花に止まる蜂

食に使われている動物

蜂蜜は蜂の大切な栄養源。養蜂の実態と、蜂蜜を食べるべきでない理由まとめ

  • 2024/09/02

蜂蜜は、トーストに甘さを加えたり、のど風邪の時に飲み物に入れたり、愛しい人を「ハニー」と呼んだり…。

優しく、体に良く、幸せなイメージと結びついています。

しかし、実態は異なり、女王蜂の羽の切り落としや人工授精、ストレスの強い環境の強制、病気の蔓延など様々な問題があります。

それにより近年は、蜂蜜を買わない、食べない人が増えてきています。

本記事では、蜂や蜂蜜について学び、利用すべきでない根拠についてまとめます。

社会的で複雑な蜂の家族

蜂の巣に集まる蜂たち

蜂の巣にいる沢山の蜂は、実は女王蜂を中心とする大きな家族です。

蜂は非常に社会的な動物で、それぞれの役割を持っています。

例えば女王蜂は、多いときは1日2000〜3000個の卵を産みます。これは女王蜂自信の体重以上です。[1]

男性の役割は交尾であり、蜜蜂の場合、交尾を終えると死にます。

女王蜂以外の女性の蜂は「働き蜂」と呼ばれます。掃除、育児、家(巣)作りなどを行い、それ以外にも、敵から家族を守り、一日中働いて蜜を集めます。

冬になり気温が下がると、蜂は体を寄せ合い、子どもたちの体温を一定に保ちます。[2]

蜂は喜びや苦痛を経験する

蜂の顔

蜂は意識、感情、知性、記憶、学習能力、複雑なコミュニケーション手段や社会性を持つことが分かっています。[3] 

例えば、ミツバチの研究者であるLars Chittka氏は、以下のように述べています。

「ハナバチは数を数え、「同じ」「異なる」といった概念を理解し、他者を観察して複雑な課題を学習し、自分の体の大きさが分かる。これらは、人間では意識に結び付けられている能力だ。ハナバチは喜びや苦痛も経験するようだ。すなわち、少なくとも一部の昆虫種には意識的な知覚力があるようで、おそらくすべての昆虫がこの知覚力を備えていると思われる。」[4] [5] 

また、真社会性昆虫(各メンバーが特定の役割を持つ組織化された家族で暮らす動物のカテゴリー)は、科学的に知的であると考えられています。

ミツバチを使った実験では、ミツバチはすぐに得られる小さな報酬よりも、遅れて得られる大きな報酬を選ぶ傾向があることが明らかになりました。これは、ネズミやハトよりも自己制御能力が高いことを示しています。

蜂蜜は、蜂の重要な栄養源

蜂蜜は蜂の大切な栄養源

そもそも蜂蜜とは、蜂の家族が越冬するために、夏の間働き続けて貯蔵した食料です。特に冬季の貴重な栄養源で、いわば保存食とも言えるでしょう。

蜂は、花から蜜を集め、自分の体から酵素を加え、吐き戻し、蜜が腐らないように工夫します。

一匹の蜂が一生をかけて作る蜂蜜の量は、たったのティースプーン1杯分にも及びません。[6]

蜂蜜採取の手順の一例は、以下です。

  1. 人工の木箱などにミツバチを誘導し巣を作らせる
  2. ミツバチが働き、蜂蜜を貯蔵するのを待つ
  3. ミツバチを木箱から出す(木箱を叩いたり風送るなどして、他の木箱に移動させる/木箱に煙を送ってミツバチを動けなくさせ、他の木箱に移す/等)
  4. 木箱から蜂の巣を取り出す(蜂の巣全てを取り出す/一部を取り出す/等)
  5. 蜂の巣を絞り、蜂蜜と、蜜蝋に分ける
  6. 他の木箱に移したミツバチには砂糖水を与える
  7. ミツバチが働き、蜂蜜を貯蔵するのを待ち、貯まったら採取することを繰り返す

蜂蜜以外にも、蜂由来のものとして、ローヤルゼリー、プロポリス、蜜蝋などがあります。

蜂蜜を利用すべきでない理由

花に止まる蜂の横からの写真

ここでは、ヴィーガンが蜂蜜を食べない根拠や問題を示します。

蜂蜜は、蜂の搾取である

蜂蜜とは、ミツバチが自分の家族や子供たちに食べさせるため、厳しい冬を生きて乗り越えるために、夏の間一生懸命働いて貯めた貴重な食料であり、栄養源です。

人間の嗜好品のために、蜂蜜を奪われた蜂には、より安価な砂糖水を与えられています。

蜂蜜を取るということは、蜂が自分たちのために必死に蓄えた栄養源を奪っているということ。蜂にとっては生きる為に必要ですが、人間にとっては必須ではありません。

我々人間は、意識を持ち、喜びや苦痛を感じる可能性が高いと分かっている存在を、搾取せずに生きていくべきではないでしょうか。

ミツバチの殺害

蜂蜜を始めとする蜂由来の製品のために、多くの蜜蜂やその子どもが殺されています。

蜂蜜を取る際、巣にしがみつく蜂や幼虫を殺さずにとることはほぼ不可能です。蜂蜜を利用する裏では、多くの蜂が苦痛を伴う死を経験しています。

それだけでなく、養蜂産業は蜂の子(蜂の子ども)自体も販売しています。

さらにイチゴやトマト、メロン等果菜類などの栽培に用いられる花粉交配用ミツバチに至っては、シーズン後は全ての蜂と巣が焼却されます。[7] 使い捨てなのです。

女王蜂の羽切り、人工授精

女王蜂の羽切り、マーキング
左:羽切り、右:マーキング

女王蜂の巣別れや逃走を防ぎ、管理を容易にするという理由で、養蜂場の女王蜂はしばしばハサミで羽を切られ、飛べないようにされます。

また、女王蜂の品種改変や蜂蜜のブランド化などを推し進めるため、女王蜂に対する人工授精まで行われています。

人工授精の方法としては、まず男性の蜂が捕獲され、腹部を潰し精液が採取されます(映像)。その後、女王蜂の体内に精液が注入されます。[8]

他にも、女王蜂だとすぐ分かるように、体に塗料を塗られることもあります。その間、強制的に一箇所に拘束されます。ミツバチはこれを攻撃行為と認識し、明らかにこれを嫌がり、逃れようともがきます。[18]

遺伝子操作、抗生物質、殺虫剤、農薬等による被害

養蜂

養蜂産業では効率よく蜂蜜を取るために、蜂は例えば以下のような様々な目に遭っています。

・免疫力強化のための遺伝子操作[9]

・生産性向上のために抗生物質を餌に混ぜて投与[10]

・管理を容易にするために殺虫剤の使用[11]

他にも、農薬による被害も顕著です。ある調査では、東北から沖縄の9都県で集めた73サンプルのうち、全てで農薬が検出され、そのうちの6割超で国の農薬に関する暫定基準を上回ったと報告がありました。農薬によっては48時間でミツバチの半数が死ぬとされる濃度を超えていたとの調査結果が出ています。[12]

伝染病と寄生虫の蔓延

養蜂産業下のミツバチは、人工的な巣の高温多湿な環境や、家畜化による耐病性の低下から様々な病気のリスクが高まります。[13]

ミツバチがかかる病気には、腐蛸(ふそ)病、チョーク病、バロア病、アカリン病などがあります。養蜂産業によるセイヨウミツバチの導入や、養蜂自体が病気を蔓延させる原因となっているとも考えられています。[14]

病気が発生した場合の処理は、蜂も巣も丸ごと焼却する、生きたまま袋に入れ窒息死させる、他にも二酸化炭素ガスで殺すなど、極めて不自然な方法で防除しています。[15]

さらに、腐蛆病は法定家畜伝染病であり、場合によっては半径2km以内の全ての蜂群が焼却処分になる可能性があります。[16]

野生蜂と生態系への脅威

野生の蜂の巣

一部の人は、ミツバチの世界的な大量減少を聞いて、家畜ミツバチを増やすことを肯定する主張が見られますがこれは誤りです。

ます、家畜ミツバチは野生の蜂と比較して花粉交配効率が明らかに低いことが確認されています。(蜜の収集に特化して家畜化されているため。)[17]

そして、家畜ミツバチの数が増えることで、野生のミツバチや他の花粉交配動物は競争に負け、生息地や食料を失う事例が増えています。

また、家畜ミツバチは病原体や寄生虫を運び、その結果、野生の蜂に病気を感染させるなど深刻な被害も与えています。

野生蜂や他の花粉交配者は多様な植物の花粉を媒介し、生態系のバランスを保つ重要な役割を果たしていますが、養蜂業が盛んな地域では野生蜂の数が減少し、植物の繁殖や農作物の生産にも深刻な影響を与えています。この生態系のバランス崩壊は、地球全体の生物多様性の危機を招く恐れがあります。

蜂蜜の消費は蜂の権利を侵害してるのはもちろん、取り返しのつかない地球全体への悪影響にも加担するということなのです。

あなたにできること

白い花に止まる蜂
  • 蜂蜜を買わない・食べない。代わりに、メープルシロップやアガベシロップなどの動物由来ではない甘味料を使う
  • 蜂蜜、養蜂の問題点を周りに伝える
  • 蜂蜜や養蜂の負の側面をさらに調べる。産業は利益を産むために、良い面しか消費者に伝えません。
  • ミツバチや昆虫について知識を深める。同じ地球に生きる、意識を持つ仲間のことを知ることで、共感や尊重の念が生まれます。
  • 養蜂に異を唱える。ミツバチを守るためには、環境問題に取り組むことはもちろん、養蜂の問題に取り組む必要があります。養蜂の問題点は、ほとんど知られていません。ミツバチを守るためには、問題点に関する社会への情報共有が必要です。
  • 業界やマスメディアに意見を伝える
  • ヴィーガンになる
  • 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する

動物を解放しよう。

《参照》

[1]「ミツバチの種類と特徴」, 秋田屋本店,https://www.akitayahonten.co.jp/aki0303-09.shtml 2024年9月2日閲覧

[2]「Seasonal Cycle of Activities in Honey Bee Colonies」,Beesource,https://www.beesource.com/threads/seasonal-cycle-of-activities-in-honey-bee-colonies.365897/ 2024年9月2日閲覧

[3]Lars Chittka「The consciousness of bees」, The Washington Post, https://www.washingtonpost.com/outlook/2022/07/29/bee-cognition-insect-intelligence-research/ 2024年7月13日閲覧

[4]「昆虫に心はあるか ハチが感じる喜びと苦痛」, 日経サイエンス, https://www.nikkei-science.com/202309_038.html 2024年7月13日閲覧

[5]Lars Chittka. Princeton Univ Pr. 2022/7/26. The Mind of a Bee.

[6]「「本物のはちみつ」をお届けするために(こだわり)」, 山田養蜂場, https://www.3838.com/honey/kodawari/sozai.html 2024年9月2日閲覧

[7]「花粉交配用ミツバチの利用後は適切な処置を!」, 農林水産省, https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/attach/pdf/bee-56.pdf 2024年7月13日閲覧

「ハウスで利用する場合の留意事項」, 一般社団法人日本養蜂協会, https://www.beekeeping.or.jp/farmer/pollinating-manual/consideration 2024年9月2日閲覧

[8]「養蜂マニュアル」, みつばち協議会養蜂家向けマニュアル作成検討委員会, https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/attach/pdf/bee-21.pdf 2024年9月2日閲覧

[9]「遺伝子編集でミツバチの免疫を増強!?」, セツロテック, https://www.setsurotech.com/media/crispr-210527/ 2024年9月2日閲覧

[10]「抗生物質の投与方法」, 俵養蜂場参考資料ライブラリーNo4 , http://tawara88.com/assets/library/05treatments/04Use%20of%20Antibiotics%20for%20AFB.pdf 2024年9月2日閲覧

[11]「Honey tests reveal global contamination by bee-harming pesticides」, The Guardian, https://www.theguardian.com/environment/2017/oct/05/honey-tests-reveal-global-contamination-by-bee-harming-pesticides 2024年9月2日閲覧

[12]「蜂蜜やミツバチ、広がる農薬汚染 9都県で検出」, 日本経済新聞, https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG28H21_Y7A820C1CR0000/ 2024年9月2日閲覧

[13]「養蜂における衛生管理」, 養蜂技術指導手引書 Ⅱ, https://www.beekeeping.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/05/eiseikanriA4.pdf 2024年9月2日閲覧

[14]「養蜂における衛生管理 ダニ防除技術[改訂版]」, 養蜂技術指導手引書 Ⅴ, https://www.beekeeping.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/03/daniboujyo_A4-kai.pdf 2024年7月13日閲覧

[15]「Why don’t vegans eat honey?」, surge, https://www.surgeactivism.org/ishoneyvegan 2024年9月2日閲覧

[16]「蜜蜂の腐蛆病検査について」,https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/019/648/husobyou.pdf 2024年7月13日閲覧

[17]Laura Clark「Commercial Hives Might Be Saving Crops, But They’re Killing Wild Bees」, Smith sonian MAGAZINE, https://www.smithsonianmag.com/smart-news/commercial-hives-might-be-saving-crops-theyre-killing-wild-bees-180953934/ 2024年9月2日閲覧

[18]「Bee exploitation」, Animal Ethics, https://www.animal-ethics.org/exploitation-of-bees-by-humans/ 2024年9月2日閲覧

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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