この記事は動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。
上野動物園は、日本で初めてできた動物園で、約3000にも及ぶ大量の動物が閉じ込められています。
大人気の施設ですが、その一方で動物たちはひどい状況に陥っていました。
- 閉じ込められたストレスで異常行動をするゾウ
- 猛暑に晒され異常行動をするホッキョクグマ
- ねずみの死体があちこちに転がる、異常な光景
- 種の保存の嘘
など、動物園は「教育」や「種の保存」を掲げていますが、実際には動物たちは本来の生き方を奪われ、限られた空間で異常行動を示していました。上野動物園に閉じ込められた動物たちの現実を、詳しく見ていきます。
鼻を振り続けるゾウの異常行動
上野動物園では、当時(2018年調査時点)4頭のゾウが監禁されていました。彼らの多くが、ストレスによる異常行動を示していました。
ゾウはしきりに鼻を揺らす「トランクスインギング」を繰り返し、時には吠えたり、壁に頭をぶつける姿も確認できました。頬や脚には傷があり、精神的な苦痛が表れていました。
ゾウは豊かな精神を持ち、深い思考をする動物です。それにも関わらず、人間の都合で繁殖に利用され、流産を経験し、子どもを奪われ、各地へ移動させられています。
上野動物園では、ゾウの異常行動についての説明はなく、代わりに使役・戦争・観光など、ゾウが人間のために搾取されてきた歴史を肯定する展示がされていました。
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こうして動物園は、搾取を「教育」として正当化しているのです。
ねずみの死体があちこちに転がる、異常な光景
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上野動物園では、至るところにネズミの死体が転がっていました。これらのネズミは、肉食動物の餌として与えられるために 繁殖させられ、殺されています。 つまり、動物園では 一部の動物を生かすために、他の動物が人為的に生まされ、利用され、命を奪われているのです。
猛暑に晒され異常行動をするホッキョクグマ
調査日は非常に暑く、本来なら氷に覆われた寒冷地で生きるホッキョクグマにとって、過酷な環境でした。
監禁されたホッキョクグマは、絶えず動き回る異常行動を示していました。これは監禁されているストレスによるもので、野生では見られない行動です。
自然の中で生きるホッキョクグマと比べると、動物園の個体がどれほど不自然な状況にあるかが分かります。動物園では、「動物本来の姿」を知ることはできず、そこにいるのは人間に監禁された不自由で心を病んだ動物たちです。
激しい異常行動をしているツキノワグマ
ツキノワグマも、典型的な異常行動を示していました。同じ場所を行ったり来たりし続けていました。
動物の異常行動について知らない人からはたまに「餌の時間が近づいて興奮しているだけでは?」という意見があります。しかし、違います。野生下では広範囲を移動し、環境を探索しながら生きるツキノワグマにとって、この単調な動きの繰り返しは不自然なものです。
日本では、施設や研究者が異常行動を過小評価し、問題として認識しようとしません。そのため研究も進まず、知見が蓄積されず、本来の動物について伝える教育はほぼありません。
政治利用される客寄せパンダ
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1972年、日中国交正常化を機に上野動物園にパンダが来日し、日本ではパンダブームが始まりました。しかし、パンダは外交の道具として利用され、今もその役割を担わされています。
動物園はパンダの出産を宣伝し、来園者を増やす手法を続けています。平日でもパンダの子どもを見るために長蛇の列ができるほど、その効果は大きいですが、生まれた子どもは一生監禁され、野生に戻してもらえることはありません。人間にとっては「可愛い赤ちゃん」でも、パンダにとっては生まれた瞬間から自由を奪われる運命です。
初めて来日したカンカンとランランは無償提供でしたが、2011年に来たリーリーとシンシンには年間約1億円のレンタル料がかかり、これは東京都の税金で支払われています。外交の駆け引きや経済効果のために利用され、パンダ自身の意思とは無関係に監禁され続ける現実があります。
戦時猛獣処分でゾウやライオンなどが殺された
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第二次世界大戦中の1943年、日本各地の動物園で「戦時猛獣処分」が行われました。これは、空襲による猛獣の脱走を防ぐために、動物を殺すというものでした。
上野動物園では、ゾウ、ライオン、トラ、クマ、ヒョウ、毒蛇などが処分されました。方法は毒殺や絞殺、刃物による殺害でしたが、ゾウは大きすぎて対応できず、餓死させられました。最後まで芸をして餌をねだり、生きようとしましたが、叶いませんでした。
動物たちは、人間の都合で監禁され、見世物とされ、そして苦しみの中で命を奪われました。このような悲劇があったにも関わらず、上野動物園は現在も世界各地から動物を集め、監禁を続けています。
災害時には人命が優先され、動物の命は後回しにされます。戦時中と同じように、再び「都合の悪い動物」は処分されるのでしょうか。
種の保存という建前の嘘
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ゴリラは、生息地の開発や乱獲、環境破壊によって絶滅危惧種に指定されています。
動物園は「絶滅危惧種の保護と繁殖」を目的としているとされていますが、実際には日本に迎え入れたゴリラよりも、動物園で死亡したゴリラの数の方が多いのが現状です。
さらに、日本の動物園で繁殖させられたゴリラが自然に帰された例はありません。保護を掲げながら、野生復帰の道も用意せず、ただ檻の中で生まされ、死んでいく。「種の保存」は利用客を騙すための建前でしかないのです。
日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる
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日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。
様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。
その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。
その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。
あなたにできること
上野動物園で見た動物たちの姿は、動物園が動物のための施設ではなく、人間の娯楽のために動物を利用する場であることを示しています。
では、私たちに何ができるのでしょうか?
✔ 動物園に行かない選択をする
「自分一人が行かなくても変わらない」と思うかもしれません。しかし、動物園の運営は多くの人の選択によって成り立っています。一人が行かない選択をすることで、同じ考えの人が増え、動物を見世物にするビジネスは続けられなくなります。
✔ 問題を広める
多くの人が、動物園の実態を知りません。SNSでシェアしたり、身近な人と話すことで、動物たちの現状を伝えることができます。
✔ 動物を利用しない選択を支援する
動物を利用しない社会づくりをする団体の取り組みを支援することで、動物たちが本来の姿で生きられる未来を作ることができます。
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動物たちは、選択を奪われています。しかし、私たちの選択が、動物の未来を変える力を持っています。動物を見世物にする社会ではなく、動物の権利を尊重する社会へ、一歩を踏み出してみませんか?
調査日:2018年6月19日