われわれは平等なものの共同体を拡張して、この中にあらゆる大型類人猿、すなわち人類、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを含むようにすることを求める。
「平等なものの共同体」とは、一定の基本的な道徳原則や道徳的権利が、われわれ相互間の関係を支配するものとして、また法によって強制できるものとして認められているような道徳的共同体である。このような原則や権利の中には次のものが含まれる。
1 生存への権利
平等なものの共同体の成員の生命は守られるべきである。平等なものの共同体の成員は、たとえば正当防衛のように非常に厳しく定義された状況を除いて、殺されてはならない。
2 個体の自由の保護
平等なものの共同体の成員は、その自由を恣意的に奪われてはならない。もし正当な法的手続きをへずに監禁されるようなことがあれば、直ちに解放される権利が彼らにはある。何の罪の宣告も受けていないもの、あるいは犯罪に責任のないものの拘禁が認められるのは、次の場合に限られるべきである。すなわち、拘禁が彼ら自身にとってよいことと証明されうる場合である。ないしは、自由にさせておくと明らかに他者に危険を及ぼしかねない共同体の成員から、公衆を保護するのに必要であることが証明されうる場合である。そのような場合には、平等なものの共同体の成員は、直接に、あるいは適切な能力に欠けている場合には代理人を通して、法廷に訴える権利をもたねばならない。
3 拷問の禁止
平等なものの共同体の成員に対して、理由なく、ないしは他者の利益のためと称して、故意に激しい苦痛を加えることは拷問とみなされ不正である。
「大型類人猿の権利宣言」
パオラ カヴァリエリ (著), ピーター シンガー (著), 山内 友三郎 (翻訳), 西田 利貞 (翻訳)
昭和堂 (2001/04)
ISBN-10: 4812201098
ISBN-13: 978-4812201091