レザーは日常生活に溢れており、ジャケット、靴、バッグ、ソファ、さらには太鼓や三味線などの楽器まで、多くの場所で利用されています。
そんなレザーは、食肉産業の副産物として出るため、「エコ」で「サステナブル」だと思う方も多いでしょう。
しかし、実際は異なります。レザーの需要は伸び続け、世界の皮革製品市場規模は2023年の4,684億9,000万米ドルから2030年までに7,386億1,000万米ドルまで成長すると予測されています。[1]
皮革産業はもはや一大産業になっており、毎年世界中で 22億9,000万以上の動物が皮革のために殺されています。[2]
それだけでなく、革なめしは環境、生態系、労働者の健康にも大きなダメージを与えます。
革のために動物が大量に殺されていることについて、知っておくべき事実をご紹介します。
レザー産業の実態と問題
「レザー」と一口に言っても、使用される動物は以下のように多様です。
哺乳類は、牛、子牛、牛の胎児、水牛、豚、ヤギ、羊、馬、ポニー、ゾウ、クマ、鹿、カンガルー・クジラ・イルカ、猫、犬など。他にも、ワニ・ヘビ・トカゲなどの爬虫類や、エミュー、魚などです。
レザーは、食肉の副産物として取るから倫理的であると表現されることがありますが、実際はレザーそのものを目的として動物が産まされ、殺害されています。また、野生動物を狩猟によって殺害して皮革を取る場合もあります。
残酷なレザー:ハラコ
ハラコは、レザーの一種。手触りが良く、財布や鞄などに使用される高級皮革です。
ハラコとは、腹子。胎児の子牛、小馬、子羊などです。妊娠している母を殺害し、胎児を取り出し殺害。その皮を取ります。妊娠している母を殺すと同時にお腹を裂き、胎児を取り出すことも行われます。ヘアカーフ、ベビーカーフ、カーフ、カーフスキン、キップと呼ばれる素材も、胎児や子牛を殺して剥いだ皮です。
(閲覧注意)妊娠した牛を屠殺し、子牛を子宮から取り出す様子
ワニ
2015年、高級ブランドにもワニ皮を提供しているアメリカやアフリカの業者が、意識があるワニから皮を剥ぐなど、ワニに対し残酷な扱いをしていることが問題になりました。[3]皮が剥がれても体を動かしている姿が記録されています。ワニに対する残酷な扱いは、ベトナムなど他の国でも確認されています。なお、日本で観光地とされているワニの飼育場は、過密でストレスフルな環境で飼育を行っており、闘争などで怪我をし、血を流しているワニ、腕や指を欠損したワニがそこここに見られます。
多くの場合60年生きるワニは、1~3歳になる前に殺されます[4]
皮のために殺される爬虫類
家畜動物
食肉のために殺される、レザーのために殺される、いずれにせよ、動物たちは殺される恐怖に怯え、悲鳴を上げ、中には涙を流して泣く動物もいます。殺害は、「人道的」とされる方法で行われます。例えば、体を固定され、頭にボルトを打ち込まれ、首を切られます。ボルトで気絶しなかった場合、動物は激烈な痛みに喘ぎながら絶命します。
牛と豚は本来、平均15〜20年生きるにもかかわらず、牛は2歳半、豚はわずか半年で殺されます。
ヘビ
犬や猫、ヘビ、その他、と殺の設備が整っていない状況で殺害される動物たちは、動物福祉の対象となっていないことがあり、撲殺や刺殺、感電死などによって殺されます。ワニと同様、ヘビも生きたまま皮を剥がれることがあることが確認されています。
狩猟
クマ、イノシシ、ニホンジカなどの野生動物の皮を使い、「ジビエレザー」として最近は商品が作られています。
野生動物は罠や銃殺、他にも電殺器、刃物などで殺害されます。
動物たちは殺されるときばかりではなく、狩猟者に追われているときや、罠に捕まったときにも苦痛を感じています。捕獲性筋疾患(Capture Myopathy)とは、捕獲されるときに起こる筋肉の破壊、けいれん、こわばりなどです。ひどい場合は不可逆性の疾患となり、障害を抱えます。
自分を殺そうとする狩猟者への恐怖を抱きながら、筋肉の限界を超えて逃げるために起こります。
レザー生産の環境への影響
家畜動物の飼育には、抗生物質など大量の薬品が使われ、環境に流出していることが問題となっています。また糞尿やゲップなどが、土地、水、空気を汚染していることも広く知られています。
それらの問題に加え、皮革生産は、皮のなめしに大量の化学薬品を使います。「皮をなめす」とは、皮を柔らかくし、防腐処理を行うなどし、衣類や家具の素材にする工程のことです。
この工程において、クロム(なめしに使われるのは安全とされている三価クロムだが、なめし後有害な六価クロムが発生していることがわかっている)、ホルムアルデヒド、硫酸、ギ酸、アルミニウム塩、ホルムアルデヒド、ヒ素、塩素、カドミウム、ニッケル、亜鉛、鉛、無機塩、界面活性剤、さまざまな油、染料などが使われます。
これらの化学物質が、水質汚染[5]や土壌汚染などの問題を引き起こしています。
革は天然素材なので、生分解し、環境に優しいというイメージがありますが、実際は最も環境汚染を引き起こす経済活動の一つです。
生産者への影響
日本を含め、世界各国で皮革生産を行うのは、社会的に虐げられた人々でした。皮革産業と差別や貧困など社会構造的な問題は未だ続いています。
現在は、労働賃金が安く、人体汚染に関する規制や、環境規制の基準が低い発展途上国で生産されることが多く、教育行政が十分に届かず、権利や衛生、化学物質や環境への影響について知らない人々が、自分の健康や寿命を犠牲にして皮革生産を行っています。
皮革生産を行っている人々は、皮膚疾患、火傷 、視力障害、失明、吐き気、嘔吐、咽頭痛、腹痛、胃腸障害、下痢、白血病、肺がんなど様々ながんに苦しんでいます。さらには、遺伝子損傷、胎児への害を引き起こし、生まれた子供は先天的な障害を追います。
先進国の美意識やファッション、趣味、音楽のために、発展途上国の人々の健康や環境が搾取されています。
毒を垂れ流すバングラデシュの皮革産業
消費者への影響
革製品によってアレルギーを起こす場合があり、かゆみ、やけど、肌荒れなどを引き起こします。原因はなめしの過程で使用されている化学物質です。
革製品独特の匂いは、皮の匂いと思われていますが、実際はなめしに使われる化学薬品の匂いです。
あなたにできること
現在、動物由来の皮革の代わりになるヴィーガンレザー、合成皮革などさまざまな代替製品が開発されています。
特に日本は、人工の皮革(合皮)、ファー、ダウンの開発・製造の先進国であり、高品質な素材を次々と開発しています。他国の動物製品は、人々の意識の向上と共に売れなくなってくるでしょう。その時に、日本は代替製品によって世界や動物に貢献できる可能性があります。
人工皮革やファーは、フェイクレザー、フェイファーといったネガティブな響きを持つ言葉で呼ばれますが、近年はエシカルレザーやエコファーといった言葉が使われるようになってきており、社会の意識の変化が進んでいることがわかります。
動物に苦痛を与えて作られた製品を身にまとっていると知った今、常に心のどこかで罪悪感を感じる人もいるでしょう。
その罪悪感は、傷つけている相手の、そして自分の人生をポジティブなものに変える、大切なきっかけです。
私たちは、動物に苦痛を与え殺害せずとも、ファッションを楽しみ、防寒でき、音楽を楽しめます。
誰も傷つけない楽しみ、それが本当の楽しみです。
動物の尊厳を尊重し、権利を保護し、動物にも人間にもやさしい社会を実現していきましょう。
参考資料
[1]革製品市場規模、シェア、新型コロナウイルス感染症の影響分析、ソース別(フルグレインレザーおよび合成皮革)、製品別(アパレル、鞄、履物、その他)、エンドユーザー別(男性、女性、子供)、および地域予測、2023 ~ 2030 年 Source: Https://Www.Fortunebusinessinsights.Com/Jp/%E9%9D%A9%E8%A3%BD%E5%93%81%E5%B8%82%E5%A0%B4-104405. (2024, November 4). FORTUNE BUSINESS INSIGHTS. https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E9%9D%A9%E8%A3%BD%E5%93%81%E5%B8%82%E5%A0%B4-104405
[2]Assoune, A. (2023, May 9). Home Inspiration How Many Animals Are Killed For Leather Each Year | Panaprium. Panaprium. https://www.panaprium.com/blogs/i/animals-killed-leather
[3]ワニの扱いで批判、仏エルメスが調査開始 バーキンさん要請受け. (2015, July 30). AFPBB News. https://www.afpbb.com/articles/-/3055958
[4]Leather Production. (n.d.). Animal Liberation. https://www.al.org.au/leather-production
[5]Borrely SI et al. “Emerging pollutants, related toxicity, and water quality decreasing: tannery, textile, and pharmaceuticals load pollutants”. Open Access Text . https://www.oatext.com/emerging-pollutants-related-toxicity-and-water-quality-decreasing-tannery-textile-and-pharmaceuticals-load-pollutants.php#gsc.tab=0, (2023.09.08).