ウールやカシミアのセーターやマフラーは、「温かくて柔らかい天然素材」として多くの人に親しまれています。
しかし、その裏には、動物たちが耐えている深刻な苦痛があります。
この記事では、ウールやカシミア製品がどのように作られているのか、なぜそれが倫理的に問題なのかについてお伝えします。
動物の毛を生産する産業の実態と問題
羊、ヤギ、ウサギ、アルパカ、ラマ、ビクーニャ、牛、ヤク、ジャコウウシ、ラクダ、馬などの動物は、さまざまな種類のウールとカシミアを生産するために使用されています。この記事では、最も一般的な羊、ヤギ、ウサギに焦点を当てます。
品種改変:ウールのために作られたメリノ種
世界の羊毛の多くはオーストラリアで生産されており、そのうち80%がメリノ種です。メリノ種はウールの生産を目的として改良された羊です。
より多くの羊毛や皮を取れるように、羊たちは換毛(季節により毛が抜け替わること)しないようにされ、また、皮膚の表面積を増すため皮膚が深いしわ状になるように改変されました。これによって羊毛の収穫量を増やしました。
しかし、こうしたしわは動物の健康に悪影響を及ぼします。
ウジ虫が大量発生する:フライストライク
フライストライク(flystrike)は、羊の皮膚にハエが卵を産みつけ、孵化したウジ虫が皮膚や組織を食べて繁殖する病状です。特に温暖で湿度の高い環境で発生しやすく、羊にとって非常に苦痛で、放置すると命を落とすこともあります。
陰部を麻酔なしで切り落とす:ミュールジング
フライストライクを防ぐため、オーストラリアなどではミュールシングと呼ばれる処置が行われます。品種改変によって、皮膚がしわ状になってしまっているため、淫部や臀部のしわの中に蛆虫が入り込み、肉を食べて育ちます。ミュールジングはこれを処理するために行われます。
ミュールジングは、子羊を金属製の台の上に仰向けに寝かし、臀部とその周りの皮膚を麻酔なしで、ハサミで切り取り、皮膚を平らにします。子羊たちは血だらけになり、あまりの苦痛に悲鳴を上げます。激痛によって、子羊はショック状態に陥り、病気になり、死に至る場合もあります。
ニュージーランドは残酷であるとし2018年ミュールジングを禁止しましたが、最大の羊毛生産国であるオーストラリアは未だ続けています。
去勢・断尾
フライストライクを防ぐために、ミュールジングだけでなく、去勢や断尾も行われています。
去勢の方法は、刃物で睾丸を切り出す(無麻酔)、淫部の付け根を輪ゴムなどできつく縛り、血液を止め、腐らせるなどの方法で行われます。強い苦痛を伴います。
また、断尾は子羊の尾骨を熱いナイフで切断したり、尾の周りに輪ゴムを巻いてその部分の血流を遮断し、落とすなどの方法がとられています。
暴力と虐待だらけの毛刈り
牧歌的なイメージがある毛刈りですが、毛刈りは動物たちに精神的・肉体的苦痛を与えます。
毛刈りの時に、人間に殴られる、踏まれる、蹴られる、毛を引きちぎられるなど、暴力を振るわれることがあります。動物たちが悲鳴をあげ、怯えている様子が、カメラに捉えられています。
毛刈りは毛刈り用の鋏やバリカンで行われます。鋭く尖ったハサミの先が皮膚に刺さり、また、バリカンが皮膚を削り、動物たちは怪我をし、血を流すこともあります。
羊毛のために世界中で虐待される羊たち
羊は、人間に捕まえられ、押さえつけられ、乱暴に毛を刈られる際にストレスホルモンが検出されており、精神的苦痛を感じていることが分かっています。
生きたまま毛を引き抜かれるウサギ:アンゴラ
アンゴラの生産のために、アンゴラウサギは生きたまま、毛を引き抜かれます。声帯のないウサギが、苦痛のために喉を鳴らして悲鳴をあげます。毛を引き抜かれ血まみれになったウサギたちは、不潔なケージに戻され、毛が伸びるまで閉じ込められます。毛が伸びたら、再び毛を引き抜かれる苦痛を与えられ、これを死ぬまで繰り返されます。
アンゴラ・ファーの真実
屠殺
羊やヤギは、毛の質が劣化したり生産量が減ったりすると、肉用として殺されるか廃棄されます。こうした動物たちは短い生涯の間に過酷な苦痛を経験し、若いうちに命を奪われます。
羊の本来の寿命は20年ほどですが、羊毛生産に利用される羊は、5〜6年ほどで利用価値がなくなったと判断され、食肉にするために殺されます。
屠殺場では、羊は逃げようと必死です。しかし逃げようとすると殴ったり蹴られたりします。スタンガンを何度も打たれても意識を保って逃げようとする羊もいます。それ以外にも、屠畜銃を使って気絶させたりします。
その後は豚や牛の屠殺と同様、首を刃物で切断し、中の血を抜いて「肉」にしていきます。この段階でまだ意識を持っている羊もおり、長い時間苦痛を感じる羊もいます。
あなたにできること
- ウールやカシミアなどの動物由来の服を買わない
- ウールやカシミアの問題を周りに伝える
- 企業に意見を伝える
- 動物利用問題についてさらに学ぶ
- ヴィーガンになる。ヴィーガンになることで、鳥はもちろん、すべての動物を守ることができます。ヴィーガンはたった一人でできる、動物保護、動物権利、動物解放、環境保護活動です。
- 動物解放団体リブを支援し、動物を守る活動を推進する