ゾウは広大な土地を移動し、家族や仲間と一緒に生きる動物。
しかし、動物園の動物たちは、自然から切り離される、狭い空間に閉じ込められる、人から見られる、などのストレスにより、精神に変調をきたし、自然界では起こさない「異常行動」をとるようになります。
この記事では、日本全国ほぼすべての動物園・水族館・関連施設、計282施設に訪れ調査したNPO法人動物解放団体リブが、映像と共にゾウの異常行動を紹介します。
動物の異常行動とは
動物の異常行動とは、動物園や水族館等に監禁された動物たちに起こる、精神病の一種です。
英語では、Zoochosis(ズーコシス)と言います。
人間の場合、拘禁精神病、拘禁反応と呼ばれ、刑務所や精神病棟等に監禁された際などに現れます。
異常行動にも様々な種類があり、目的もなく同じ場所を円を描くように歩き続けたり、過剰に毛を抜いたり、プールの底に頭を打ち続けたり、自傷行為をしたりするなど、多岐に渡ります。
動物は野生で自由に歩き回り、社会的に交流し、一般的には豊かに過ごします。
その反面、動物園や水族館等では、家族や友人と引き離され、食も行動範囲も全てコントロールされ、人間に見られ続けます。その結果、動物は精神的苦痛を感じます。
詳しくはこちら:【保存版】動物の「異常行動」とは?動物園や水族館の動物のストレス・精神疾患について解説
日本のゾウの異常行動
日本一周調査を行って分かったことは、日本中のゾウ達が、精神を病み、異常行動をしていたことです。
具体的な事例をご紹介します。
富士サファリパークの事例
鋭い目、豊かなヒゲ、神々しいほどの雰囲気を漂わせたゾウ。
しかし、監禁され、異常行動に陥り、悲しい姿となってしまっています。
女性のゾウたちも、異常行動を起こしていました。
この動画で見られる異常行動は以下の通り。
- ヘッドボビング|(head bobbing)頭を上下に動かす
- スウェイング|(swaying)頭を左右に動かす
- トランクスウィンギング|(trunk swinging)ゾウ。鼻を揺らす。
- ロッキング|(rocking)体を揺らす。ロッキンチェアのような動き。
よく観察すると、動物たちの異常に気が付くでしょう。
遊亀公園附属動物園の事例
常同行動を続けるアジアゾウの「テル」は、1980年にラオスから遊亀公園附属動物園に連れてこられました。
このコンクリートで出来た狭いゾウ舎で生活し、一緒に連れてこられた「ミミ」が2000年に亡くなって以降、20年以上を独りで過ごしています。
テルは、異常行動(ロッキング、トランクスウィンギング)をしていました。
土や砂はほとんど無く、じぶんの糞尿を身体にかける行為もありました。
市原ぞうの国の事例
「日本一周!動物園水族館調査」の北日本編で見たゾウの中で、一番ひどい常同行動でした。
何トンもある身体を、ぐわんぐわんと一心不乱に揺らし続ける姿は、異様で、怖いほどでした。
市原ぞうの国のテリー。1992年、インド生まれです。
2001年に市原ぞうの国に連れてこられました。
テリーは市原ぞうの国の一番奥の、さらに奥に監禁されていました。
「種オス」であり、市原ぞうの国のぞう、ゆめ花・りり香・もも夏の父です。
姫路市立動物園
姫子は1977年、タイ生まれ。
1994年に姫路市立動物園に連れてこられました。
25年もの間、たった一人で生きていました。※2020年に病気で亡くなりました。
調査時、姫子は常同行動に陥っていました。
現在日本で、たった一人で生きているゾウ、13人のうちの1人です(2020年現在)。
ゾウたちは、同じ境遇のゾウが13人いることを知りません。
会うことも無く死んでいくでしょう。
監禁場所は狭く、バックヤードにはブルフックがありました。
今の姫子は2代目だそうです。
最初の姫子は、40年間、鎖につながれっぱなしだったようです。
芸もさせられていたようです。
40年後鎖が外されたことに関して、姫路市立動物園のウェブサイトには、「歩く自由を与えられて」と書かれていました。
おびひろ動物園の事例
調査した中でも、忘れられない動物がいます。
その一人がゾウのナナ。
ナナは一日中、体を上下に振り続ける常同行動をしていました。
ナナは1964年、3歳の時に温暖なインドから、寒さの厳しい北海道に連れてこられました。
その後来た「ノン」が1996年に亡くなって以降、24年間、たった一人で監禁されていました。
誰にとっても人生は一度。
ナナもたった一度の人生を、56年という長い期間を狭い場所で過ごし、激しい異常行動を続け、2020年に59歳で亡くなりました。
上野動物園の事例
常同行動の一種である、トランクスウィンギングを行っていました。
上野動物園には、女性のゾウが3名(ダヤー、スーリヤ 、ウタイ)、男性のゾウが1名(アティ)監禁されています。(2018年時点)
※ダヤーは2021年に推定44歳で、悪性腫瘍で亡くなりました。
繁殖に使われ、流産し、あるいは小さいうちに子どもを失くし、日本各地に連れ回されています。
問題を解決するために
ゾウが心の病を抱え、異常行動をしている理由は、檻への監禁です。
動物を苦しませないためには、これから新しく動物を監禁しない、繁殖をしない、今いる動物は野生に帰せるように工夫し、帰せない場合は終生、最大限ストレスがかからないよう世話をすることです。
ゾウを解放するために、あなたにできること
- 動物園・水族館に行かない(利益が生まれることで動物たちは監禁されてしまいます)
- この情報を周りの人に広める→リーフレット無償提供中
- 動物園・水族館の動物に起きていることを学ぶ→書籍「動物園水族館閉鎖」
- 動物園や水族館に意見を伝える
- 動物利用問題について、さらに学ぶ
- 団体を支援し、動物を守る活動を推進する
動物を解放しよう。