【ニュース】IMFが行うクジラ保護政策

  • 2021/06/08
  • 2023/07/19

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IMFが行うクジラ保護政策

IMFが発表したレポート
「自然界が示す気候変動の解決法 クジラ保護政策が温室効果ガスと地球温暖化の抑制につながる可能性。」
https://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/fandd/2019/12/pdf/Chami.pdf
の要点をまとめます。

IMF「自然界が示す気候変動の解決法 クジラ保護政策が温室効果ガスと地球温暖化の抑制につながる可能性。」より

中でも印象的だったのは、
「クジラは人間の道具ではない。この巨大な生き物はその存在自体に価値があり、生きる権利を持っている。」
との記述。

「クジラ保護のために各国がとるべき行動をアドバイスし、監視し、協調させるのに最適な立場にあるのは国際金融機関だ。」
という文章も印象的でした。

本レポートを発表したIMF(国際通貨基金)とは、通貨と為替の安定を図る国際機関。
一方、日本の水産庁は、「クジラの増加は環境を破壊し捕鯨が環境保護につながる」としており、主張は真っ向から対立しています。

レポートのデータから計算すると、捕鯨業者がクジラを1頭殺すごとに、(私たち日本人も含めた)人類に2億1877万円の損害を与えていると試算されます。

要点を4つにまとめ、最後に捕鯨国日本に住む日本人としての所感をまとめています。

【もくじ 】

Ⅰ クジラの移動が地球環境を改善する。
  ホエール・ポンプ
  ホエール・コンベヤベルト
Ⅱ クジラの体が炭素を蓄積する
Ⅲ クジラはコモンズ
Ⅳ 実施方法
《所感》
《参考》

【本文】


Ⅰ クジラの移動が地球環境を改善する。

クジラが移動し、海水を攪拌、排泄することによって、植物プランクトンを何倍にも増加させ、環境を改善させる。
 * 植物プランクトンとは
  大気中の酸素の50%を生み出す。
  地球上で発生する二酸化炭素の40%を回収する(アマゾンの熱帯雨林4つ分)。
  植物プランクトンの生産性が1%増加れば、20億本もの成木が出現するのに等しい。
  植物プランクトンの成長に必要な栄養素、窒素や鉄分などが、クジラの排泄物に含まれている。

[ホエール・ポンプ]
 クジラが、深く潜り再び海面に上昇するという縦方向の移動をすることによって、層になっている海水を縦方向にかき混ぜミネラルや微生物を循環させ、海面で排泄することにより、植物プランクトンや魚などを増加させ、地球環境を改善する。

[ホエール・コンベヤベルト]
 クジラが、冷たい海域と温かい海域を回遊するという水平方向の移動をするによって、栄養豊富な北極や南極付近からミネラルや微生物などを、栄養が乏しい赤道方向の海域に循環させ、またその間排泄することにより、植物プランクトンや魚などを増加させ、地球環境を改善する。

IMF「自然界が示す気候変動の解決法 クジラ保護政策が温室効果ガスと地球温暖化の抑制につながる可能性。」より

Ⅱ クジラの体が炭素を蓄積する


クジラのバイオマス炭素(生物が貯蔵する炭素。CO2を貯めておく)は驚異的。大型クジラは1人あたり平均33トンのCO2を数百年にわたって貯蔵する(木1500本分)。
 * 現在のクジラの数は、商業捕鯨以前の1/4。
  シロナガスクジラなどは、商業捕鯨以前の3%。 

Ⅲ クジラはコモンズ


クジラは、現在130万頭。
捕鯨開始以前は、400〜500万頭。
クジラの生息数が捕鯨開始以前の水準に回復した場合、年間17億トンのCO2を吸収。
世界のCO2総排出量(335億トン)の、5%を吸収する。
(日本はCO2総排出量の3.2%を排出している。生息数の回復は日本の総排出量を吸収する)

IMF「自然界が示す気候変動の解決法 クジラ保護政策が温室効果ガスと地球温暖化の抑制につながる可能性。」より

Ⅳ 実施方法

①クジラの生息数増の弊害を取り除く
「私たち人間は、ただクジラが生きられる環境をつくるだけで良い。」
クジラの脅威:捕鯨、船との衝突、漁網、プラスチックゴミ、海中騒音

クジラの金銭的価値
 大型クジラが生み出す平均価値は控えめに見ても200万ドル=2億1877万円
 現在生息する大型クジラ全体では優に1兆ドル=109兆3860億円を超える。
 (1$=¥109.39)

クジラの脅威となっている国・企業・個人、言い換えればクジラの殺害によって利益を得ている国・企業・個人に対しては補償を行う仕組みを作る。

様々に提案されている気候危機対策は有効性が実証されておらず、コストが高い。それに比べクジラ保護は効果があり、経済的で、資金確保モデルがある。

クジラの生息数回復を促すためにREDDと同じような金融メカニズムを構築する。

「クジラ保護のために各国がとるべき行動をアドバイスし、監視し、協調させるのに最適な立場にあるのは国際金融機関(GEF、IMF、世界銀行)」

「クジラ保護にかかわる経済的要素を調整することは、国際社会の気候問題対策にとって最優先事項となるべきだ。」

②マインドセットを変える
「クジラは人間の道具ではない。この巨大な生き物はその存在自体に価値があり、生きる権利を持っている。」

《所感》

クジラをコモンズとみた場合、クジラは「人類のコモンズ」です。

しかし日本では、水産庁や一部捕鯨利権者が、
「少人数の私的な利益」のために「人類のコモンズ」を破壊
し続けています。
捕鯨業者がクジラ1頭を捕鯨するごとに、私たち日本人も含めた人類に、2億1877万円の損害を与えています。

日本人の一部は、水産庁等のプロパガンダによって捕鯨推進は愛国的で倫理的な態度だと、いわば洗脳されています。
科学的国際的観点から見ると、捕鯨推進は、反クジラ保護です。
日本が存続できるのは地球があるから、人類のコモンズは一部利権者によって、搾取して良いものではないと認識を改め、自ら襟を正す必要があります。

私たち人類は謙虚にならなければなりません。
本レポートでは、クジラが地球や他生物に果たす役割を明らかにしました。
では、人類は、地球や他生物に対してどんな役割を果たしてきたのでしょう。
私たち人類の食欲、金銭欲は、地球や他生物に暴力と破壊の限りを尽くしてきました。
地球や他生物たちの最大の脅威は、我々人類であるという現実を受け止め、改める必要があります。


《参考》

REDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減プロジェクト)
 炭素を吸収する生態系の維持を資金的に支える取り組み
 https://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/maintenance/new/redd.html

TED:アーシャ・デ・ボス: なぜ鯨の糞が大切なのか
 https://youtu.be/sW9sr2_Z5kk

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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