フカヒレの問題

食に使われている動物

フカヒレを食べるのが非倫理的である理由

  • 2024/11/20
  • 2024/11/21

高級食材とされているフカヒレは、サメのヒレです。

サメは人とも友情を築き、撫でられるのが好きで、自分を助けてくれる人を認識し、助けを求めることもできます。

そんなサメを、人間は毎年約1億匹殺しています。その多くはヒレを切り落とされ、生きたまま海に捨てられているのです。フカヒレのための漁は残酷です。

ここでは、サメについてや、サメに起こっている問題について紹介します。

フカヒレはサメのヒレ

サメの8つのヒレ

フカヒレとは、その名の通り、大型のサメ(フカ)のヒレです。

フカヒレに使われるサメは大型のサメで、ジンベエザメ、ウバザメアオザメ、イタチザメ、ヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメ、シュモクザメなど多くのサメが利用されます。

サメは計8つのヒレを持っており、それらが切り取られ利用されます。

日本は年間で計20,800tと、世界で9番目に多くサメを捕獲しています。[1][2]

サメについて

泳いでいるサメ

サメに意識はある

動物行動学者イラ・フランス・ポルシェによると、サメは、刺激に自動的に反応しているのではなく、認知機能を利用しています。自己や他者を個体として認識しており、好奇心を持ち、用心深く、学習能力があり、複雑な社会生活を送っています。サメの中には記憶に優れている個体もおり、2年経ってもイラ氏を覚えているサメもいたそうです。[3]

2001年から20年以上サメのエマと友情を育むヒトのジム。パンデミックで数年会えなかった後もエマはジムを覚えていました。

サメは苦痛を感じる

サメは侵害受容器を持ち、神経を持っています。つまり、苦痛を感じる条件を備えています。魚が意識を持ち、感情や苦痛をはじめとする感覚を持つことは、2012年ケンブリッジ宣言や、スミソニアン博物館の声明によって主張されています。[4]

300本以上の針をサメから抜くヒトのクリスティーナ。サメたちは針を抜いてもらうためにクリスティーナのところにやってきます。

フカヒレのためにサメに起きている問題

シャークフィニング(Shark finning)

サメのヒレを切り取る様子

シャークフィニングとは、サメを捕獲し、ヒレを切り取り、体を海に捨てることです。ひれを切りとられたサメは泳ぐことができず、海底に落ちていき、死亡します。

人間に例えれば、両手両足を切り取られ、海に沈められ、泳ぐことができずにもがきながら、ゆっくり窒息して死んでいくということであり、その苦痛は想像を絶します。極めて残酷な漁です。

サメ漁

サメ漁

一方、日本の漁業関係者は、シャークフィニングをせず、サメの身体全てをつかっているからサメ漁やサメの利用が肯定されると主張します。同様の主張は、捕鯨やイルカ漁でもみられますが、いずれにせよ動物に苦痛を与え殺害していることには変わりなく、動物の尊厳や生存権を侵害する行為です。また、サメを個体数減少や絶滅へと追い込んでいる原因そのものでもあります。

2024年時点で違法サメ漁も含めたサメの殺害は、毎年8,000万匹に達しているとみられています。[5] 

サメの個体数激減:絶滅の危機

絶滅危惧種のサメ一覧

サメの大量捕獲・殺害によって、現在、サメの個体数は激減し、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。サメは海の生態系の上位を占めます。生態系上位の生物の減少は、海洋食物連鎖全体や生態ピラミッドに大きな影響を与え、海洋生物環境や生物多様性の破壊を引き起こします。

また、生態系の上位ということは繁殖数が少ないということでもあり、一度破壊すると復旧に時間がかかる、あるいはティッピングポイント(不可逆的な転換点)を超えると絶滅に向かう可能性があります。

同じ軟骨魚綱であるサメとエイの個体数は1970年以来50年間で71%減、1200種のうち37%が絶滅の危機に瀕しています。[6]

解決法

下からのサメ

シャークフィニングへの規制

シャークフィニングは、多くの国や地域で禁止されました。台湾、インド、EU、英国、米国、ニュージーランド、ブラジル、チリ、ギニア、シエラレオネなどです。[7]

サメ漁への規制

シャークフィニングはもちろん、サメ漁自体を禁止した国々もあります。エジプト、コンゴ、メキシコ、ボンジュラス、パラオ、フィジー、クック諸島、ブルネイ、イスラエルなどです。

フカヒレ料理発祥の地である中国は2013年、政府公式行事でのフカヒレ料理の提供を禁止しています。[8]

日本の取組み

サメ漁が規制されながらも、サメ漁によって死ぬサメの数は増加しています。[9]

日本の漁業者や産業は、利益・利権存続を図るため、規制強化へ対抗しています。

2022年、CITES附属書IIにヨシキリザメが掲載されました。日本のサメの年間漁獲量2万〜3万トンのうち1万〜1万5千トンをヨシキリザメが占めます。日本政府は、ヨシキリザメをはじめとする附属書IIに掲載されたサメに関して、CTTESの決定を留保し、サメ漁を続ける決定を行いました。日本政府水産庁や漁業関係者は、魚類や鯨類の保護に後ろ向きで、水棲動物の保護や自然保護を軽んじ、利益や利権を重視する姿勢が見られます。[10]

国際的な取組み

IUCNやCITESの他にも様々な国際機関がサメ漁業からサメを保護しようとしています。[11]

1999年、国連食糧農業機関 (FAO) は、サメの保全と管理に関する国際行動計画 (IPOA-Sharks:the International Plan of Action for the Conservation and Management of Sharks) を策定し、すべてのサメ漁業国に国家サメ計画 (NPOA) の策定を求めています。

2010年、国連のボン条約(CMS:移動性野生動物種の保存に関する条約)は、移動性のサメを保護するため、サメに関する覚書 (Sharks MOU:a Shark Memorandum of Understanding) を採択しました。日本は、ボン条約を批准していません。

大西洋まぐろ類保存国際委員会 (ICCAT)、全米熱帯まぐろ類委員会 (IATTC)、インド洋まぐろ類委員会 (IOTC)、北西大西洋漁業機関 (NAFO)、南東大西洋漁業機関 (SEAFO)、北東大西洋漁業委員会 (NEAFC) などがフカヒレ漁を規制しています。

民間企業や団体の取組み

ホテルや航空会社などの民間企業の中には、サメ保護のため、フカヒレの提供や、サメの輸出入への加担を中止した企業もあります。リストはこちら

また、動物擁護団体や環境保護団体もサメの保護に取り組んでいます。一例を挙げます。

あなたにできること

  • フカヒレや、かまぼこ・ちくわなどの練り物を買わない、食べない。そのことによって、サメたちを確実に守ることができます。
  • フカヒレやサメに関する問題をさらに学ぶ。
  • 問題を周りの人に伝える
  • 水産庁や漁業界やマスメディアに意見を伝える
  • ヴィーガンになる。ヴィーガンになることで、サメはもちろん、すべての動物を守ることができます。ヴィーガンはたった一人でできる、動物保護、動物権利、動物解放、環境保護活動です。
  • NPO法人 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する

動物を解放しよう。

《参照》

[1]海面漁業生産統計調査 / 確報 令和4年漁業・養殖業生産統計. e-Stat. 2024/02/29. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500216&tstat=000001015174&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001015175&tclass2=000001214760, (参照 2024/07/16).

[2]Adina BOsch. Top 20 Countries of global reported shark catch. ResearchGate. 2011. https://www.researchgate.net/figure/1-Top-20-countries-by-of-global-reported-shark-catch-adapted-from-Lack-Sant-2011_tbl1_266888719, (参照 2024/07/16).

[3]Ila France Porcher. Thoughtful Sharks.2019/01/20.https://sharkwords.blogspot.com/2019/01/thoughtful-sharks.html, (参照 2024/07/18).

[4]Ferris Jabr , Hakai Magazine. It’s Official: Fish Feel Pain. Smithsonian Magazine. January 8, 2018/01/08. https://www.smithsonianmag.com/science-nature/fish-feel-pain-180967764/, (参照 2024/07/18).

[5]Ker Than. Shark Slaughter: 73 Million Killed Each Year. LIVE SCIENCE. 2006/09/26. https://www.livescience.com/1027-shark-slaughter-73-million-killed-year.html, (参照 2024/07/17).

[6]Melissa Cristina Márquez. 50年で個体数71%減 絶滅の危機にあるサメ・エイを救うSAARIの取り組み. Forbes Japan. 

2022/08/20. https://forbesjapan.com/articles/detail/49750, (参照 2024/07/17).

[7]International Shark Finning Bans and Policies. AWI. https://awionline.org/content/international-shark-finning-bans-and-policies, (参照 2024/07/17).

[8]Tim Vernimmen, 三好由美子訳. International Shark Finning Bans and Policies. AWI. https://awionline.org/content/international-shark-finning-bans-and-policies, (参照 2024/07/17).

[9]漁業で死ぬサメは年間8000万匹、規制強化でも増加か. ナショナルジオグラフィック. 2024/02/07. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC259EC0V20C24A1000000/, (参照 2024/07/17).

[10]SHO HATSUMI/. Protection of blue sharks expected to hit Japan’s exports. The Asahi Shimbun. November. 2022 /11/27. https://www.asahi.com/ajw/articles/14778605, (参照 2024/07/18).

[11]International Efforts. AWI. https://awionline.org/content/international-efforts, (参照 2024/07/18).

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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