昆虫食問題トップ画像.

食に使われている動物

昆虫食を食べるべきでない理由:昆虫利用の問題

  • 2024/08/28
  • 2024/09/01

2013年、FAO(国連食糧農業機関)が「食用昆虫:食料と飼料の安全保障に向けた将来展望」[1]というレポートを発表し、昆虫食が注目を集めるようになりました。

その影響もあり、すでに年間1兆匹以上の昆虫が養殖されています。また、この業界は急速に成長しており、その数は2030年までに8兆匹に増加する可能性があると言われています。[2]

その一方、昆虫の知覚について研究が進んできており、昆虫に対する一般的な認識である「昆虫は知覚力がない」などが間違っている可能性が指摘されています。

この記事では、昆虫利用の現状と問題についてまとめます。

昆虫食に利用される昆虫たち

昆虫食として利用される動物たち

昆虫を食べる人類は、アジア、アフリカ、南米を中心に20億人[1]いるとされており、国連の働きかけによりその数は増えているでしょう。虫は、卵、幼虫、蛹、成虫とあらゆる変態の過程で食べられています。

食用利用されている昆虫は、トンボ、バッタ、ゴキブリ、カマキリ、ハチ、チョウなど非常に多岐に渡ります。昆虫以外にもクモやサソリなどの無脊椎動物も利用されています。

昆虫食の用途

昆虫食の主な利用対象は、ヒトと、いわゆるペット、家畜動物、養殖動物です。昆虫食はより少ない資源・土地で育成できることから、人口増加による食料問題の解決、タンパク質やその他微量栄養素の補給、伴侶動物や家畜動物・養殖魚などの飼料、そして宇宙滞在時や他の星への移動の際の食料としての展開が期待されています。

現在では、昆虫の工場畜産とも言えるような、衛生管理や生産管理された集約的昆虫生産が行われています。  [3] [4] [5]

昆虫の意識や痛覚

ハチ

昆虫(あるいは一部の昆虫)が意識を持つことは、2012年に神経学者等が発表した「非ヒト動物の意識に関するケンブリッジ宣言」[6] [7] 、2019年にさまざまな分野の学者数百名が署名した「動物の意識に関するニューヨーク宣言」[8] [9] において示唆されています。

意識があるということは、感覚、感情、知性などを持ち、苦痛を感じ、個性を持っている可能性があります。

ミツバチの研究者であるLars Chittka氏は、以下のように述べています。

「ハナバチは数を数え、「同じ」「異なる」といった概念を理解し、他者を観察して複雑な課題を学習し、自分の体の大きさが分かる。これらは、人間では意識に結び付けられている能力だ。ハナバチは喜びや苦痛も経験するようだ。すなわち、少なくとも一部の昆虫種には意識的な知覚力があるようで、おそらくすべての昆虫がこの知覚力を備えていると思われる。」[10] [11] 

また、真社会性昆虫(各メンバーが特定の役割を持つ組織化された家族で暮らす動物のカテゴリー)は、科学的に知的であると考えられています。

ミツバチを使った実験では、ミツバチはすぐに得られる小さな報酬よりも、遅れて得られる大きな報酬を選ぶ傾向があることが明らかになりました。これは、ネズミやハトよりも自己制御能力が高いことを示しています。

ショウジョウバエ

他にも、研究により、ショウジョウバエは複雑な学習能力を持つことが明らかになっています。実験では、これらの動物は罰を予感させる色と、報酬を予感させる色の違いを理解できることが証明されました。ゴキブリの学習能力も昆虫の中では非常に優れていますが、これはおそらく、ショウジョウバエ、アリ、ミツバチよりも脳のニューロンが多いという事実によって説明されます。[12]

昆虫をよく観察した人であれば、昆虫は危機に対して防御し、閉じ込められれば出ようとし、仲間を守ろうとするなど、様々な人間と同様の行動を取ることが分かっていると思います。それらの行動はかつて「本能」と呼ばれていましたが、現在、ヒトと同様、意識の働きであると分かりつつあります。

昆虫を利用すべきでない理由

テントウムシ

昆虫に意識がある”らしい”とわかったのが21世紀になってからであり、昆虫ビジネスの発展に対して、人々の昆虫に対する科学的研究と認識や対策が追いついていません。

つまり昆虫が多大な苦痛の中利用されている可能性があります。

昆虫利用の倫理的問題

昆虫は意識があり苦痛を感じる可能性が高いため、動物倫理の対象とすべきです。

意識があり、苦痛を感じるという点においては、人間、犬、昆虫も共通であり、どの種であろうとも搾取されるべきではありません。

つまり、昆虫の工場畜産や食用にすることはもちろん、昆虫採集などの娯楽利用も動物倫理に反する行為です。

予防原則

予防原則とは、深刻な影響や不可逆的なダメージのリスクが存在する場合、科学的な確実性が完全でないことを理由に、リスクを軽減するための費用効果の高い対策を遅らせてはならないという考え方です。

哲学教授で動物の感覚の基礎プロジェクトの主任研究員であるジョナサン・バーチ氏は、動物の感覚に対する証拠が十分でない場合でも、科学的な基準を満たした証拠があれば、保護を拡大すべきだと主張しています。[13]

人への被害

ある種の虫を食べることで人が死んできました。産業化された昆虫食にそのようなことはないでしょうが、甲殻アレルギーや蜂アレルギーの人はアレルギーを起こす場合があり、ひどい場合はアナフィラキシーショックに陥ります。

また、家畜動物が媒介する人獣共通感染症は、ヒトと家畜動物が遺伝的に近いため起こります。遺伝的に遠い昆虫はそのリスクが低いとされていますが、研究は発展途上であり不明です。また、マラリアや日本脳炎や疥癬など、昆虫が媒介する感染症のリスクもあります。[14]

また、遺伝子組み換えされた昆虫を食料にする試みもすでにされており [15]、危険性が訴えられています。

あなたにできること

チョウ
  • 昆虫を買わない・食べない
  • 昆虫採集をしない。自然の中では、昆虫に触らず、行動を妨害せず、そっと観察する。
  • 昆虫食や昆虫の利用にまつわる問題、昆虫の生態や意識の最新研究を学ぶ
  • 昆虫の意識や尊厳について考えてみる
  • 昆虫利用の問題点を周りに伝える
  • 業界やマスメディアに意見を伝える
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンとは、昆虫も含めた動物への搾取や暴力、殺害に極力加担しなくなる、言い換えれば、動物を守り、共存するライフスタイルです
  • 団体のボランティアや寄付を通して活動を支援し、動物解放運動を推進する

動物を解放しよう。

《参照》

[1]
昆虫の食糧保障、暮らし そして環境への貢献. FAO. https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/47294e0b-a651-4c36-8d06-f576697640f1/content.

[2]
Challenges In Understanding Farmed Insect Welfare.faunalytics. 2023/5/31.
https://faunalytics.org/challenges-in-understanding-farmed-insect-welfare/

[3]
工場見学ができるコオロギ養殖場が長野県にオープン!. PRTIMES. 2022/8/1. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000090261.html.

[4]
Benoit Berthelot. The World’s Biggest Bug Farm Wants to Decarbonize Fishmeal. Bloomberg. 2023/4/29. https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-04-28/the-world-s-biggest-bug-farm-wants-to-decarbonize-fishmeal.

[5]
Abraham Rowe. Rethink Priorities. Insects raised for food and feed — global scale, practices, and policy. , 2020/6/29. https://rethinkpriorities.org/publications/insects-raised-for-food-and-feed.

[6]
The Cambridge Declaration on Consciousness. 2012/7/7. https://fcmconference.org/img/CambridgeDeclarationOnConsciousness.pdf.

[7]
《資料》宣言:2012『非ヒト動物の意識に関するケンブリッジ宣言』. アニマリズム党. https://animalism.party/material-2012-the-cambridge-declaration-on-consciousness-in-non-human-animals/.

[8]
The New York Declaration on Animal Consciousness. 2024/4/19. https://sites.google.com/nyu.edu/nydeclaration/declaration.

[9]
《資料》宣言:2024『動物の意識に関するニューヨーク宣言』. アニマリズム党. https://animalism.party/material-2024-the-new-york-declaration-on-animal-consciousness/.

[10]
昆虫に心はあるか ハチが感じる喜びと苦痛. 日経サイエンス. https://www.nikkei-science.com/202309_038.html.

[11]
Lars Chittka. Princeton Univ Pr. 2022/7/26. The Mind of a Bee.

[12]
Vanessa Gischkow Garbini. Insect Welfare: Why It Matters and How the Animal Movement Can Contribute to It. Lewis & Clark Law School.(2024/8/28) https://law.lclark.edu/live/profiles/16513-insect-welfare-why-it-matters-and-how-the-animal

[13]
Jonathan Birch, Animal sentience and the precautionary principle, Animal Sentience 16(1) (2017).

[14]
感染症を媒介する昆虫・ダニ類. 国立感染症研究所. https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-lab/478-ent/3739-vectors.html.

[15]
Yuichi Nakajima, Atsushi Ogura. Genomics and effective trait candidates of edible insects. Science Direct. 2022/8.  https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2212429222002528.

[その他]
Arnold van Huis et al. Edible insects. FAO. 2013. https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/c7851ad8-1b4b-4917-b1a1-104f07ab830d/content.
Wikipedia. 昆虫食.
Wikipedia. Insects as food.

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

この記事をシェア

ご支援のお願い

今、この瞬間も苦しんでいる動物たちのために、あなたにできることがあります。

一か月にランチ一食分のご支援が動物解放を早めます。 ご支援をお待ちしています。