この記事は、NPO法人動物解放団体リブによる、「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。
桐生が岡動物園は、自然に囲まれた小高い丘の上の市街地にある、群馬県唯一の公立動物園。
面積は41,000平方メートルあり、動物園だけでなく水族館や遊園地も併設されています。
そのため、家族連れだけでなく、小学校、幼稚園、保育園などの小旅行や遠足にも活用されています。
その一方、動物たちは非常に苦しんでいることが分かりました。
特に、ライオンの極めて狭い形態展示が印象的でした。
狭い環境、隠れることができずずっと人間に見られ続ける状態、家族と引き離されるストレス、異常行動に陥るサルなど、多くの問題があります。
53年間監禁されたゾウのイズミ
昭和39年(1964)4月22日から平成29(2017)年4月4日の53年間監禁された、ゾウのイズミ。
ゾウは本来、家族や親戚と共に暮らし、家族で助け合いながら過ごし、豊かなコミュニケーションをしています。また、一日に120kmも歩くことがあります。
そんなゾウのイズミは、53年間もの長い間、死ぬまで、ずっと一人で、コンクリートの狭い檻の中に閉じ込められていました。
日本の動物園や水族館で閉じ込められているゾウたちは、ストレスによって苦しみ、精神病の一種である「異常行動」を繰り返しています。
施設は「長寿でした」と誇っています。
しかし、ゾウにとってはそれだけ苦しむ時間が長かったということです。
現場に行くと、地面がゆるく傾斜しているのが分かります。
これは、人が掃除をしやすいように設計されています。
ですが、ゾウにとっては非常に悪い環境です。この傾斜によってゾウの膝や足の裏には負担がかかり、痛めてしまいます。
それだけでなく、この場所はゾウが住むには狭すぎます。
家族とも引き離され、異常に狭いコンクリートの施設に閉じ込められ、傾斜により足を傷め、人間に見られ続けるひどい環境。
ここに53年間閉じ込められたイズミの人生は、何だったのでしょうか。
監禁していた動物が亡くなった際、施設は往々にして「ありがとう」と表現します。
しかし、イズミにとって、「ありがとう」は全く意味のない言葉です。
施設が収容しなければ、イズミは家族と過ごすはずでした。そして広い地球を歩き、ご飯を食べ、自由に遊ぶ、そんな豊かな人生を過ごすはずでした。
しかし、イズミは、たった一度の人生を、私たち人間に奪われたのです。
狭い檻にいたヒヒ
かなり狭い檻に驚きました。
檻から手が届く範囲の草が無くなっています。
十分なご飯を貰えていなくて草を食べているのか、それとも施設内に自然なものがないから触れたいのでしょうか。
ひっかいた跡が残る壁。苦しみの跡。
人間もそうであるように、動物も、他者から見られ続けることにストレスを感じます。
しかし施設では、利用客がいつでも動物を見られるようにするために、動物が隠れたくても中の小屋に戻れないように扉を閉めていることが多いです。
これだけひっかいた傷が残るということは、それだけ中に入りたいという行動の現れです。
ヒヒは攻撃的で、喧嘩をします。
広い空間でもそうですが、狭い環境なので余計喧嘩をします。
ヒヒのおしりの傷は、おそらく喧嘩の時にできたひっかき傷だと考えられます。
檻の中には金属の鎖がかけられていました。
動物福祉の一環として設置されているのでしょう。
せめて自然素材にすべきですが、そうするとボロボロになってしまい、コストがかかるので扱いやすい金属にしていると考えられます。
閉じ込められたヒヒたちは、一生この小さな檻の中で暮らすことを強制されているのです。
隠れる場所がないライオンの檻
開放的な建物に見えますが、あらゆる角度から人間に見られる環境に、動物たちは人知れずストレスを感じています。
この狭い檻の中に5匹のライオンが閉じ込められていました。
かれらには、自由に走り回れる広さが必要です。
人間に常に見られ続ける檻の中、唯一身を隠せる机の下に潜り込んでいました。
動物園でも学校でも教えてくれませんが、動物たちは常にストレスを感じ、場合によっては精神を病み、異常行動まで起こしているのです。
ニホンザルのデッドマンウォーキング
多くのサル山で見られるデッドマンウォーキング。
デッドマンウォーキングとは、囚人が死刑台に向かう時に、看守が叫ぶ言葉。
日本の多くの猿山で見られる、同一方向に猿たちが回転する行動が、ここでも行われていました。
ここで死ぬことが決まっている猿たちの行進です。
また、壁全体のペンキが、不自然にはがされている箇所が多くありました。
原因は不明ですが、ストレスによりペンキを食べている可能性もあります。
本来であれば、親子は自然の中で自由に生きているはずでした。
メガネカイマンの極狭の牢屋
体の大きさと反して、檻が狭いのが分かります。
水も非常に汚れていました。
体を折り曲げないと方向を変えられないほどの狭い場所に、ずっと閉じ込められていました。
動物園が主張する役割の一つとして「教育・環境教育」がありますが、これは動物園が利益を生み続けるための表向きの主張にしかすぎません。
動物園や水族館のような施設では、本来の動物の姿は学べません。学べるのは、家族や仲間と引き離され、狭い場所に閉じ込められ、それによって精神が狂ってしまった動物たちのことだけです。
そして、それだけでなく、動物を当然の様に閉じ込めることに対して疑問を持たず、動物利用が無意識のうちの常識になってしまう、動物にやさしくない子どもを育てることになってしまいます。
これを私達は「動物差別教育」と呼んでいます。
テナガザルの行動展示
これは行動展示と呼ばれます。
動物の生態に合わせた能力を自然に誘発させて、見る人を楽しませるための作りがされた展示のことです。
一般の方が見ると、特に問題はなさそうに見えるかもしれません。
しかし、この展示は、テナガザルを沢山動かすような仕掛けがされています。
テナガザルは基本的に水には入りません。
その特徴を利用し、床面には水を張ることで、地面にゆっくり座ることができないように作られています。
そのため、かれらが落ち着ける場所は棒と小さい木の板の部分と丸いコンクリートの部分だけ。
結果的に、テナガザルが動いている時間を増やすことで、人間が「楽しめる」ようにされています。
また、行動展示のほとんどは、コストや構造的に人工材料をメインに使われることが多いです。
動物を捕獲・監禁すること自体が非倫理的ですが、それだけでなく、それぞれの動物の生態環境とかけ離れた施設にしていること自体も不適切でしょう。
この展示も、隠れる場所がないので、常に人の目に晒され続けています。
本来は森の中に住み、複雑なフレーズを混ぜた歌を歌うことで家族の絆を深めるテナガザル。
しかし、人間に捕まえられ、監禁され、土も草もないこの環境で、このサルたちはこの人口の木で一生を過ごしていかなければなりません。
「毛皮に触ってみよう」
死んだ後も搾取される動物たち。
これが人間の皮膚だったら、倫理的と言えるでしょうか?
「動物に石や物を投げつけるのはやめましょう」
注意書きが貼られていました。
注意書きがあるということは、このような行動をする人がいるということです。
人間以外の動物を、人間の下の存在とみなし、当然のように利用していい存在だという無意識の教育が、このような行動をする人間を育てます。
我々がすべき教育は、人間以外の種を差別し利用することではなく、種によって差別するのではなく、本当の意味で他者を尊重する心ではないでしょうか。
看板の右下に記載してあった言葉。
「動物もヒトもみんな同じです。相手が傷つくこと、嫌な思いをすることは動物にもしないで下さい。」
動物たちにとって、監禁されること自体が嫌なことです。心も体も傷ついています。
もしあなたが、家族から引き離され、これまで住んでいたところから引き離され、知らない土地の狭いコンクリートの檻に入れられ、毎日死ぬまで見世物にされるのは、あなた本来の自由を奪っていることになるでしょう。
それは、人間以外の動物たちも同じなのです。
桐生が岡動物公園にはこれだけの数の動物が監禁されています
飼育動物点数(令和5年2月1日)
このような施設では、動物の単位は「点」と表されます。
設けるための「物」でしかないのです。
このような一つ一つの細かい表現が、私たち人間の、動物に対する考え方を表しています。
- 哺乳類20種→117点
- 鳥類31種→172点
- は虫類8種→18点
- 両生類5種→7点
- 魚類43種→186点
- 無脊椎類5種→22点
合計112種、522点
入場無料の理由は?
多種多様な動物たちを飼育しているにも関わらず、入場料は無料で利用できるということで多くの方に人気の場所です。
ですが、動物たちの餌代や、飼育員さんの仕事など、それなりにお金がかかっているはずです。これらの費用は、市民の税金から捻出されています。
税金の使い道が、本来の環境からかけはなれた場所で、精神的苦痛を生涯抱えながら、死ぬまで監禁され続ける動物たちの監禁のために使われているのです。
また、子供には本来の動物を知るどころか、動物利用教育が行われている現状です。
正しい動物たちの教育を知ることは、このような施設ではまず得ることはできません。
何年後になるか分かりませんが、税金を使って動物利用をすること自体は、必ず禁止になる社会が来るでしょう。
ついでに、桐生市のふるさと納税の項目に「桐生が岡動物園の園内設備事業」というのもありました。
動物利用に反対する方は、ふるさと納税のお金の流れにも目を向けていきましょう。
動物利用問題をより多くの人が知り、考え、行動を変える人が増えていくことで、一人ひとりの小さな力は、必ず、社会を変える大きな力となります。
「日本一周!動物園水族館調査」とは?
日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。
様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。
その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。
その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。
私たちが目指す社会
私たちのビジョンは、人間による全ての動物に対する抑圧や搾取がない、緑豊かで平和な地球。
動物たちは解放され、自然の中で自由に生き、愛し合い、子どもを育てています。
人類は動物たちをやさしく見守っています。
このような社会を実現するため、私たちは動物利用問題の解決に努めます。
まとめ:動物を解放しよう
修繕も間に合わずボロボロな施設も目に入り、狭い場所で閉じ込められていたり、人工物のの中で一生を過ごしている環境は、動物たちにとっては苦痛であり動物たちの自由を奪っています。
動物園では、本来の動物たちの素晴らしさは学べません。
学べるのは、人間に搾取され、心を病んでしまった動物たちのみじめな姿だけです。
世界の大きな流れとしては、このような動物園そのものの是非の議論が進み、動物園が閉鎖された国もあります。
日本でも、本当の意味で他者への思いやりを持った人が増え、動物搾取に加担しないという選択を取る人が増えています。
世界の遅れを取りつつも、人間を含めた「動物解放」が実現される未来を、私達で作っていきましょう。
<補足情報>
〔情報〕
種類:行政
所有:桐生市
運営者:桐生市
JAZA:〇
〔調査情報〕
調査日:2018年7月13日
LIBページ:https://animal-liberator.net/animal-liberator/180713-99-kiryu
写真:https://photos.app.goo.gl/1xEk5KpLZ3ZW7hnB8
動画:https://www.youtube.com/playlist?list=PLQT1RmSZIgCrGknI6gpr3-voxPwMe2iGC