あなたは知っていますか?
化粧品のために、目に化学物質を入れられ、目を潰されるウサギたちを。
椅子に括りつけられ、頭に電極を差し込まれ、死亡していくサルたちを。
世界中では毎年約1億1,530万、日本では推定2000万もの動物が、動物実験によって死亡しています。しかし、一般市民は動物実験の存在や実態についてほとんど知らされていません。
また、私達は、動物実験が科学の進展に必要不可欠だと思わされてきました。一方で、現在は多くの科学者が動物実験に反対しています。
この記事では、動物実験の実態と問題点、代替法の進展などについてお伝えします。
動物実験の概要
動物実験が実施されるのは非常に他分野に及びます。行動研究、医学研究、製品毒性試験、軍事研究、農業研究、解剖実習などです。
そのために、世界では概算で1億1,530万、日本では推定2000万の動物が、毎年死亡していると言われています。
(ただし日本には正式な統計データが存在せず、実態把握が困難です。)
動物実験に使われる動物は、人間に近いという理由で、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウサギ等の哺乳類が多いです。他にも、いわゆる「家畜動物」や、鳥類、爬虫類、魚類など多くの種類の動物が実験に利用されています。
規模の大きさに反して、日本では動物実験を規制する法律はありません。
凄惨な動物実験の実態
「動物実験」と聞いて、どんな事が行われているか、想像できますか?
多くの方は想像ができないと思います。それは、動物実験については情報開示が極めて乏しく、ほとんどの市民が実態を知ることができない状況に置かれているからです。
以下は、実際の動物実験の例です。
水中で疲れ果てるまでもがくマウス・ラットたち
日本において年間2000万と推定される実験動物のうち、90%以上はマウスやラット等だと言われています。
これほど多い理由は、
- 人間と同じ哺乳類であること
- その一方で体が小さく飼育コストが低いこと
- 繁殖力が高く実験用個体数の確保が容易であること
- 世代交代期間が短いため交配がしやすいこと
- 遺伝子操作技術が確立していること
等です。
交配が繰り返された結果、おとなしい性格になっており、「扱いやすい」とされています。
そんなかれらは、ストレスの実験、共感の実験、たばこの実験、疲労の実験、老化の実験など、ありとあらゆる場面で利用されています。
例えば「強制水泳試験」は、主に抗うつ薬の有効性を評価するために用いられる実験です。この試験では、うつ病になるよう遺伝子操作がされたマウスが、水の入った容器に入れられ、泳ぐことを強制されます。容器は脱出できないように設計されており、マウスたちは疲れ果てるまで必死にもがきます。このテストでは、動物がどれだけ早く「諦める」かを測定し、抗うつ薬の投与がその「諦める」時間をどれだけ延長するかを見ます。
この実験は動物に強いストレスと苦痛を与える事はもちろん、そもそも泳ぎをやめる理由が「諦め」だという仮定自体も非科学的であるという批判が科学者からも出ています。
目に薬物を入れられ、失明するウサギ
毎年、次々と新製品が販売されている化粧品。
その裏では、毒性試験のために使われるウサギたちがいます。
例えば、目への毒性を調べる「ドレイズ試験」。
ウサギは、目をこすることができないように体を拘束され、目に薬物を投与されます。
痛みで暴れ、背骨や首を骨折するウサギもいます。目はただれ、出血し、腐り、失明します。
そして、最終的にウサギたちは試験が終われば殺処分されるのです。
それ以外にも、皮膚に対する毒性試験にも使われます。
毛を剃られ、皮膚に直接薬剤を塗られ、上から覆いをかぶされます。
ウサギの皮膚はただれ、熱い痛みに襲われ、苦しみます。他と同様、用が済んだら殺されます。
頭蓋骨が割れ、死ぬまでハンマーで殴られるサル
高度な知性と社会性を持つサルたちも、人間に近いという理由で動物実験の被害に遭っています。
例えば、サルの頭部の衝撃を計る実験。サルを椅子に座らせ固定し、サルの前頭部と後頭部にハンマーを激しくぶつけました。結果として18頭中4頭が頭蓋骨骨折を起こし3頭が死亡、残りの14頭は骨折はしていないがその内5頭が死亡、生き残ったサルたちもすぐに屠殺され解剖されました。このような悲惨な実験の結論は「脳震盪が激しいほど脳波の振幅も増す」などというものでした。
温厚で従順であることを利用され、実験される犬たち
温和で従順な犬も、実験によって苦しみます。
例えば、ビーグル犬にマスクを装着し、たばこの煙を吸わせるなどの例。
他にも、農薬や殺虫剤の毒性検査のために、薬物入りの食事を食べさせられることもあります。薬物は注射されたり、強制的に吸入されたりすることもあります。生き残った場合でも、組織や臓器を検査するために最終的に殺されます。
頭蓋骨に穴をあけられ、電極を埋め込まれるネコ
猫は、脳や視神経の研究に利用されています。
この時、猫は抵抗できないように手足を拘束されます。そしてドリルで頭蓋骨に穴をあけられ、脳に直接電極が挿入されます。
その後例えば、体内に薬物を注入され、その反応が観察されます。
他にも、聴覚に関する研究では、音に対する脳の反応を測定するため、猫の耳を切り落として椅子に拘束します。
脳への電極刺激、脳の切除など、実験内容は様々です。このような実験では、観察期間が数ヶ月から2年もの長期に及ぶこともあります。
動物実験の問題点
「動物がかわいそうなのは分かるが、人間の健康のためにはやむを得ないのではないか。」
そう思う方もいると思います。
これに対しては、二つの論点に分けて反論を述べたいと思います。
一つは、そもそも動物実験の結果は人間に適用できないことが往々にしてあるということ。つまり、そもそも「人の健康のため」になっていない実験が圧倒的多数であるという点です。
そして、最も重要なのは二つ目の論点。人間に対して役に立ちさえすればどのような実験も許されるのかという点です。
①殆どの動物実験はそもそも役に立っていない
アメリカ食品医薬品局の報告によると、動物実験を含む前臨床試験を通過した治験薬のうち92%は人間の臨床試験では失敗しています。さらに新しい分析によると、失敗率は96%にまで達しています。
基礎研究に関してはさらに悲惨で、ある研究が有用な薬剤の開発に結びつく可能性はたった0.004%しかありません。
原因①動物と人間の違い「種差」
この原因の一つは、実験で利用される動物と人間との間に違いがあり、結果を人間に適用できないことです。この違いを「種差」と言います。実際に、サルへの動物実験で問題がなかったが、人間への臨床試験では世界中で約140,000件の心臓発作と脳卒中を引き起こし、60,000人が死亡していると推定されるケースや、動物実験では心臓病の予防に効果があるとされたホルモン補充療法が、人間に対しては心臓病のリスクを高めた例など、種差による問題はきりがないほど上がっています。
原因②個体差、実験室の差
また、当然個体差もあるため、同じ種の動物を用いた実験でも、個体群によって異なる結果が出ることも少なくありません。
そもそも、同じ薬物の毒性試験でも、試験方法や実験室の違いによって結果が異なることも指摘されています。
原因③「実験動物」が抱える異常なストレス
さらに、動物たちが置かれる異常な空間の中でのストレスも無視できません。動物たちは、家族と過ごすことなど愚か、日の光を見ることも出来ません。極狭の檻に監禁され、恐怖におびえ、痛みや苦しみにもだえます。そんな環境下で動物たちはストレスを抱え、様々な症状が出て、実験結果は大きな影響を受けます。しかし、動物実験は動物たちのストレスによる影響をほとんど無視している状況です。
つまり、種差を始めとする様々な欠陥が存在しており、数値で見ても大半の動物実験はそもそも役に立ってすらいないという現状があるのです。
②人の役に立ちさえすれば、何をしても良いか
その上での話ですが、確かに動物実験は人間の役に立った例もあるでしょう。(だからと言って、それが唯一で最善の手法であると言えるわけではありませんが。)
では、人の役に立つならば、何をしてもいいのでしょうか?
もしもその理屈が通るならば、人間への実験は動物実験よりもさらに役に立つため、推奨されるはずでしょう。
しかし、人間に対する実験は倫理的に許されません。これは、人間が持つ基本的な権利と尊厳を侵害する行為だからです。
この倫理的な原則は、人間だけでなく動物にも適用されるべきです。なぜなら、動物も喜びや苦しみを感じる存在であるからです。
つまり、動物実験を続けることは、科学的にも倫理的にも問題なのです。
以上のような理由から、動物実験への反対運動は1980年代から世界的に大きなものとなりました。現在も動物擁護団体はもちろん、多くの市民、科学者、医師らが動物実験に反対しています。
動物実験代替法の進展
細胞培養やコンピューターモデリング、臨床試験に基づく統計的手法など、動物を使わずに人間の健康を研究するための方法が増えています。
動物実験の代替法は、多くの場合、より安価で、時間が短く、効果的です。
例えば、細胞培養技術は人間の細胞を使うことで、より直接的に人間の反応を予測することができます。この方法は、動物実験のように種差の問題に悩まされることがありません。
他にも、コンピューターモデリングは、仮想環境で薬物の効果や副作用をシミュレーションすることで、実験の初期段階で有用な情報を提供します。これにより、実験にかかる時間とコストを大幅に削減することが可能です。また、この技術は、動物実験では見逃されがちな微細な反応や相互作用を詳細に分析できるため、より精密なデータを得ることができます。
動物実験代替法が動物実験にとって代わるためには、さらなる研究、規制の整備、研究者への教育等が不可欠であり、市民にはそれを後押しする世論を形成することが求められるでしょう。
動物実験に依存しない研究方法を推進することで、科学界全体がより倫理的で効率的な研究を行うことができるようになります。
あなたにできること
これ以上、動物を苦しませなくて済む社会を作るため、あなたにできることがあります。
1.動物実験がされていない商品を買う
商品に「動物実験をしていません」などの記載があるものを探してみましょう。
他にも、動物実験をしていない化粧品等に、認証マークがついていることもあります。
パッケージに記載がない場合でも、ホームページに記載されていることもあります。
2.企業に意見を伝える
動物実験についてぜひ企業へ問い合わせてみましょう。「この商品は動物実験をしていますか?」「動物実験をしないでほしいです」など、簡単でいいので意見を伝えてみましょう。
問い合わせる人が増えれば、企業にとっては消費者の意識の転換を感じざるを得ません。
3.ヴィーガンになる
ヴィーガンとは、可能な限り動物を利用しない生活をする人のこと。実験されている動物はもちろん、他の動物にもやさしい生き方です。食生活や普段の買い物の変化が、慣れるまでは難しいと感じるかもしれません。
しかし、ヴィーガンになることは、あなたの心や体にもポジティブな影響をもたらす、素晴らしい選択です。
4.問題を周りに伝える
周りの人に伝え、動物を利用することについて考えるきっかけを提供してください。
また、リブでは動物の本来の生態や問題を伝えるリーフレットをお配りしています。ぜひご活用ください。
5.問題をさらに学び、考える
今の社会では、様々な動物たちが苦しんでいます。
しかし、その実態・問題点についてはほとんど知られていません。
動物を利用する既存の習慣を批判的に見直す為に、問題をさらに学び、考えましょう。
6.寄付で動物を守る活動を支援する
私達は、動物解放をゴールとして、「知識と共感で動物解放を早める」というスローガンのもと、日本に適した伝え方を重要視した活動をしています。
私達は国や行政からの補助金は一切なく、動物を守りたいと願う市民による貴重なご寄付で活動をしています。ご支援があれば、動物解放に向けた動物利用問題の調査活動、啓発活動、教育事業、ヴィーガンコミュニティ事業などをさらに展開することができます。
#動物を解放しよう
参考資料
野上 ふさ子 (2003) 『新・動物実験を考える: 生命倫理とエコロジーをつないで』三一書房
マイケル・A・スラッシャー (著), 井上太一 (翻訳) (2017) 『動物実験の闇: その裏側で起こっている不都合な真実』合同出版
https://www.med.akita-u.ac.jp/~doubutu/matsuda/kougi/daitaiho/total.html
https://www.humanesociety.org/resources/dogs-used-research-and-testing-faq#kind
http://www.ava-net.net/animalresearch/74.html
https://www.peta.org/issues/animals-used-for-experimentation/cats-laboratories/
https://crueltyfreeinternational.org/about-animal-testing/arguments-against-animal-testing
https://www.java-animal.org/animal-testing/