日本では毎年多くの野生動物が「狩猟」という形で命を奪われています。かつては食料確保や農作物被害の対策として不可欠とされてきた狩猟ですが、現代では娯楽やスポーツとして行われる側面も強くなっています。
しかし、狩猟が動物たちに与える苦痛や生態系への影響、さらには倫理的問題が見過ごされている現実があります。この記事では、狩猟の実態を詳しく掘り下げ、その問題点と私たちにできることについて考えていきます。
狩猟について
狩猟者数
日本における狩猟は、狩猟免許を取得した人々にのみ許可され、主に11月から翌年2月までの「狩猟期間」に限定されています。
環境省によると、2020(令和2)年度時点で交付されている狩猟免許数は、21万8,495件。
内訳は、罠猟11万8946人、銃猟9万35人、網猟7,537人、空気銃猟1,977人です。
殺されている動物の数
一例として2017年度の狩猟などによって殺されている野生動物の数を見てみましょう。
ニホンジカ:569,215、イノシシ:543,758、タヌキ:32,570、ニホンザル:23,035
他にも、アナグマ、キツネ、ノウサギ、ツキノワグマ、ヒグマ、カモシカ、テン、カモ、カラスなどが狩猟によって殺されています。
毎年、膨大な数の動物が殺されていることが分かります。
動物の意識や痛みについて
科学的な研究により、動物には意識があるだけでなく、ストレスや恐怖を覚える感情も備わっていることが明らかになっています。例えば、イノシシやシカなどの野生動物は仲間を失った際に悲しみを感じ、罠にかかった際には強い苦痛と恐怖を経験します。
狩猟では、追いかけられたり、銃で撃たれたり、罠で捕らえられたりする間、動物はストレスや苦痛を感じます。そして、殺される際にも苦しみます。また、群れで暮らす動物にとって、狩猟は仲間を失う心理的苦痛をもたらします。
科学的に動物の意識や感情が証明されていくことは、狩猟に対する倫理的な疑問を深めるきっかけとなるでしょう。
動物への被害
狩猟は野生動物に直接的な苦痛を与える行為であり、その方法によって被害の内容が異なります。特に罠猟と銃猟は、動物に与える苦痛が深刻であることで知られています。以下、それぞれの方法とその問題点を詳しく見ていきます。
罠猟
罠猟は、設置した罠に動物を捕らえる方法で、特に有害鳥獣駆除で多く用いられています。代表的な罠には、くくり罠(ワイヤーで足を締め付ける)や箱罠(動物を閉じ込める檻のような罠)があります。
他にも、とりもち(接着剤トラップ)、バネ式罠(ネズミ捕り)、コニベアトラップ、デッドフォールトラップ、くくり罠、トラバサミ、箱罠、 箱落とし、囲い罠、筒形イタチ捕獲、落とし穴なども使用されています。
罠猟の最大の問題点は、動物に長時間の苦痛を与える点です。たとえば、くくり罠で足を捕らえられた動物は、逃れようとして激しく抵抗し、その過程で骨折や出血を引き起こすことがよくあります。罠にかかってから数時間から数日間、その状態で放置されることも珍しくなく、動物が恐怖や苦痛に苛まれる間に命を落とすこともあります。
罠で捕獲した動物が殺される方法は以下です。
- 止め刺し: 刃物で、心臓や頸動脈を刺して殺す。
- 電気止め刺し: 電殺器を突き刺し、電気ショックを与え感電死させる。
- 銃殺: 猟銃で撃ち殺す。
- 撲殺: 棍棒やバットで殴り殺す。
- 窒息: 密閉された箱に動物を入れ、ガスを注入し窒息死させる。
- 溺死: 捕獲した箱罠ごと、川などに動物を沈め、窒息死させる。
さらに、罠猟では対象外の動物(例えば犬や猫などの飼育動物)が誤って捕獲されるケースも多発しています。このような非選択的な方法が、生態系や人間社会にも悪影響を及ぼしているのです。
銃猟
銃猟は、ハンターが銃を用いて動物を仕留める方法で、狩猟全般において広く行われています。狩猟免許を持つ者が合法的に使用する狩猟方法である一方、動物に与える苦痛が見過ごされがちです。
銃猟の問題点として、まず挙げられるのは即死させられるケースが少ないという点です。動物の体の一部に弾丸が命中した場合、即死するのではなく、激痛の中でのたうち回りながら死に至ることが多々あります。また、負傷したまま逃げ延びた動物が、最終的に出血多量や感染症で命を落とすケースもあります。
さらに、銃猟は他の動物への心理的影響も見逃せません。群れで生活する動物の場合、銃声や仲間の死を目撃することで、強いストレスや恐怖を感じる可能性があります。
密猟
日本人の一部は密猟に関わっており、動物はもちろん、各国政府や日本政府に迷惑をかけています。以下にその一部を列挙します。
象牙
高級とされる象牙のハンコやその他装飾品の需要のために、多くのゾウが殺されてきました。
違法組織は、アフリカ諸国の当地の弱さや貧困につけ入り、密猟を行ってきました。
アフリカゾウは20世紀初頭には数百万頭生息していましたが、現在では約40万頭まで減少しています。主な原因は密猟による殺害です。[3]
コツメカワウソ
近年では、コツメカワウソブームによりペットとしての需要が喚起され、密猟・密輸が横行しました。コツメカワウソは、2019年にワシントン条約「附属書Ⅰ」に掲載されています。コツメカワウソブームは、動物園・ペット産業・メディアが作りだしました。これらの動物産業は、保全の努力を侵害し、コツメカワウソの被害拡大に加担しています。
バードラッシュ
1900年初頭、日本人が遠くハワイ諸島へ出向き、わずか5ヶ月で20万羽以上のアホウドリなどの鳥類を密猟し、米国政府は対応に苦慮しました。これはバードラッシュと呼ばれています。
現在でもオウムなどをペットボトルに詰め込み密輸する手口が行われています。
爬虫類
日本人による爬虫類などの密輸は度々摘発されています。テレビなどにも”専門家”として出演する”爬虫類業界の中心人物”であるペットショップのオーナーや、動物園の園長が逮捕されたこともあります。この人物は複数回逮捕されていますが、逮捕後も、メディアに出演し、また政界に働きかけるなどし爬虫類産業を維持発展させようとしています。
密輸によって運ばれる動物のうち、かなり多くの動物が途中で死んでいます。
中国の違法動物トレード. VICE Japan.
かすみ網
鳥類の猟に使われるかすみ網は、1947年に禁止されました。しかしその後も岐阜県や長野県でかすみ網による密猟が行われてきました。密猟の目的は、野鳥を食べるため、鳴き声を競う「鳴き合わせ会」に利用するメジロを手に入れるためなどです。日本野鳥の会などが監視し、大規模な摘発が行われたこともあります。
爬虫類
日本国内でも南西諸島などで爬虫類の密猟が行われており、問題となっています。
日本のアニマルカフェでは、出所不明の絶滅危惧種の動物を飼育しています。142のアニマルカフェがあり、419種、3793頭の動物がいて、そのうち52種が絶滅危惧種だったそうです。
上記のような様々な猟によって、動物たちは苦しみ、殺害されています。
狩猟に反対すべき理由
狩猟は動物の権利を根本的に侵害する行為です。動物は人間の利益のために存在しているわけではなく、独自の生を享受する権利がありますが、狩猟はその命を道具のように扱い、苦痛や恐怖をもたらします。地球は人間だけのものではなく、そして動物は人間のために存在するわけでもありません。
さらに、狩猟による殺害を正当化する害獣問題についても、動物を殺さない非暴力的な方法、たとえば農作物被害に関しては、防除柵や、人界・動物界・中間地帯などのゾーニングで対応や不妊去勢などを模索すべきです。動物の権利を尊重し、共存の道を目指すことが、人間の倫理的責任です。
狩猟者・密猟者による動物を守ろうとする人々や団体
世界各国で、狩猟によって殺される動物を守ろうとする様々な団体や個人が、活動を行っています。
特に英国では階級闘争とも相まって、狩猟を巡って大きな反対運動が長年続いています。これまで狩猟の妨害行為や反狩猟法の制定など様々な活動を展開してきました。
またアフリカ各国では密猟が横行しており、多数の密猟を取り締まる団体が存在しています。
一方、狩猟者・密猟者による動物を守ろうとする人々への攻撃が行われることもあります。
英国では、狩猟者による動物擁護活動家への、ムチで叩く、押し倒す、馬で轢くなどの暴力が頻発しました。
タンザニアでは、密猟者によって1000人以上のレンジャーが殺されました。これを受けて天然資源・観光大臣は、密猟者を見つけたら即時射殺するように求めました。アフリカ各国で密猟者によって動物を守ろうとする人々が毎年100人以上殺されています。
あなたにできること
- 狩猟を支持しない、動物を守ることを支持する
- 違法な狩猟・捕獲・飼育を見つけたら、警察署に110番通報するか、都道府県庁の鳥獣保護担当部署に連絡する。(各都道府県の野生鳥獣担当機関連絡先リスト)
- 狩猟の問題についてさらに学ぶ
- 狩猟や動物について周りに伝える
- 業界やマスメディアに意見を伝える
- ヴィーガンになる
- 団体を支援し、動物を守る活動を推進する
動物を解放しよう。