檻の中のゾウ

娯楽に使われている動物

動物園や水族館の問題点まとめ:動物の精神病、種の保存の嘘

  • 2024/04/11
  • 2024/11/22

動物園や水族館は、動物にやさしい施設だと多くの人が捉えていると思います。

しかし、私たちが日本全国ほぼ全ての動物園・水族館、計283施設を現地調査したところ、実際は違うということが分かりました。

実は動物たちは、家族から引き離されたり、もともと住んでいた場所から連れてこられたり、狭い場所に閉じ込められて、ずっと人に見られ続けたりすることなどで、心を病んでおり、異常行動と呼ばれる精神病にまで陥っています。

本記事では、動物園・水族館によって動物が受けている被害、なぜ動物園はいい施設のように思われているのか、そして動物園・水族館の未来のあり方について考えてみましょう。

動物への被害

動物利用の全てを書くにはあまりに規模が大きく被害が多いので、今回は動物園における動物への被害を蛇口(動物が動物園に来るとき)→利用(動物が動物園にいるとき)→出口(動物が死ぬとき)という3つのセクションに分けてお伝えします。

1.蛇口:動物が動物園に来るとき

野生からの捕獲

野生の動物をその生息地から強制的に連れ去ることは、動物にとって計り知れないストレスとなります。

例えば、ゾウは本来、女性を中心とした家族で過ごします。実は、心も体も繊細で、非常に複雑で豊かなコミュニケーションを取り合っています。

そんなかれらを野生から連れてくる場合、家族・親戚や友達と引き離され、もともと住んでいた場所から引き離され、見知らぬ狭い場所に閉じ込められ、人間に見られ続けるという人生を強制することになります。

繁殖

近年、動物園では「ブリーディングローン」と呼ばれる、いわば「動物のレンタル」を行い繁殖させることが多く行われています。その際、動物は知らない乗り物に乗せられ、施設から施設へ長い時間移動させられ、繁殖を促され、また元の施設に戻されるといった事で動物に負担がかかります。

また、人工的な繁殖は、動物の心身や遺伝子に様々な悪影響を与えています。動物を近親交配させるので、先天的な障害・骨格異常・病気のしやすさ・目が寄るなどの奇形を発症することも少なくありません。

人工授精も行われています。大の大人が女性の動物を押さえつけて、受精させることは人に例えれば強姦であり、倫理的ではありません。

イルカの女性が押さえつけられ、人工授精が行われる

また、マレーグマを繁殖目的に同居させた結果、ウッチーというマレーグマ(女性)が、同居していたマレーグマ(男性)から暴行され続けた結果、亡くなってしまうという痛ましい事件も起こっています。(ウッチー暴行殺害事件)

2.利用:動物園にいる時の問題

動物への暴力

例えば、一部の動物園やゾウ展示施設では、「ブルフック」と呼ばれる手カギや、アイスピックのような道具でゾウに痛みを与え、言うことを聞かせます。日本でも、ゾウの背中や耳の後ろをよく見ると多くの傷跡があり、血が出ていることもあります。

また、ショーの合間にゾウを観察してみると、精神を病み、異常行動を起こしているゾウがいることがわかります。

深海魚も酷い目に遭っています。

捕獲する際、深海から引き上げるため、水圧の差によって目や内臓が体外に飛び出します。飼育員はその中から生き残った魚を探し、体に注射器を刺してガスを抜きとり(水族館はこれを”治療”と呼びます)、弱りきった魚を水温調整され加圧された水槽に入れます。水族館に展示されている深海魚たちは、苛烈で苦しい体験を押し付けられ、くぐり抜けてきた生き残りなのです。

病気・怪我

動物園・水族館では、動物たちは、病気や怪我に苦しんでいます。

クマ牧場やヒヒの飼育場では、不自然な環境に詰め込まれているため、いじめや喧嘩が絶えず、怪我をした動物がそこここにいます。

イルカやアザラシなどは、塩素が入ったプールに入れられ、皮膚の炎症・アレルギー・白内障などに苦しんでいます。

不自然な食べ物によって、苦しむ動物もいます。イルカは、冷凍の魚を与えられ、胃腸障害やビタミン不足になっています。チンパンジーやクマなどの中には、食糞をし続ける者もいます。

ふれあい体験

例えばあなたが、知らない人からいきなり体を持ち上げられ、無作法に体を触られ、それを一日中行われたら。動物はそれを望んでいるのでしょうか。そしてそれは、触れ”合い”でしょうか。

人間は、動物の意思や感情を無視し、一方的に触りたいと言う欲求を果たしています。それは、子どもの動物に対する配慮を減じさせ、相手の意図を無視して自分の欲望を実現して良いというメッセージ、動物搾取は人間の当然の権利であるという暗黙の価値観を植え付けています。

精神病、異常行動

床に頭を打ち続けるイルカ

人間以外の動物にも心があります。動物園・水族館にいる非常に多くの動物たちは、人知れず心の苦しみを抱え、「異常行動」と呼ばれる行動を起こしています。

例えば、体を左右に揺らし続けるゾウ、頭をグリンと回転させ続けるクマ、ガラスや床に頭をぶつけるイルカ、骨が見えるまで自分の尻尾を食べてしまうサルなど、、、。

人間も刑務所などに入れられると同じような行動をとり、これも異常行動と呼ばれたり、拘禁症と呼ばれたりします。

薬漬け

不自然な環境下で、動物たちは様々な薬やビタミン剤を投与されています。リブが九州のある水族館に問い合わせたところ、イルカには、ビタミン剤も合わせ抗生物質やアレルギー薬など合計61種類もの薬が使われていました。

動物に向精神薬が使われていることもあります。高知県の動物園では、うつ病のチンパンジーに向精神薬が使われていました。日本動物園・水族館協会では、この治療を賞賛しています。

海外の水族館では、イルカに向精神薬を使用しています。日本の水族館で行われているかは不明ですが、行われていても不思議ではありません。それほどイルカは精神を病みやすく、異常行動をしています。

動物の監禁・見せ物を続けるために向精神薬を与える行為は、非倫理的です。

出口:動物園からいなくなる時

エサにされる動物たち

動物園・水族館で殺す場合は、例えば「園内リサイクル」や生き餌があります。

生き餌とは、例えば、マーモセットや爬虫類に生きたコオロギやゴキブリを与えます。飼育員が生きているコオロギの足をむしって与えることもあります。これら昆虫は動物園で繁殖している場合もあります。

ふれあい体験で使ったハツカネズミやひよこを飼育員が殺して与えます。ふれあい体験で使い、食べ物として再度使うので、「園内リサイクル」と呼ばれます。

リブが行った調査では、複数の動物園が園内リサイクルを行っていました。飼育員にインタビューしたところ、尻尾や足を持って、机や床に叩きつけたり、首と尻尾を持って、両側に思いっきり引いて殺す脊髄脱臼法などで行うそうです。また、水族館で展示しているイワシなどを、弱ったら他の魚に食べさせることも「園内リサイクル」と言えるでしょう。

動物園や水族館では、展示できる動物の数が限られます。しかし、施設にとって不要な動物が生まれてしまう場合があります。これを余剰動物といいます。不要なキリンが生まれたため、殺して、人々に解体の様子を見せ、ライオンの餌にした事例などがあります。

戦時猛獣処分

時代は下り、第二次世界大戦中の1943年〜終戦にかけて、動物園で戦時猛獣処分が行われました。

戦時猛獣処分とは、軍事攻撃を受け檻などが破壊され、動物が逃げ出し人間に危害を加えることを未然に防ぐために行われる、動物の殺処分のこと。日本各地の動物園で動物たちが毒殺、刺殺、撲殺、絞殺、電気殺、餓死等させられました。上野動物園では、ゾウ、ライオン、クロヒョウ、ヒグマ、ホッキョクグマ、ヘビなど14種27頭が殺害されています。

なぜ動物園や水族館はポジティブなイメージを持つのか

このような実態があるにもかかわらず、なぜ私たちは動物園・水族館が動物にとってポジティブな施設だと思い込んでいるのでしょう。

それは、その実態が巧妙に隠され、美化され、動物利用を肯定する無意識の教育が行われてきたからです。

美談化

動物園の特徴の一つとして、あらゆる場面で「美談化」を図るという事が挙げられます。

閉じ込めていた動物が亡くなったときには、「〇〇、ありがとう。」

宣伝キャッチコピーには、「動物はアートだ。」

人工繁殖については、「命を繋ぎます。」

怪我や病気で苦しむ動物に対して「頑張れ〇〇!!」

新規で動物を導入すれば、「〇〇が引っ越してきてくれました!」

など。枚挙に暇がありません。

動物園・水族館がポジティブな施設であるとするプロパガンダは、テレビや新聞、ポスターなど様々な媒体を使って行われ、広告代理店による巧妙なイメージ操作がされています。

だから私たちは、動物園・水族館にポジティブなイメージを持つのです。

都合の悪いことは伝えない

例えば、あなたは動物園・水族館で動物の心の病や異常行動についての説明文を読んだことがあるでしょうか。私たちは日本全国の施設の現場調査をしましたが、283施設中、異常行動を利用客に伝えている施設はたった一つしか見つけることが出来ませんでした。

施設も飼育員も当然、異常行動を知っています。しかし、観客が異常行動を知ってしまったら、今よりも多くの批判が起こり、経営にとって良いことがないので、そのような情報は隠します。

動物園・水族館の4つの役割

動物園・水族館は、自らの役割を4つ定義しています。「レクリエーション」「調査・研究」「教育・環境教育」「種の保存」です。一つ一つ見ていきましょう。

レクリエーション

これはその通りでしょう。ほとんどの人が動物の苦しみを知ることなく、楽しんでいます。しかし、中には動物が苦しんでいることに直感的に気づく子どもなどがいます。この人たちは、遠足などで辛い思いをしています。

調査・研究

これは、あくまでも監禁下での動物に関してです。野生の動物は、監禁下とは大きく異なる生態を発揮します。
動物園・水族館の研究とは、繁殖の研究、人工授精研究、精液採取の技術の研究、排卵誘発ホルモンの研究、異常行動を抑え込む研究…など、動物園や水族館が無ければ必要のない研究ばかり。これらは動物園や水族館が生き残るための研究であり、動物のための研究ではありません。

教育・環境教育

動物園は人々に対して、命の大切さを教えるどころか、動物の尊厳や自由を無視し、捕獲・監禁・利用して良いのだ、という無意識レベルの刷り込みをしているのが現実です。実際、動物園・水族館に行く人々は動物たちがストレスを抱えているという事実を知っている人はほとんどいません。どんな所に住んでいたんだろう、どういう気持ちなんだろう、など、相手を尊重するような、命を大切にするような意識が芽生えているとは到底思えません。

種の保存

動物園の中には、種の保存に関する成果を発表している施設もあります。しかし、動物園全体としては、これまでどの種をどれだけ増やし、野生に帰し、一方どの種をどれだけ減らしているのか明確な発表はありません。それどころか、ゾウ・サイ・ゴリラなどの希少種は減らす一方です。また、水族館に関しては、増やす動物数よりも、野生から捕獲する動物や、購入する動物数の方がはるかに多いはずです。本当に種の保存を目的としたいならば、その動物が生息する現地で行うべきであり、動物園・水族館が種の保存の為に存在しているという主張は非常に奇妙です。

あるべき動物園・水族館の未来

動物園・水族館の代替

動物園・水族館の4つの役割の代替は、すでに存在します。例えば、動物について学びたいならば、動物園に行くよりも図鑑1冊読んだ方が圧倒的に本来の動物の生態について学べます。また、近年は非常に多くの野生動物の映像が無料でインターネット上で見ることができます。

すでに動物園・水族館の一部に、教育的な映像を流す施設が作られたり、展示代替物としてのイルカ型のロボットが作られています。

動物園・水族館から動物を解放するには

最も重要なことは、新たに動物園の動物を増やさないこと。繁殖・捕獲・購入などをしなければ、残るは現在監禁されている動物だけになります。
野生に解放できる動物は可能な限り解放し、できない動物には終生可能な限り害のない方法で暮らす場を設けます。
劣悪な施設から順次閉鎖し、適切な施設に収束していきます。最後まで監禁されている動物がいなくなったら、動物園・水族館の動物の解放が実現します。

あなたにできること

1.動物園・水族館に行かない

入園料を払うことで利益が生まれ、動物たちの監禁が続きます。観光やお出かけは、動物を搾取しない施設へ。遊園地や美術館など。

2.本や映像や模型で動物について学ぼう

観察したい場合は、動物の生息地に行き、動物に迷惑をかけないようにそっと観察する。もちろん採取はしない。

3.動物園や水族館に意見を伝える

特に子供たちの率直な声は、動物たちの力になります。

4.問題をさらに学ぶ

書籍「動物園水族館閉鎖」や、リブのウェブサイトのカテゴリ「動物利用問題」では、動物利用の現状や問題を伝えています。

5.周りの人に広める

優しく冷静に事実を伝え、まだ問題を知らない人に知ってもらいましょう。また、リブで作成したリーフレットもご活用ください。>リーフレット無償提供中

6.ヴィーガンになる

ヴィーガンになれば、動物園・水族館で苦しんでいる動物ばかりではなく、家畜動物や野生動物など、可能な限り動物を苦しめないライフスタイルを送ることができます。 >ヴィーガンとは

7.動物を解放する活動を支援する

私達は、動物利用問題を見える化し、動物を利用しない社会を推進する為の様々な活動をしています。あなたのご支援が動物を救う力になります。>支援方法を見る

動物を解放しよう。

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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