園内リサイクルに使用されるひよこ

娯楽に使われている動物

ふれあい体験の動物のその後は?動物園の「園内リサイクル」の問題点

  • 2023/06/12

みなさんは、動物園のふれあい体験で触った小さなひよこやねずみたちの、成長したその後はどうなるか考えたことはありますか?

実は、大きくなりふれあい体験で使えなくなった動物たちは、別の動物の「エサ」として与えられる、いわゆる「園内リサイクル」が行われることがあります。

今回は、NPO法人動物解放団体リブが日本全国の動物園・水族館、計283施設を実際に訪れ調査した経験に基づき、ふれあい体験や園内リサイクルの現状と問題についてご紹介します。

園内リサイクル=動物の再利用

園内リサイクルとは、動物園や水族館などのふれあい体験や展示で使用した動物を、用が済んだら他の動物に食べさせて再利用することです。

リブが実施した「日本一周!動物園水族館調査」では、何園もの動物園が園内リサイクルを行なっていることが分かりました。

例えば、ふれあい体験で使ったひよこやねずみは大きくなると可愛げがなくなり、不必要とされます。ですので、用済みとされた彼らは猛禽類などの「エサ」として与えられるのです。

また、水族館では、例えばイワシが展示されている場合、ある程度展示をした後にその水槽自体を他の動物の「エサ」用の水槽にすることもあります。

では、具体的に動物たちにどんなことが起きているのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

ふれあい体験は動物へ強いストレスを与える

そもそも、ふれあい体験自体の問題は何なのでしょうか。

ふれあい体験とは、動物園に限らず、ショッピングモールの特設会場や住宅展示場などでも行われている、主に子供向けのふれあい動物園のことです。

園内リサイクルで使われるヒヨコとモルモット

動物たちは、自分の意思に関係なく、繰り返し捕まえられ、強く握りしめられ、足を引っ張られ、羽をむしられたりします。

実際にリブは現地調査をしていますが、箱に投げられたり落とされたりすることも少なくありませんでした。

仮に、上記のような乱暴な行為がなくても、触られたり見られ続けること自体が動物たちにとっては大きな負担です。

ふれあい体験を担当していたある飼育員にお伺いしたところ、「動物たちは触られるだけでストレスなんです。」と言っていました。動物たちを一番近くで見続けている飼育員は、動物にストレスがかかる事を知っているのです。

もしあなたが

知らない人にベタベタ体を触られたら…?

足を掴まれ、箱に投げ入れられたら…?

触られる時間以外は狭い箱に閉じ込められ続けたら…?

不快や苦しみ、痛みなどの感覚は、人間だけのものではありません。

あまりにも無残な、ふれあい体験のその後

園内リサイクルで「エサ」にされるヒヨコ

では、ふれあい体験の後の動物たちはどうなるのでしょうか。

ひよこの場合、足をつかまれ、頭部を机や床に勢いよく叩き付けられたり、ねずみは頭と尻尾をつかまれ両側へ思い切り引っ張られる、「脊髄脱臼法」という方法で殺されてしまいます。

また、動物によっては生きている動物を食べることがあり、その場合は生きたまま「エサ」として与えられることもあります。

ふれあい体験が行われている動物園の多くで園内リサイクルが行われています。

ふれあい体験の場では、触られ、握られ、投げられ、それだけで苦痛ですが、成長して可愛くなくなったら殺され、他の動物の「エサ」とされるのです。

園内リサイクルを行う飼育員の本音

飼育員と一言でいっても、当然様々な人がいます。

ルーティンとして行っている飼育員、ひよこやハツカネズミの殺害を自らの強さ・プロの仕事の証明だと思っている飼育員、そして、ぬぐい切れない罪悪感と共に行っている飼育員もいました。

リブが調査する中で、罪悪感を抱える飼育員の1人が、その思いをお話ししてくれました。

40代くらいの男性飼育員。動物が好きで飼育員になったが、上司にはじめて動物を殺すように言われ、殺した時の深い落ち込み。ラット等を即死させることができなかった時にもがき苦しむ姿を見る苦しさ。ベテランとなった今でも殺すときには決意がいるという。抱え続ける罪悪感、飼育員という職業の矛盾と疑問。

動物を殺すときの苦しそうな表情は、今でも覚えています。

ふれあい体験で命の大切さは学べない

園内リサイクルえ使われる沢山のヒヨコたち

次に、ふれあい体験は「命の大切さを教えるため」だという主張について考えてみましょう。

「今触っている動物たちはどこから来てどこに行くのだろうか。」

「親は誰で、子どもはいるのだろうか。」

「触られてどう感じているのだろうか。」

そんなことを考えることもなく、自分が触りたいという欲望を肯定され、解消する子どもたち。

仮に親に聞いても答えてくれません。残念ながら親も教えられていないので知らないのです。

ふれあい体験によって他者への共感の回路は閉ざされ、動物搾取が肯定され、人間至上主義が子どもたちに無意識にインストールされてしまいます。

自分は動物に優しいと思ったまま、動物利用をするという矛盾した生き方を助長しているのが現状です。

ふれあい体験は、動物の尊厳を学ぶどころか、相手への共感回路を閉ざし、動物産業が望む「優良動物消費者」をつくりあげていると言えるでしょう。

動物利用問題を知ろう

今回は、動物利用問題の中の娯楽部門から「ふれあい体験」と「園内リサイクル」という事象を取り上げました。

他の社会問題にも共通するように、私たちはこれまで当事者の立場を無視して自分の欲を押し通してきてしまいました。動物利用問題に関しては、まずは現状を知る必要性が訴えられています。

さらに言うと、動物を優しく利用すればいいのでしょうか?動物利用そのものを廃止することでしか、問題の根本は解決し得ません。

あなたにできること

  • 動物を利用する施設に行かない
  • 動物利用施設に反対の声を上げる
  • 友人や家族にこの記事をシェアして伝える
  • 他の動物利用問題について学ぶ

動物の尊厳が守られる社会を一緒に作っていきませんか?

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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