草をはむ牛

効果的な活動

動物解放活動に集中すべき理由

  • 2024/11/30

「動物解放団体リブ」は、その名前の通り、動物解放の実現にすべてのリソースを集中させています。なお、「リブ」は、Liberation=解放の省略形です。ウーマンリブ(女性解放)のリブと同じ言葉です。

なぜ、私たちは動物解放活動に集中するのか、そしてなぜ、動物解放の実現を目指す活動家やヴィーガン活動家は、動物解放活動に集中するべきなのかについてまとめます。

動物愛護・動物福祉・動物権利・動物解放の違い

「動物擁護活動」とは、動物を守る活動全体を指します。動物を対象とした活動ですので混同されがちですが、動機や思想、活動の中身や目指すゴールは異なります。

上記の図で言うと、左に行くほど人間側に立ち、動物利用・搾取を前提としています。右に行くほど動物の立場に立ち、動物の利用・搾取を認めません。なお「動物権利活動」は、その帰結として動物解放を実現します。両者は、手段と目的の関係です。

根本となる思想は、左に行くほど人間中心主義・カーニズム・種差別思想に基づいており、右に行くほど脱人間中心主義・ヴィーガニズム・アニマリズムに基づいています。

*カーニズム:人々が動物の利用を当然のこととして受け入れ、動物を搾取したり殺害したりする不可視化された信念体系(社会心理学者:メラニー・ジョイ氏による造語)

*ヴィーガニズム:人間は可能な限り動物を搾取しないで生きるべきだとする思想。カーニズムと対を成す。(ドナルド・ワトソンらによる造語)

*アニマリズム:動物を倫理と権利の対象とし、尊厳と自由を保障すべきであるとする主義であり、動物を社会に包摂するための指針。

リブが、動物愛護活動、動物福祉活動、新福祉主義活動を行わない理由

次に、動物解放団体リブが、動物解放活動以外の活動を行わない理由を説明します。

動物愛護活動を行わない理由

前提

動物愛護活動は、人間による動物利用・搾取を前提とした活動です。

ゴール

動物愛護活動のゴールは、猫や犬など特定の動物を守る活動です。わかりやすく言えば自分が気に入った動物のみを守ります。

思想

動物愛護活動は、人間中心主義や種差別に基づきます。

なお、動物愛護は日本語特有の言葉であり、英語でAnimal Welfare:動物福祉と訳されます。動物愛護と動物福祉は思想的基盤を共有します。

動物愛護活動家

動物愛護活動は、個人的に好む動物以外は、無関心であるか、場合によっては積極的に搾取を認め、実行します。例えば、人為的な繁殖や親と子を引き離す行為、肉食や動物性製品の利用、つまり動物の搾取を肯定します。(*犬猫等の保護活動をしながら動物解放を目指す人々は、動物解放活動家に分類します)

動物愛護活動のメリット

これらの活動には動物にとってのメリットがあることから、一定の意義を認めることができます。例えば、現在存在する家畜動物や愛護動物の苦痛の軽減や保護です。

動物愛護活動の未来

動物愛護活動を行い続けたとしても、未来永劫、動物を根本的に守ることにはつながりません。なぜなら動物愛護活動は、動物に対する ”罪悪感の少ない”搾取の実現を目的としているからです。

動物解放団体リブはこのような未来を望んでいません。

動物福祉活動を行わない理由

前提

動物福祉活動は、人間による動物利用・搾取を前提とした活動です。

ゴール

動物福祉活動のゴールは、畜産動物や動物園水族館動物、実験動物などの生きている間の苦痛を減少させることです。その目的は、消費者の罪悪感を軽減し、利益を維持、あるいは拡大することです。

動物福祉において、動物が人間に利益をもたらす場合、人間が動物に苦痛を与えることは当然の行為として了解されています。苦痛を与えることとは例えば、監禁、拘束、人工授精、暴力、精神的暴力、虐待、殺害などです。

思想

動物福祉活動は、人間中心主義・カーニズム・種差別思想に基づきます。

動物福祉活動

動物福祉活動を行っているのは、動物産業(利害関係者含む)と、動物擁護活動家です。

動物福祉活動を行うべきは、本来動物産業自身です。

しかし、動物擁護活動家も動物福祉活動を行います。動物擁護活動家が動物福祉活動を行うこと、つまり動物搾取に基づく利益の維持や拡大をサポートすることは本末転倒です。

活動家は、動物福祉自体が動物搾取を存続させるための誤魔化しであると批判しなければなりません。

動物福祉活動のメリット

現在存在する動物の苦痛を軽減します。活動家が動物福祉活動を行う理由はこの点にあります。

動物福祉活動の未来

動物福祉活動を行い続けたとしても、未来永劫、動物の搾取・苦痛・差別はなくなりません。動物福祉の目的は動物の搾取に基づく利益獲得の永続化であるため、当然、動物に権利を与えることも解放することもありません。

動物解放団体リブはこのような未来を望んでいません。

新福祉主義活動を行わない理由

新福祉主義(New Welfarism)とは、人間による動物利用・搾取の廃止を目指しながらも、現状では実現困難であるため、先ずは現在存在する動物の苦痛を軽減するための動物福祉の推進を行う活動です。漸進主義とも呼ばれます。

新福祉主義的な方法論は、1959年mに動物福祉の3Rを提唱したラッセル(William Russell)とバーチ(Rex Burch)によって始められたと考えられています。この方法論を言語化し「新福祉主義」と名付けたのは、アメリカ合衆国の法律学者で廃止主義者のゲイリー・フランシオン(Gary Lawrence Francione)です。[1]

新福祉主義のメリット

  • 現在存在する動物の苦痛を軽減することができる
  • 動物の現状に関する啓発、教育を行うことなどができる
  • 行政や産業と対話・交渉できる
  • 動物利用を肯定する市民からの賛同や支援が得られる等

新福祉主義のデメリット

しかし一方、新福祉主義に基づく活動が盛んになって数十年が立ち、その問題点が指摘されています。問題点とは、基本的に動物福祉の問題点と同じです。

  • 動物福祉に配慮しているということで、消費者の罪悪感を軽減させる
  • さらには、配慮された動物搾取を倫理的な行いだという価値観を産み、一定の人々の価値観を固定化させる
  • 動物福祉を善だと表現することにより、問題の根本に社会や市民が目を向けることを妨げる
  • 動物の苦痛が根本的に解消されることは永遠に無い

そして極めて重要な問題点は、

  • 動物解放活動家や、ヴィーガン活動家が、動物産業や動物搾取の永続化に力を貸している
  • 動物解放に投入されるべき貴重なリソースが、動物福祉の推進に利用される。つまり動物産業のリソースとなる。
  • 動物解放に投入されるべき貴重なリソースとは
    • 動物擁護活動家やヴィーガン活動家などの人的リソース
    • 資金、
    • 時間
    • 知識
    • 経験等)

これらのデメリットは、結果的に動物の権利獲得や動物解放を遅らせる原因となり得、実際にそうなっていると考えられます。

動物解放団体リブが、新福祉主義を行わない理由は、それが回り道だからです。

リブが動物解放活動に集中する理由

ゴールに最も早く辿り着く方法は、ゴールに向かってまっすぐに進むこと。つまり、

「動物解放を最も早く実現する方法は、動物解放に向かってまっすぐ進むこと」

これが動物解放団体リブが、動物解放活動に集中する理由です。

動物解放は、動物が人間によって与えられる苦痛を、根本的に、不可逆的に解決することができます。動物解放活動以外の方法は、解決にはなりません。

動物は今も苦しんでおり、時間もリソースも限られています。だからこそ使えるリソースはすべて、動物解放に集中させなければなりません。

動物擁護活動家やヴィーガン活動家など様々なリソースを、動物解放活動に集中させることで、確実に動物解放の実現を早めることができます。

現在やるべきことをやる

リブの活動はすべて、動物解放を最も早く実現させるには何をすればいいかを考えて行っています。そのためには、ゴールから逆算し、現時点で行う”べき”活動を見定めて、実行する必要があります(30年前に行った活動や、100年後に行うはずの活動を今行っても意味は無い)。

リブの第一期は、個別具体的な動物利用問題の調査や具体的なアクションを行いました。

第二期はその反省を経て、2現時点で絶対にやっておくべき活動である、動物解放を実現するための社会基盤作りに集中しています。

すなわち、「動物解放のための総合サイト」「ヴィーガンプロジェクト」「動物解放アカデミー」です。

日本の動物解放のための社会基盤を作る 3事業

動物解放のための総合サイト

日本人全員がアクセスでき、動物に関する知識を得られるサイトです。日本人の、動物や動物利用に関する知識や意識のボトムアップを図ります。

ヴィーガンプロジェクト

ヴィーガンに興味がある人がスムーズにヴィーガンにシフトし、幸せに生きるためのサポートをします。ヴィーガンを、意図的・積極的に増やすことで、動物解放を実現します。。

動物解放アカデミー

動物を守りたいという意思を持つ人を対象とした教育プログラムです。動物擁護活動に関する網羅的で体系的な知識やスキルを提供し、新しい活動家を発掘し、高度化し、ネットワークします。

つまり、「動物の現状を知る日本人を増やし」→「ヴィーガンを増やし」→「動物擁護活動家を増やす」ことによって、日本に動物解放を実現するための社会基盤を作り、動物解放の実現を早めます。

あなたにできること

  • 「動物解放を最も早く実現する方法は、動物解放に向かってまっすぐ進むこと」を心に留める
  • 動物解放という目的を見定め、実現を確信して、まっすぐに活動する
  • 動物解放を実現する方法を考え続け、トライ&エラーし、共有する
  • 動物に起きている問題、動物の素晴らしさ、保護の重要性などについて周りに伝え、動物解放を目指す人を増やす
  • 動物産業や政治家や行政、マスメディアに動物解放という言葉と概念を教える
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンになることとは、個人的に動物を解放することです。そのことは、動物解放を大きく前進させます。
  • 動物解放団体リブの事業に協力する
  • 動物解放団体リブを支援する。マンスリーサポーターになる

動物を解放しよう。

《参照》

[1] Nicola Taylor. Whither rights? Animal rights and the rise of new welfarism. 1999. https://ro.uow.edu.au/cgi/viewcontent.cgi?article=1037&context=ai, (参照2024/10/27).

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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