芝生にいるウサギ

娯楽に使われている動物

学校の動物飼育の倫理的問題

  • 2024/11/25

学校での動物飼育は、「子どもたちが命の大切さを実感できる」と言われています。

しかし、本当にそうでしょうか?

実際は、動物への被害が起きていることだけでなく、子どもへは動物を尊重しない教育になっているのが実態です。

この記事では、学校での動物飼育の実態と問題についてお伝えします。

学校飼育動物とは

学校で飼育されるうさぎと小学生

飼育される動物は多岐にわたります。哺乳類(ヒツジ、ウサギ、モルモット)、鳥類(ニワトリ、チャボ)、爬虫類、両生類(イモリ)、魚類(金魚、メダカ)、昆虫類(カブトムシ、クワガタ、スズムシ)、その他無脊椎動物(カブトガニ)など、その学校がおかれた環境ごとに飼育しやすい様々な動物が、学校飼育動物とされています。

主張されている動物飼育の「意義」

日本獣医師会小動物臨床部会の学校飼育動物委員会報告による、学校飼育の意義は以下の通りです。 [1]

  • 子どもたちが命の大切さを実感できる
  • 子どもたちに責任感を育成できる
  • 子どもたちに社会性・協調性を育成できる
  • 子どもたちに優しさ、思いやり、忍耐力を育成できる
  • 子どもたちの心の癒しや人間関係改善の場となる
  • 子どもたちに動物に対する観察力、探究心を育成できる

日本初等理科教育研究会による文部科学省の委嘱研究では、以下のようなメリットが挙げられています。[2]

  • 命あるものとの触れ合い
  • 動物との触れ合いを通して育つ命のしくみや、自然とのかかわり方を学ばせる
  • ものいえぬ動物側の立場になって、ものごとを考えたり感じ取ろうとする感性の豊かさや思いやりの深さが、次第に培われていく
  • 自然の偉大さ、美しさ、不思議さや、命の大切さなどを、直接触れる体験をとおして実感し、心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力等の基礎を培うことができる。
  • 小動物に親しみ、世話をするなかで、自分以外の相手を思いやる心を育み、豊かな人間形成の基礎を培う
  • (動物の)形や色、匂いや動き等に興味をもち、発見したり、驚いたりする経験をとおして世界を広げていく

後ほど説明しますが、まず全ての内容が人間目線であるという内容になっており、まさに人間中心主義的な考えを広めることにはなりますが、動物の目線に立って物事を考えられる人はどれくらい育つのでしょうか?

動物は意識を持ち、痛みや苦痛を感じる

水槽に入れられてる金魚

動物は意識を持っています。

2012年、科学者たちは、脊椎動物を中心とする多くの動物が(人間と同様には)意識を持っているとする「非ヒト動物の意識に関するケンブリッジ宣言」を発表しました。

水槽などで飼育される魚に関しても、意識があり、痛みを感じることが分かっています。

動物が私たちと同様、意識を持っているということは、私たちと同様、意思や感覚や感情を持っており、苦痛や愛情を感じているということになります。私たちも動物の一種であるので当然のことです。

学校における動物飼育の問題

ネグレクトを受けたウサギ
手術を要する病気になっていた、大阪の小学校で飼育されていたウサギ

動物への被害

学校飼育動物への虐待や殺害は昔から行われてきました。以下に学校動物飼育に伴う虐待や、動物の被害について列挙します。[4] [5]

  • ネグレクト
  • 多頭飼育崩壊
  • 近親交配
  • 近親交配による奇形
  • 不適切飼育
  • 糞便まみれになる
  • 猛暑の中での屋外で飼育(うさぎが死亡した事例もある)
  • うさぎの耳をつかんで持ち上げる
  • 動物の生態に適さない持ち方をする
  • 手に持った動物を落とす
  • 災害による避難で取り残された動物が死亡する

夏休みの間に誰からも世話をされずに死んでしまったり、夏の酷暑にも関わらず外の檻に放置されたり、エサもまともに与えられずに餓死したり、子供に追い掛け回されたり、病気になっても治療を受けられずに死んでしまうなど、動物たちはひどい扱いで次々と亡くなっています。

動物虐待は犯罪であり、動物愛護管理法 第四十四条(動物への危害への罰則)によると、1 愛護動物への虐待や殺害の罰則は、懲役五年以下、罰金五百万円以下。2 愛護動物への 不適切な飼育は、懲役一年以下、罰金百万円以下となっています。

学校飼育が犯罪を助長してしまっているという現状があります。

動物の目線では動物飼育はどう映るのか

動物を主語にして、動物の目線で見てみます。

私は、家族や仲間とも過ごせず、学校に監禁され、自由はなく、食べ物や水を支配され、一生檻の中で生きることを強制され、生殺与奪は先生によって決められます。

優しくしてくれる子供もいますが、暴力を振るう子供もいます。

ほとんどの時間を退屈して過ごし、猛暑には暑さに苦しみ、極寒の冬には寒さに苦しみます。

人は、自分たちの子供のために私たちを利用し、私たちを子供達のための道具か何かだと考えているのでしょう。

私たちは、人とコミュニケーションできないため、辛くても苦しくても訴えることはできません。

私はいずれ死ぬでしょう。

死んだら私は誰の記憶にも残らず、忘れ去られるだけです。

そして、新しい「私」が導入され、苦しみは続いていきます。

(Wordpressのボックス、例えば「詩」などで目立たせる)

動物の権利

動物に権利はあると思いますが?現在は、法的な権利はほぼないと言っていいでしょう。

だからと言って、動物を物のように扱っても良いのでしょうか?

答えは、NOです。

動物は意識を持ち、痛みを感じるという点では、われわれ人間と同じです。

苦しむ能力がある動物を、搾取すべきではありません。

動物利用肯定教育

「自分がされて嫌なことはしない」。誰でも知っていて自明のような言葉ですが、現代社会では動物は対象とされていません。

動物飼育によって、子供たちに教育されるのは、動物の命の尊さではなく、

「動物は檻に閉じ込めてもいい」

「動物は外に放置していてもいいい」

などという、動物利用を肯定する無意識の考えです。

実際、日本獣医師会や日本初等理科教育研究会が挙げていた、学校飼育の目的、意義、メリットのすべての項目の主語は、人間であり、動物のメリットは一つも書いてありません。

学校飼育という制度において、動物は、一貫して人間にメリットを与えるものとして扱われており、動物の意識や自由や主体性、尊厳や権利は完全に無視されています。

つまり、学校飼育という教育制度の根幹をなす主義・思想は、人間中心主義、種差別、肉食主義(カーニズム)です。これらの主義・思想は、これらから導き出される「動物搾取は人間の自明の権利である」という前提条件、価値観と共に無意識化されており、その無意識は子供に伝わり、動物搾取を当たり前だと思う人に育ちます。

学校の動物飼育に変わる教育

動物への共感や愛情や配慮を教える教育は必要です。

しかし、その手段としての動物飼育は上記の理由により不適切です。

本当に必要なのは、真の動物の尊厳やすばらしさ、大切さを学べる教育です。

各動物種の生態に関する知識はもちろん、特に、動物の意識についての知識を伝えることは、動物に関する思索の根幹を与えることになります。

さらにはこれからの時代、動物倫理や動物の権利、動物の尊厳や自由を教える必要もあります。

これらのことをしっかり教えれば、学校飼育によって動物が何を感じているか、より共感的に理解することになります。

あなたにできること

草を食べるヤギ
  • 学校飼育動物、学校飼育について、動物の目線から想像してみる。他者の目線から見ることは大事な想像力です。思わぬ被害を自分が与えていることに気がつくきっかけとなります。
  • 学校飼育を止めて欲しいと、学校や行政、関連団体などに意見を言う。自分たちは動物搾取を良しとしない、求めていないと伝えることで、徐々に空気が代わり、学校飼育動物として犠牲となる動物は減っていくでしょう。
  • 学校では、動物それぞれの生態を教えると共に、動物の素晴らしさ、尊厳、動物の権利、動物を搾取してはいけない根拠を教える。
  • 学校飼育動物に起きている問題、学校飼育動物を止めることの重要性などについて周りに伝え、動物に関心を持つ人、動物を守る人を増やす。
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンになることで、サメはもちろん、すべての動物を守ることができます。ヴィーガンはたった一人でできる、動物保護、動物権利、動物解放、環境保護活動です。
  • NPO法人 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する

動物を解放しよう。

《参照》

[1] 子どもの心を育てる学校での動物飼育. 社団法人 日本獣医師会小動物臨床部会 学校飼育動物委員会報告.  2007/08. https://jvma-vet.jp/aigo/school/h19_08.pdf,(参照 2024.08.24).

[2] 山口令司. 学校における望ましい動物飼育のあり方. 日本初等理科教育研究会. https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06121213/001.pdf,(参照 2024.08.24).

[3] 今村亜由美. 消えたウサギ 働き方改革と命を学ぶ意義とのはざまで. NHK政治マガジン. 2023/01/20. https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/94565.html, (参照 2024/08/25)

[4] 石井万寿美. 【学校飼育動物】小学校のウサギが糞便まみれ、奇形、多頭飼育崩壊 教育現場でネグレクトという虐待?. YAHOO!ニュース. 2023/12/07. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dfcfaa35236c753a40141f0304ed9c70f9d98fe7, , (参照 2024/08/25)

[5] 太田匡彦. (フォーラム)動物とのふれあい必要?:2 学校では. 朝日新聞デジタル. 2022/07/31. . https://www.asahi.com/articles/DA3S15373889.html, (参照 2024/08/25).

文部科学省

学校における動物飼育について. https://www.mext.go.jp/content/20210701-mext_kyoiku01-100002611_01.pdf,(参照 2024.08.24).

学校飼育動物. 公益財団法人 日本獣医師会. https://jvma-vet.jp/aigo/school.html,(参照 2024.08.24).

全国学校飼育動物研究会. https://www.schoolanimals.jp/, (参照 2024/08/24).

学校飼育動物の飼い方. 畜産ZOO鑑. https://zookan.lin.gr.jp/kototen/gakko/,(参照 2024.08.24).

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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