った場合は処分されることも少なくありません。このような仕組みが成り立つ背景には、ペットショップや消費者の無知があり、多くの命が犠牲となっています。

近親交配によって生まれつき障害や病気を抱える子犬たち

近親交配によって生まれつき障害を持つ犬

犬や猫、馬などは、血統や、純血種が好まれるため、近親交配を繰り返します。そのため、奇形が増えることになります。足の指が6本あったり、歯が前と後ろに二重に生えたり、関節や目に障害を抱えて生まれてくる動物もいます。他にも、呼吸器や目の疾患、骨の異常など様々な病気を生まれながらにして抱える動物もいます。

「親子の交配、同じ父母から生まれた兄妹・姉弟による交配(極近親交配)」であっても認可があれば交配を認めることが示唆されています。[5] また、この条件、例えば異母兄弟などによる交配には条件がないようです。 [6]

何度もお腹を切り裂かれる母犬

パピーミルで糞尿が垂れ流しのケージにいる犬

中でも、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、パグ、シーズーなど、短頭種(たんとうしゅ)は、人間の好みによって体に比べて頭が大きくなるように品種改変されてしまったため、自力で出産することが困難なため、ほとんどが帝王切開されます。素人のブリーダーが、犬の手足を縛りつけ、無麻酔で激痛に泣き叫ぶ犬を手術することもあります。[7]

結果、母犬のお腹は縫われた跡やホッチキスの後でボロボロ。

また、母犬は、誰からも見られることがないため、毛も爪も伸びきっており、ケージから出られるのは交尾させられる時だけ。散歩なんてもってのほかで、糞尿も垂れ流しなども当たり前。

彼女たちは限界まで出産を強いられるので、子犬にカルシウムをとられて歯がボロボロの場合も。4〜5歳なのに、すでに歯が一本もない子もいます。[8]

また、母犬があまりのストレスで、自分の子どもの足を食いちぎるなどの悲惨な現状もあります。

そうして産んだわが子とは引き離されます。母は別離に抵抗し、子は母を求めますが、それは許されません。

繁殖能力を失うと、施設にとっては「役に立たない存在」となり、処分されるのです。

捕獲・輸入・密輸

犬や猫は家畜化されてからの歴史が長く繁殖で増やされますが、その他の動物は野生から捕獲してきてそのほとんどが一代で死んでいきます。言わば使い捨てです。

日本の爬虫類生体輸入量は、年間34万頭ほど。[9] 2018年時点のエキゾチックアニマルの輸入量では、香港、アメリカ、中国に続いて、世界第4位の輸入国であり問題視されています。[10]  [11] また日本では度々、密輸が摘発されています。2007〜2018年の間に計1,161匹の動物が税関で差し止められています。[12] 

ペットブームのせいで大量生産され、飽きたら捨てられる動物たち

ブームで大量に密輸されたコツメカワウソ

テレビや雑誌、ペット関係のウェブサイト、そして動物園のPR活動によって、ペットブームが意図的に起こされます。これまで、シェパード、シベリアンハスキー、ゴールデンレトリバー、チワワ、コツメカワウソブームがありました。その度に、特定の種が繁殖させられ、そして捨てられ、殺されます。中でもコツメカワウソは、動物園や水族館がブームを引き起こしたため、ペットブームがおこりました。ワシントン条約で輸出入が制限されていたため、密輸が横行し、1頭約140万〜160万円で取引されました。現在は、付属書Ⅰに掲載され、輸入も国内取引も禁止されました。[13]  [14]

動物産業と、動物を欲しがる消費者の欲のために、動物にとっても生態系にとっても取り返しのつかないダメージが与えられます。

動物虐待

飼い主の無知による虐待は、例えば、炎天下のアスファルトでの動物の散歩(肉球の火傷や熱中症)、犬の外飼いなどです。

意図的な動物虐待は、殴る蹴る等の暴力や、残虐な殺害などです。

関連記事:動物虐待と人間への犯罪の関連

動物の逃走、遺棄、虐待、殺害

ペット愛好家、動物娯楽施設、狩猟者等により、ペットをはじめとする様々な動物が外来生物として、日本の生態に侵入してきました。アライグマ、カニクイザル、ヌートリア、オオクチバスなどです。外来生物は、日本固有の動植物を捕食するなどし、生態系や環境に大きな影響を与えています。

人は、この状況を解決するために「害獣」「外来生物」というという言葉を使って動物を殺すことで、動物に責任を負わせてきました。しかし、責任を取るべきは人であり、ペット産業、動物娯楽産業、狩猟産業を終焉させることで、原因は除去されます。

ペットを捨てることは昔から行われてきました。その辺に捨てる場合もありますが、寺や神社や動物保護施設など保護してくれそうな場所に捨てることもあります。その他、生きたまま土に埋めたり、ビニール袋に入れて川に流すなどして、死ぬことを前提として捨てることもあります。

人獣共通感染症

人と動物が共通してかかる感染症を人獣共通感染症と呼びます。当然、ペットにも人獣共通感染症が存在し、極めて危険な感染症もあります。

例えば、犬は、エキノコックス症、犬ブルセラ症など。猫は、トキソプラズマ症など。犬猫に共通する感染症は、狂犬病、回虫幼虫移行症、Q熱など。鳥は、高病原性鳥インフルエンザ、オウム病などです。 [15]

エキゾチックアニマルは、感染症のために輸入が禁止されている動物もいますが、されていない動物もいます。輸入禁止動物は、エボラ出血熱を運ぶサル、ペストを運ぶプレーリードック、その他コウモリやハクビシンなどです。[16]

日本に輸入が禁止されていない爬虫類への調査では、「家庭飼育検体の 32.2%、ペットショップ検体の 80.0%、並びに輸入直後検体の 56.0%からサルモネラが分離された。また、野生(日本とベトナム)の爬虫類の約3割はすでに保菌していた。」とされています。 [17]

ペット業者やペット愛好家等による密輸や遺棄は、人間や人間社会に大きな危険を及ぼしています。

関連記事:動物利用と人獣共通感染症の関連

あなたにできること

  • ペットショップやブリーダーから動物を買わない。このことによって、余剰ペットが殺されること、繁殖に使われる母親の苦しみ、子供との別離の苦しみなどを未然に防ぐことができます。
  • 信頼できる動物保護団体から、ペットを保護する。行き場のない動物、殺されてしまうかもしれない動物を守ることができます。
  • ペットに起こっている問題をさらに学ぶ。
  • 問題や動物保護の重要性などについて周りに伝え、動物に関心を持つ人、動物を守る人を増やす→リーフレット無償提供中
  • 業界やマスメディアに意見を伝える
  • 動物を守る活動を行う。ペットもその他の動物も同じ動物です。犬や猫と同様に、牛や豚や鶏を守る活動を行います。
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンになることで、ペットはもちろん、すべての動物を守ることができます。ヴィーガンはたった一人でできる、動物保護、動物権利、動物解放、環境保護活動です。
  • 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する

動物を解放しよう。

《参照》

[1]Ⅲ. 主要指標 サマリー. 令和5年 全国犬猫飼育実態調査. 一般社団法人 ペットフード協会., (参照 2024/07/30).

[2]規制の事前評価書. 農林水産省. 2021/07. https://www.maff.go.jp/j/assess/hanei/zigyou/RIA/r3/r3-kisei-01b.pdf,  (参照 2024/07/30).

[3]統計資料 動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版). 環境省. https://www.env.go.jp/nature//dobutsu/aigo/2_data/statistics/gyosei-jimu_r05.html,  (参照 2024/07/30).

[4]1. 動物取扱業者登録・届出状況(令和5年度版). 環境省. https://www.env.go.jp/nature//dobutsu/aigo/2_data/statistics/files/r05/2_1_1.pdf,  (参照 2024/07/30).

[5]極近親繁殖について. 一般社団法人 ジャパンケンネルクラブ. https://www.jkc.or.jp/certificates_and_breeding/guidelines/relatives,  (参照 2024/07/30).

[6]犬は想像以上に血が濃い。近親交配と病気、ブリーディングについて. ペットの実家@優良ブリーダー直販. 2021/11/12. https://note.com/petzik_breeder_/n/nc1bf0eddad82,  (参照 2024/07/30).

[7]石井万寿美. 【獣医師の考察】犬452匹虐待、麻酔なしに帝王切開をして懲役1年・罰金10万円、執行猶予3年. YAHOO! ニュース. 2024/05/14. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/07966bf226b96a53398cab5374fe214255a6420b,  (参照 2024/07/30).

[8]モーニング編集部. (2024, August 10). 日本で「犬」はこんな風に殺されている…糞尿にまみれ、出産を強要され続けた後に…「子犬製造工場」で見た、想像を絶する鬼畜の所業. 現代ビジネス. https://gendai.media/articles/-/134528

[9]爬虫類の飼育状況について. 環境省. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_10/mat02_02.pdf,  (参照 2024/07/30).

[10]エキゾチックアニマルの飼育状況について. 環境省. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_10/mat02_01.pdf. (参照 2024/07/30).

[11]若尾慶子, Jordi Janssen, Serene Chng. 日本における爬虫類ペット市場の現状. 自然保護助成基金成果報告書 vol. 27. 2018. https://www.wwf.or.jp/activities/data/20180320_wildlife02.pdf. (参照 2024/07/30).

[12]エキゾチックペット密輸の動向と法執行分析の報告書を発表. WWF. 2020/06/11. https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4334.html. (参照 2024/07/30).

[13]岩下明日香. カワウソ密輸の可哀相過ぎる実態 ペットブームが事件を招いた?. 週刊朝日. 2019/02/03.   (参照 2024/07/30).

[14]コツメカワウソがワシントン条約で取引禁止!. WWF ジャパン. 2019/08/27. https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/4070.html.   (参照 2024/07/30).

[15]人と動物との共通感染症一覧. 東京都動物愛護相談センター. https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/douso/kansen/kan_list/index.html,  (参照 2024/08/16).

[16]エキゾチックアニマルの飼育状況について. 環境省. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_10/mat02_01.pdf,  (参照 2024/08/16).

[17]爬虫類の飼育状況について. 環境省. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_10/mat02_02.pdf,  (参照 2024/08/16).

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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