知っていますか?にわとりたちは、散歩すること、地面をクチバシで突くこと、砂遊びなどが大好きです。
また、にわとりは、私達が想像する以上に個性があり、賢く、記憶力が良く、複雑な感情や母性を持っています。
その一方で、日本では毎年約7億3722万羽もの、個性ある鶏たちが肉用に殺されています。
今回の記事では、食用の鶏のうち9割を占める「ブロイラー」について、産業の現状と問題点、私たちにできる代替案についてご紹介します。
にわとりについて
複雑な感情、共感力
にわとりは、幸せを感じ、ストレスを感じ、心が傷つき、他者の感情に共感し、夢も見ます。[1]
他のにわとりや人間の顔を最大100個見分け、好きな人に近づきたいと思い、気が弱い子は恐る恐る近づきます。
にわとりは、私たちが思っている以上に、私たちと同じ経験をしています。
コミュニケーション
このにわとりを見てみてください。私たちは言葉は通じませんが、非言語コミュニケーションができる場合もあります。
女の子とにわとりが、友達の人間の男の子に近づいていくと、男の子が髪を切ったことに気が付きます。男の子の手をすり抜けて後ろに回り、髪を優しく突つき「髪を切ったね」と伝えます。男の子の前に回り、抱きしめられにいきます。
周りをうろうろしている男の子のにわとりは、女の子が好きでヤキモチを焼いているようにも見えます。そして多分本当にそうです。
私たちが「ブロイラー」というイメージや、食べ物というイメージを外せば、私たちはにわとりと心で繋がれ、友達になれるかもしれません。
母性と、仲間想い
母と子の絆も強く、安全に卵を産むために小さな家(巣)を作り、卵が生まれたら、卵の中にいる赤ちゃんにやさしく語りかけます。母は勇敢にヒナを危険から守り、ヒナは母を愛し、信頼します。
臆病者のことを「チキン」と表現されることがありますが、鶏はとても勇敢で、身を挺して敵から家族や仲間を守ります。
ブロイラーに起きている問題
にわとりは本来、5〜10年生きることができます(22年も生きたにわとりもいます[2])。しかしブロイラーは、たった6週間(40〜50日)で殺されてしまいます。[3]
人口が約1.3億人である日本では、毎年約7億3722万羽ものブロイラーが殺されています。
1989年(平成元年)、日本人の一人当たりの鶏肉消費量は13.9kgでした。その39年前の1960年の消費量は1kgであり、急激に上昇していることが分かります。
品種改変(品種改良)
普通のにわとりの寿命は5〜10年、成鳥になるまでには5ヶ月ほどかかります。しかし、ブロイラーは約6週間で成鳥と同じ大きさ、2〜3kgに達するように品種改変されました。可能な限り急速に成長させ、肉の生産量を高めるためです。
屠殺寸前のブロイラーは、大きな見た目に反してまだ子どもであるため、まだ「ピヨピヨ」と鳴いています。
ブロイラーが生まれるとき
ブロイラーは、孵化場で生まれます。
その際、小さい、弱い、奇形、炎症等を抱える雛は、殺処分されます。日本の多くの場合はバケツに詰め込まれ、窒息死させられます。
成長に追いつかない体
短期間で巨大な体を作るため、ひよこには、不自然な高タンパク質飼料を与え、ほとんど運動させずに育てます。そのため、カルシウム不足や運動不足になり、自分の体重を支えられず、骨折する子もいます。
過密で窓のない鶏舎
ブロイラーの標準的な飼育方法は、平飼いという方法です。
にわとりたちは平面の床で飼育されます。体重が2〜3kgのブロイラーが、3.3平方メートル当たり45〜50羽ひしめき合っているという、過密状態で飼育されています。[8]
鶏舎の約7割(2014年)はウィンドウレス鶏舎と呼ばれる、窓が無い建物です。照明や温度、換気などは完全にコントロールされており、動物産業にとっては、にわとりの管理や捕獲、入れ替えなどが容易です。
鶏たちは自然光を浴びることもできず、外気を吸うことも、大好きな散歩もすることができません。
病気と薬
ブロイラーは、マイコプラズマやニューカッスル病、細菌性軟骨壊死など様々な感染症、皮膚炎や腹水症、歩様異常や頭部が膨張してしまう病気など様々な病気にかかります。[5]
そのため、生まれてから死ぬまでの6週間という短い期間に、数十種類ものワクチン接種や、抗生物質やダニ駆除薬などの多量の投薬、飼料への薬の添加が行われます。[6]
人間を含めた動物への、大量の投薬は、サルモネラ菌や腸球菌など薬剤耐性菌の発生を引き起こし、自然へ流出し、そしてその危険は人間社会へと還ってきています。
2018年の厚生労働省の調査では、鶏肉の半数に薬剤耐性菌が見つかっています。[7]
人獣共通感染症と、にわとりの大量殺害
鳥類と人が共通で感染する病気には、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)、日本脳炎、カンピロバクター感染症、サルモネラ症、鳥型結核病、大腸菌症などがあります。[9][10]
このうち高病原性鳥インフルエンザとは、元々、野鳥と共生していたウィルスがにわとりやアヒルに感染、変異を起こし致死性が高まったものです。
にわとりから人への感染を防ぐために、毎年世界中で、にわとりの大量殺処分が行われます。2020年11月〜21年3月シーズンでは、計約987万羽が殺され、2023年秋からのシーズンではすでにその数を上回っています。[11] また、ハクチョウなどの野鳥や、動物園が飼育している鳥に感染して死亡するなど、被害が広まっています。
異常行動
過酷な環境であるため、異常行動を起こすにわとりもいます。
にわとりに見られる異常行動は、ベントペッキング(Vent pecking:他の鶏の肛門を突っつく)、フェザーペッキング(Feather pecking:他のにわとりの羽を引っ張る)、オブジェクトペッキング(Objectr pecking:物を突っつく)、共食いなどです。
屠殺場への輸送
屠殺前日から、にわとりは水も食べ物も与えられません。屠殺の際、糞便の処理に要する手間を省くためです。
食鳥処理場(にわとりをと殺する施設)へは、狭いプラスチック製のカゴにぎゅうぎゅうに押し込まれ運ばれます。食鳥処理場では、長い間待たされ、狭さや不安、暑さや寒さに耐え、中にはカゴの中でそのまま死んでしまうブロイラーもいます。
屠殺方法
と殺の大まかな工程は以下の通りです。
①作業員によって捕まれ、逆さ吊りにされ、フックに足をかけられる(懸鳥 けんちょう)
②レールで流され、電気ショックで気絶させられる(この工程がない場合もある)
③オートキラーと呼ばれる機械で首を切られる
④毛を抜きやすくするため、約60℃のお湯につけられる(この時点で生きているにわとりもいます)
⑤機械で脱羽、毛抜きを行う
⑥首、足、肛門を切除する
⑦内臓を引き出す
これ以外に、養鶏場で病気になったにわとりや、怪我をしたにわとりが、衰弱死したり、人間に踏み潰されて殺されたり、焼却場で生きたまま焼き殺されるなど、無惨に殺されることもあります。
これらの過程で鶏は非常に大きな苦痛を感じます。
にわとり達は、まるでモノのように扱われていますが、ほんの少し前まで私たちと同じように意思や感情や苦痛を持っていました。
これまで私たちは当たり前に動物を食べてきました。しかし、人間に対して残酷だと判断される行動は、同じく痛みや感情を持つ人間以外の動物に対しても行うべきではありません。
人間以外の動物も尊重し、権利を獲得するために、私達は生活をシフトしていく必要があります。
あなたにできること
日本には、今この瞬間も苦しんでいるにわとりたちがいます。「チキン」を買う・食べるということは、消費行動を通じて、にわとりの苦しみに加担していることになります。
あなたの行動の変化が、鶏たちの一生を変えます。
1.にわとりの代わりにヴィーガンレシピを作る
肉の代わりに、豆やキノコなどを使ってもいいですし、大豆ミート、おからこんにゃくなどの代替製品を使ってもいいでしょう。動物性材料を使わない料理は、例えば「焼き鳥 ヴィーガンレシピ」「唐揚げ ヴィーガンレシピ」などの検索ワードで探すと、様々なヴィーガンレシピがヒットします。
2.ヴィーガンになる
ヴィーガンになるということは、にわとりはもちろん、すべての動物の搾取から可能な限り卒業し、動物にやさしい生き方にシフトできるということです。
ヴィーガンへのシフトは、常識や食生活などを劇的に変えることであり、人によっては難しいと感じるかもしれません。栄養や人付き合いなど様々な工夫も必要になってきます。
しかし、ヴィーガンになることは動物利用に可能な限り加担しない人生を生きることであり、それは、動物たちにとっても、地球にとっても、あなたにとっても素晴らしい選択です。
3.動物に起きている問題を周りに伝える
ほとんどの人は、まだ動物に起きている現状を知りません。この記事で知ったことを周りの人に伝えましょう。
リブではにわとりについて、生態や問題を伝えるリーフレットを配布しています。言葉だけで伝わりづらい時は、このリーフレットを渡してみてください。
4.問題をさらに学び、考える
にわとりの問題を始め、様々な動物たちが、人間によって苦しんでいます。
しかし、その実態・問題点についてはほとんど知られていないと同時に、問題は非常に大きく複雑です。
動物を利用する既存の習慣を批判的に見直す為には、問題をさらに学び、考える必要があります。
5.リブへの寄付を通して、動物を守る活動を支援する
私達は、動物解放をゴールとして、「知識と共感で動物解放を早める」というスローガンのもと、日本に適した伝え方を重要視した活動をしています。
私達は国や行政からの補助金は一切なく、動物を守りたいと願う市民による貴重なご寄付で活動をしています。ご支援があれば、動物解放に向けた動物利用問題の調査活動、啓発活動、教育事業、ヴィーガンコミュニティ事業などをさらに展開することができます。
動物を解放しよう。
《参考》
[1]Empathy, memory and dreams: 11 facts about chickens. World Animal Protection. https://www.worldanimalprotection.org/latest/blogs/11-facts-about-chickens/.
[2]Discover the World’s Oldest Chicken. A-Z Animals. https://a-z-animals.com/blog/discover-the-worlds-oldest-chicken/
[3]鶏は産まれてからどのくらいで食用になるの?. 新潟県 農林水産部 畜産課. https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/chikusan/chickenq3.html.
[4]令和4年食鳥流通統計調査結果. 農林水産省. https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/tikusan_ryutu/tori/r4/.
[6]ワクチネーション. 独立行政法人家畜改良センター兵庫牧場. 2022/02/25. http://www.nlbc.go.jp/hyogo/shiiku/vaccine/
[7]薬効かない菌、鶏肉の半数から検出 厚労省研究班. 日経新聞. 2018/3/31. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28845500R30C18A3CR0000
[8]飼育方法と鶏舎. 畜産ZOO鑑. http://zookan.lin.gr.jp/kototen/tori/t223_3.htm
[9]鳥類と人の共通伝染病のリストアップ. 鶏病研究会. 1992/3. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010840297.pdf.
[10]神山和夫. 2016-17年冬、野鳥に広まった鳥インフルエンザ. バードリサーチニュース. 2017/6/30. https://db3.bird-research.jp/news/201706-no4/
[11]大泉一貫. 鳥インフルエンザの殺処分数、最多更新 秋以降998万羽. 日経新聞. 2023/1/9. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0912C0Z00C23A1000000/