2022年の日本人1人当たりの卵消費量は339個。毎日のように食べられています。
では、その卵を産む鶏たちは、どんな性格で、どんな環境で育っているかをご存じでしょうか?
実は、鶏は愛情深く、知性や意志を持っています。
そんな鶏は、劣悪な環境で管理され、本来の30倍の大量の卵を産まされ、卵が産めなくなったら使い捨てのように処分されています。
今回の記事では、本来の鶏の生態、卵の消費が鶏に与える問題、代替案についてお伝えします。
にわとりについて
鶏の性格や好きなことについて習った事がある人は少ないかもしれません。
実は、鶏は強い個性を持っており、複雑なコミュニケーションをしています。
知性
鶏は「三歩歩くと忘れる」と言われますが、そんなことはありません。
少なくとも一部の鳥類は、知能のレベル、感情の洗練さ、社会的相互作用の点で多くの哺乳類と同等であることが現在知られています。[1]
鶏に関しては、猫と同様かそれ以上の知性を持っているとされます。鶏は長期記憶を持ち、鶏同士はもちろん、人間も見分けていると考えられています。
感情・共感力・コミュニケーション
鶏は、24種類以上の音を使い分けて様々な意思疎通、感情表現をしています。[2]「ここに食べ物があるよ!」、「こっちにおいで」など。
鶏は、幸せを感じ、ストレスを感じ、心が傷つき、他者の感情に共感し[3]、夢も見ます。
鶏は、嬉しい時や遊ぶ時にもダンスをし、人間ともダンス(に見えるような行動を)することもあります。
「チキン」じゃないよ、実は勇敢で愛情深い
小心者のことは「チキン」と呼ばれますが、鶏は実際は勇敢です。
鶏の女性は卵を産み、子どもを育てます。男性は女性と子ども、なわばりを守ります。
母親たちは卵を温め、危険が迫ると、声を上げ敵を追い払います。ときには子犬も一緒に温めてあげることも。
鶏の女性は子供に対する愛情が強く、相手が強敵であろうとも、子供を守るために立ち向かいます。母と子の絆も強く、卵を産むための小さな家(巣)を作り、卵の中にいる赤ちゃんにやさしく語りかけます。
採卵鶏に起きている問題
採卵鶏とは、卵を採るために改変された鶏のことです。つまり全て女性の鶏です。
非常に狭い金網カゴの中に一生閉じ込められ、不潔で劣悪な環境下で卵を産まされ続け、産めなくなったら殺されるという、まるで道具のように扱われる、短く儚い一生です。
日本では毎年、8330万もの、採卵鶏(卵を産ませるための鶏)が殺されています。[4]
品種改変で本来の30倍もの卵を産む
元は野生動物であった鶏は、人間の利用用途に合わせて品種改変されてきました。その中でも卵を摂るために改変された鶏が、「採卵鶏」です。(肉用に改変された鶏はブロイラーと呼ばれます。)
かつて、鶏が1年で産む卵の数は、10個ほどでした。[5]しかし、採卵鶏は1年で最大365個、通常でも300個もの卵を産むように極めて不自然な体に改変されてしまっています。[6]
その結果、母鶏に対して大きな負担がかかるようになりました。
例えば、卵の殻にはカルシウムが必要です。あまりに膨大な数の卵を産まされる鶏たちは、カルシウムが不足するため、自分の骨からカルシウムを取るようになります。その結果、母鶏は骨粗鬆症、骨折を起こします。[7]
男の子は生後一日で殺処分
母鶏が産む子どものうち、当然、約半分が男の子です。しかし、男の子は卵を産まず、「肉」にできるほど大きくならないという理由で、生後1日目で殺されます。
男の子のヒヨコたちは、袋に次々と投げ込まれます。上から次々と入れられるため、下にいるひよこたちは潰れて死んでいきます。もしひよこが生きていても、袋がいっぱいになると袋の口を結ばれるので、窒息死します。
もしくは、ベルトコンベヤーに乗せられ、生きたままシュレッダーにかけられます。これらのひよこは、他の動物の飼料や、肥料として使われます。
他にも、動物園の動物の「エサ」にされることもあります。
女の子は無麻酔でくちばしを切断
鶏は本来、一日の半分を地面をつつき、餌を探します。
しかし、採卵鶏たちは不自然で劣悪な環境に置かれているため、他の鶏を突いたり、共食いをしたりしてしまいます。鶏卵産業ではこれに対処するために、鶏たちのくちばしを無麻酔で焼き切っています。(この切断は「デビーク」と呼ばれます。)
鶏のくちばしには神経が通っており、切断には激痛、出血が伴い、その後も慢性的な痛み、食欲の低下、無気力など様々な問題が発生しています。[8]
オランダなどヨーロッパのいくつかの国では禁止されていますが、日本では2014年の調査で、83.7%のひよこにデビークが行われていることがわかりました。[9]
極狭の金網、「バタリーケージ」
日本における採卵鶏の飼育方法は、94.1%がバタリーケージ飼育です。[10] バタリーケージとは、金網でできた檻で、横にも上下にも連結し、採卵鶏が「効率よく」詰め込まれています。1羽あたり縦約20cm×横約20cmという異常なほど狭い空間で飼育されています。[11]
このような異常な空間では、鶏たちは羽を広げることも、地面をつついたり土を掻いたりすることも、砂浴びすることも、止まり木に止まることもできません。
ケージの床は金網になっているため、平らな地面に立つことすらできず、金網の間に脚が挟まることで変形・骨折したり、脚がただれたり腫れたりします。
強制換羽という虐待
鶏は、換羽期に入り羽毛が抜け変わると、再び卵を産むようになります。
強制換羽とはその特徴を利用して、卵の生産性が低下してきたころに鶏に1〜2週間絶食させ、強制的に羽毛の抜けかわりを行わせ、再度食べ物を与えることで、再び卵を産ませる手法です。[12]
絶食ではなく、低栄養の飼料を与える場合もあります(換羽誘導)。日本では、2014年の調査で、66.1%の農家が換羽誘導を行っていると回答しています。[11]
その際、食事や水の制限は、鶏にとって大きな苦痛を伴います。体重は減り、羽は抜け落ち、病気にかかりやすくなり、耐えられない鶏は倒れ死にます。
過酷な環境による病気・異常行動・殺処分
不自然で心身のストレスが大きい環境で生きている鶏たちは、様々な病気にかかります。鶏がかかる病気は、鶏白血病、鳥結核、卵巣腺癌、卵管腺など。その他、怪我や骨折などもあります。[13]
また、過酷な環境で強いストレス下にあるため、異常行動を起こす鶏もいます。
鶏に見られる異常行動は、他の鶏の肛門を突っつく、他の鶏の羽を引っ張る、常同行動、共食いなどです。[14]
さらに、ニュースでよく見られるように、死亡率の高い「高病原性鳥インフルエンザ」感染による大量殺処分が毎年のように日本各地で行われています。この場合、感染した鶏がいたら農場にいる全ての鶏が殺処分されます。殺処分はコンテナに詰め込まれ、ガスの注入が行われます。しかしガス注入後ももがき苦しみ、生き残った鶏たちは窒息死や圧死で死んでいると考えられます。
大量のワクチンや薬物の投与
このような状況にあるため、採卵鶏は生まれてから死ぬまで、何種類ものワクチンや多量の薬品を投与されます。接種は、注射、飼料やへの添加、スプレー、点眼から、卵の中にさえ投与されます。[15]
また、大量の投薬は、サルモネラ菌や腸球菌など薬剤耐性菌の発生を引き起こし、自然へ流出し、そしてその危険は人間へと還ってきています。2018年の厚生労働省の調査では、鶏肉の約半数に薬剤耐性菌が見つかっています。[16]
屠殺までの時間も想像絶する苦痛
屠殺される母鶏たちは、数日間水も食べ物も絶食、もしくは制限されます。屠殺の際、糞便の処理に要する手間を軽減するためです。
狭いプラスチック製のカゴにぎゅうぎゅうに押し込まれ、屠殺場へ運ばれます。屠殺場では鶏が詰め込まれたカゴが積み上げられ、長い場合は72時間も放置されます。上のカゴの鶏たちが産んだ卵や糞尿で、下にいる鶏たちはドロドロになります。怪我や骨折は日常茶飯事、カゴの中で死んでいる母鶏もいます。
やっとカゴから出されたかと思えば、足を乱暴に掴まれ、逆さ吊りにされ、意識のあるまま首を切断、そして羽を抜きやすくするため熱湯につけられます。この段階でも意識がある鶏たちもいます。
母鶏たちはこうして心身ともに搾取され、最終的には缶詰の肉、加工食品の肉、冷凍食品の肉などにされます。
これ以外にも養鶏場で病気になった鶏や、怪我をした鶏が、衰弱死したり、人間に踏み潰されて殺されたり、焼却場で生きたまま焼き殺されるなど、無惨に殺されることもあります。
あなたにできること
鶏を苦しませないために、あなたにできることがあります。
1.卵を使わない食事にする
例えば「卵 ヴィーガン」「スイーツ ヴィーガン」という検索ワードで探すと、様々な卵を使わないレシピがヒットします。
また、例えば、スクランブルエッグに似たような加工食品なども販売されるようになりました。今後、動物に優しい生活をする人が増えることにより、卵の代替製品は増加し、卵を使わない料理を作るのはどんどん楽に、楽しくなっていくでしょう。
2.ヴィーガンになる
ヴィーガンとは、可能な限り動物を使わない生活をする人のこと。ヴィーガンになれば、鶏はもちろん、他の動物にもやさしい生き方にシフトすることができます。ヴィーガンへのシフトは、常識や食生活などを劇的に変えることであり、人によっては難しいと感じるかもしれません。栄養や人付き合いなど様々な工夫も必要になってきます。(でも、数週間~数か月で慣れます。)
しかし、ヴィーガンになることは動物を可能な限り利用しない人生を生きることであり、それはあなたの心や体にもポジティブな影響をもたらす、素晴らしい選択です。
3.問題を周りに伝える
この記事で知ったことを周りの人に伝え、鶏について考えるきっかけを提供してください。
また、リブでは鶏についての生態や問題を分かりやすく伝えるリーフレットをお配りしています。ぜひご活用ください。
4.問題をさらに学び、考える
鶏の問題を始め、様々な動物たちが、人間によって苦しんでいます。
しかし、その実態・問題点についてはほとんど知られていないと同時に、問題は非常に大きく複雑です。
動物を利用する既存の習慣を批判的に見直す為には、問題をさらに学び、考える必要があります。
5.リブへの寄付を通して、動物を守る活動を支援する
私達は、動物解放をゴールとして、「知識と共感で動物解放を早める」というスローガンのもと、日本に適した伝え方を重要視した活動をしています。
私達は国や行政からの補助金は一切なく、動物を守りたいと願う市民による貴重なご寄付で活動をしています。ご支援があれば、動物解放に向けた動物利用問題の調査活動、啓発活動、教育事業、ヴィーガンコミュニティ事業などをさらに展開することができます。
#動物を解放しよう
《参考》
[1]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5306232/
[2]https://www.scientificamerican.com/article/the-startling-intelligence-of-the-common-chicken1/
[3]https://bristol.ac.uk/news/2011/7525.html
[4]https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/tikusan_ryutu/tori/r4/.
[5]https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/69/10/69_493/_pdf.
[6]https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0006/22.html
[7]https://www.humanesociety.org/sites/default/files/docs/hsus-report-breeding-egg-welfiss.pdf
[8]http://www.ars.usda.gov/SP2UserFiles/Place/50201500/Beak%20Trimming%20Fact%20Sheet.pdf
[9]http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/H26/factual_investigation_lay_h26.pdf. P23.
[10]https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare_iken-7.pdf
[11]https://jlta.jp/test/wp-content/uploads/2023/12/factual_investigation_lay_h26.pdf
[12]https://www.akanefarm.com/blog/archives/282
[13]https://www.naro.go.jp/laboratory/niah/niah_atlas/poultry/index.html
[14]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4956668/,
https://www.msdvetmanual.com/poultry/miscellaneous-conditions-of-poultry/cannibalism-in-poultry
[15]https://www.vaxxinova.co.jp/academic_info/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
[16]https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2017/201723008A.pdf