ホッキョクグマの親子が歩いている様子

娯楽に使われている動物

動物園・水族館におけるホッキョクグマ利用の問題

  • 2024/11/30

ホッキョクグマは、真っ白で大きな体、つぶらな瞳、愛嬌のある仕草で人気の動物です。

しかし、一方、氷が無くなった土地で痩せ細って歩くホッキョクグマ写真や、小さい流氷に乗って流されている写真を見たこともあるかもしれません。ホッキョクグマは、地球温暖化、気候危機の象徴となっています。また、動物園でぐるぐると歩き回り、首をぐりんと回す姿を見たことがある人もいるでしょう。

ホッキョクグマたちに何が起こっているのでしょう。
そして、私たちはホッキョクグマのために、何ができるか考えます。

ホッキョクグマについて

ホッキョクグマの親子

ホッキョクグマ(Polar Bear)は文字通り、北極に住んでいます。国で言うと、5カ国。デンマーク(グリーンランド)、カナダ、アメリカ (アラスカ)、ロシア、ノルウェーです。

ホッキョクグマの特徴はその真っ白な毛ですが、実際は毛は半透明で、皮膚は黒色です。半透明の毛に光が当たり乱反射し、白く見えます。乱反射した光を黒い皮膚が受け取り、体を温めます。

ホッキョクグマはクマの中で一番大きく、男性平均で体長200~300cm、体重は300~800kgに達します。つまり、体重80Kgの人間、10人分です。[1] [2]

その大きさにもかかわらず、身体能力は抜群で、陸上では時速40Km/hで走ることができます。[3]  水中では時速6Km/hで泳ぎ(人間のジョギング程度の速さ)、最長9日間で687Km泳いだ記録があります。 [4]

食料とするのは、アザラシを中心にセイウチやトナカイなどの哺乳類、鳥類、魚類、鯨類の死骸、植物(木の実、海藻)などです。[5] ドキュメンタリーなどで見ると、ホッキョクグマがアザラシを狩るシーンを多く見ることになりますが、実際、狩りの成功率は2%未満。ただでさえ、食べ物が手に入りにくい状況なのに、気候危機などによって、ホッキョクグマの生存環境はますます厳しいものになっています。[3]

子育ての時以外は基本的に単独行動で生きていますが、一緒に行動したり、遊んだりすることもあり、社会的な動物でもあります。

↓”いちゃつく”カップル

コミュニケーションは、発声や、鼻からの音、ボディランゲージ、匂いなどの化学物質などで行います。他の動物とコミュニケーションを取ることもあります。

↓犬と遊ぶホッキョクグマ

人間と信頼関係を築くホッキョクグマもいます。

The Only Man In The World Who Can Swim With A Polar Bear: Grizzly Man

ただし、これは子供の頃から一緒に暮らしたなど特殊な環境下でのみ起こります。通常はヒトとクマは、遠い距離を保つ関係か、不幸な場合敵対的な関係となります。

Wild Polar Bear Tries To Break In – BBC Earth

人間も含む動物は、育成環境によって、性格や仲間の範囲、倫理の対象などが大きく左右されます。

寒い場所に住んでいますが、他のクマと違い基本的に冬眠をしません。ただし女性が子供を産むときは冬眠します。冬の間巣穴の中で子供を産み、育て、春に出てきます。

Youtube:突然アザラシが出てきて驚く小クマ

動物園水族館でホッキョクグマに起きている問題

水族館のホッキョクグマ

ホッキョクグマの生息数は、推定約26,000頭(22,000~31,000頭)。2005年、IUCNレッドリストの絶滅危惧のうち、VU(Vulnerable:危急種)に登録されました。[6] 他の動物と同様、ホッキョクグマの生息数が減ったのは人間の行動によるものです。

捕獲・監禁・飼育

ホッキョクグマが初めて動物園に展示されたのは、。それから数多くのホッキョクグマが、動物園、あるいは動物園などに動物を販売するハンターや業者によって捕獲され、飼育監禁されてきました。目的は「娯楽利用」が主であり、人気動物であるホッキョクグマは、動物園の利益に貢献してきました。現在、動物園はホッキョクグマの飼育目的は「種の保存」であるという主張に転換しています。

異常行動

ホッキョクグマは、音がほとんど無い、極寒の広大な環境で、孤独に、毎日長距離を歩き、泳いで生きるという生態を持っています。そのようなホッキョクグマが、動物園や水族館の狭い飼育監禁施設に閉じ込められ、人の目に晒され、人の声やその他の雑音の中、十分に歩き回ることも泳ぐこともできない状態を強いられています。

人間は、留置場などに閉じ込められ自由を奪われると、拘禁症に陥ることがあります。拘禁症になった人間は、同じ場所をぐるぐる歩き回り、行ったり来たりし、壁に頭を打ちつけるなどの自傷行為に及び、一人でしゃべったり、場合によっては自殺してしまいます。

同じことが、動物園や水族館に閉じ込められ自由を奪われた動物たちにも起こっています。これを「異常行動」と呼びます。

動物解放団体リブでは、日本中ほとんどすべての動物園・水族館を現地調査する「日本一周!動物園水族館調査」というプロジェクトを行いました。そこでわかったことは、一部のホッキョクグマを除き、ほとんどのホッキョクグマが異常行動を起こしているという現実です。一部のホッキョクグマとは、ひどい異常行動を起こしているホッキョクグマと同居しているホッキョクグマ、子グマです。もっとも、調査時間は限られますので、時間をかけて観察すれば、それらのクマも異常行動を起こしているかもしれません。

ホッキョクグマの異常行動の特徴は、同じ場所を行ったり来たりする、方向転換するとき首をぐるんと回すなどです。これはパンダを含むクマ科、アライグマ科、レッサーパンダ科などに共通する異常行動です。

静岡県の日本平動物園のホッキョクグマのロッシーは、一日中バク転をしています。動物園は「異常行動」という言葉自体を観客や子供には教えません。ですので、通り過ぎる観客の中には「楽しそう」という感想をいう人もいました。

これらの映像は、ほんの一部です。日本中の動物園と水族館で、動物が異常行動を起こしています。これら施設は、人間や子供が動物について知り、動物に優しい人を作るための情操教育の場であると主張します。しかし、「異常行動」について教えず、狂ってしまった動物を見せることが、動物に優しい人を作るのでしょうか。日本は、西欧諸国に比べ動物擁護活動が遥かに小さく、ヴィーガンも少ないことが、その結果であると考えています。

日本人は動物に優しい人が多いと思います。動物や動物利用に関する正しい情報や知識を提供することによって、日本人はもっと動物に優しい生活をするようになると思っています。

狩猟による被害

ホッキョクグマは、1600年代から1970年代半ばにかけて、毛皮、肉、トロフィーハンティング(動物の死体の一部を飾ることを目的とした娯楽狩猟)を目的に、先住民や先進国のハンターによって殺されてきました。現在合法的な狩猟はカナダの先住民によるもののみです。文化や伝統のために、絶滅の危機に瀕している動物を殺害している現状を変えるため、カナダ政府や国際機関は対応に苦慮しています。[7]

気候危機による被害

地球温暖化により、ホッキョクグマは、これから3世代以内に1/3に減る確率が70%の確率であると科学者たちは推定しています。26,000頭の70%は、7,800頭。地球上に7.800頭です。危機的な状況です。[8]

また、地球温暖化により、ホッキョクグマが小型化してきていることがわかりました。1984年から2009年の間に、男性のの平均体重が45kg、女性が31Kg減っています。 [9]

氷塊が減っていることから、次の氷解を見つけるまで長距離を泳がざるを得ず、子グマたちが溺れ死ぬことが増えています。先ほど紹介した、最長9日間で687Km泳いだ女性のクマの子供達は、その間に亡くなったとみられています。

さらに悲しいことに、アザラシなどの食料が減り、共食いすることが増えていると科学者は語っています。[10]

ホッキョクグマの保護

国際的な保護

1600年代から1970年代半ばにかけて、先住民やハンターによるホッキョクグマの殺害が増加したため、各国で保護の動きが始まりました。

1972 アメリカが、海洋哺乳類保護法(MMPA)によってホッキョクグマを保護対象に

1973 ホッキョクグマが住む5カ国全てが、ホッキョクグマの保護に関する協定(Agreement on the Conservation of Polar Bears)に署名しました。[11]

2013 第 1 回ホッキョクグマ保護国際フォーラムがモスクワで開催。参加国は、ホッキョクグマが住む5カ国。 [12]

ホッキョクグマの保護活動をしている団体

多くの団体が啓発活動を含む保護活動を行っています。代表的な団体を列挙します。

1973 年のホッキョクグマ保護協定に署名した締約国(総称してホッキョクグマ生息国(ノルウェー、カナダ、グリーンランド、ロシア連邦、米国))の代表は、ホッキョクグマ保護に関して長年にわたり協力してきた実績を持っています。

あなたにできること

  • 動物園や水族館に行かない。動物を利用した娯楽施設に行かないことにより、動物が新たに飼育監禁されることを防ぐことができます。なお、娯楽施設が閉鎖した場合、他の娯楽施設等が引き取るケースが多いです。
  • ホッキョクグマに起きている問題、ホッキョクグマの素晴らしさ、保護の重要性などについて周りに伝え、ホッキョクグマに関心を持つ人、ホッキョクグマを守る人を増やす。ホッキョクグマを保護する一助となります。
  • 北極や環境問題、狩猟や先住民族の生活など周辺状況についても学びます。先住民族はホッキョクグマを狩らなくて生きていけることなど、知らなかったことを知ることができます。
  • 動物園や水族館、マスメディアに意見を伝える
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンになることで、動物園や水族館は楽しい場所ではなくなります。動物の飼育監禁に加担することはもちろん、動物を食べたり着たりすることがなくなるため、動物を苦しめ、間接的に殺すことがなくなります。
    ヴィーガンはたった一人でできる、動物保護、動物権利、動物解放、環境保護活動です。
  • 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する

動物を解放しよう。

参照


[1]Douglas P. DeMaster, Ian Stirling. Ursus maritimus. OXFORD ACADEMIC. 1981/05//08. https://academic.oup.com/mspecies/article/doi/10.2307/3503828/2600231?login=false, (参照 2024/07/27).

[2]TOP 10 FACTS ABOUT POLAR BEARS. WWF. https://www.wwf.org.uk/learn/fascinating-facts/polar-bears, (参照 2024/07/27).

[3]Joe Schwarcz. olar bears can run up to 40 km per hour!. McGill. 2017/02/20. https://www.mcgill.ca/oss/article/did-you-know/polar-bears-can-run-40-km-hour, (参照 2024/07/27).

[4]Ker Than. ホッキョクグマ、687キロを泳ぐ. National Geographic. 2011/07/21. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4607/, (参照 2024/07/27).

[5]Diet & Eating Habits. SeaWorld Parks & Entertainment. https://seaworld.org/animals/all-about/polar-bears/diet/, (参照 2024/07/27).

[6]Polar Bears. IUCN. 2016/06/7-11. https://portals.iucn.org/library/efiles/documents/SSC-OP-063-En.pdf, (参照 2024/07/28).

[7]polar bears in the crosshairS. People for Nature & Peace. https://www.peoplefornatureandpeace.org/polar-bear-hunting.html, (参照 2024/07/28).

[8]Polar bears and climate change: What does the science say?. Carbon Brief. World Economic Forum. 2022/12/15. https://www.weforum.org/agenda/2022/12/polar-bears-and-climate-change-what-does-the-science-say/, (参照 2024/07/28).

[9]Ashifa Kassam. Polar bears losing weight as Arctic sea ice melts, Canadian study finds. Guardian. 2016/04/05. https://www.theguardian.com/environment/2016/apr/05/polar-bears-losing-weight-arctic-sea-ice-melts-climate-change-canadian-study, (参照 2024/07/27).

[10]Jonathan Amos. Polar bear ‘cannibalism’ pictured. BBC NEWS. 2011/12/12. https://www.bbc.com/news/science-environment-16081214, (参照 2024/07/28).

[11]The 1973 Agreement on the Conservation of Polar Bears.  the Polar Bear Range States. https://polarbearagreement.org/about-us/1973-agreement (参照 2024/07/28).

[12]SPECIES POLAR BEAR. WWF. https://www.worldwildlife.org/species/polar-bear, (参照 2024/07/28).

[1]Douglas P. DeMaster, Ian Stirling. Ursus maritimus. OXFORD ACADEMIC. 1981/05//08. https://academic.oup.com/mspecies/article/doi/10.2307/3503828/2600231?login=false, (参照 2024/07/27).

[2]TOP 10 FACTS ABOUT POLAR BEARS. WWF. https://www.wwf.org.uk/learn/fascinating-facts/polar-bears, (参照 2024/07/27).

[3]Joe Schwarcz. olar bears can run up to 40 km per hour!. McGill. 2017/02/20. https://www.mcgill.ca/oss/article/did-you-know/polar-bears-can-run-40-km-hour, (参照 2024/07/27).

[4]Ker Than. ホッキョクグマ、687キロを泳ぐ. National Geographic. 2011/07/21. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4607/, (参照 2024/07/27).

[5]Diet & Eating Habits. SeaWorld Parks & Entertainment. https://seaworld.org/animals/all-about/polar-bears/diet/, (参照 2024/07/27).

[6]Polar Bears. IUCN. 2016/06/7-11. https://portals.iucn.org/library/efiles/documents/SSC-OP-063-En.pdf, (参照 2024/07/28).

[7]polar bears in the crosshairS. People for Nature & Peace. https://www.peoplefornatureandpeace.org/polar-bear-hunting.html, (参照 2024/07/28).

[8]Polar bears and climate change: What does the science say?. Carbon Brief. World Economic Forum. 2022/12/15. https://www.weforum.org/agenda/2022/12/polar-bears-and-climate-change-what-does-the-science-say/, (参照 2024/07/28).

[9]Ashifa Kassam. Polar bears losing weight as Arctic sea ice melts, Canadian study finds. Guardian. 2016/04/05. https://www.theguardian.com/environment/2016/apr/05/polar-bears-losing-weight-arctic-sea-ice-melts-climate-change-canadian-study, (参照 2024/07/27).

[10]Jonathan Amos. Polar bear ‘cannibalism’ pictured. BBC NEWS. 2011/12/12. https://www.bbc.com/news/science-environment-16081214, (参照 2024/07/28).

[11]The 1973 Agreement on the Conservation of Polar Bears.  the Polar Bear Range States. https://polarbearagreement.org/about-us/1973-agreement (参照 2024/07/28).

[12]SPECIES POLAR BEAR. WWF. https://www.worldwildlife.org/species/polar-bear, (参照 2024/07/28).

この記事を書いたライター

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動物解放団体リブ編集部

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