この記事では、「動物愛護管理法の基礎を学ぼう」の後編として、動物愛護管理法の問題点と改善法について掘り下げます。
前編はこちら
動物愛護管理法は、動物の福祉を改善するために制定された重要な法律ですが、その内容には多くの課題が存在します。前提として、ほとんどの動物に関して、虐待や殺害をしても罰則規定がないため、事実上守られていません。
一方、いわゆる伴侶動物(「ペット」、「コンパニオンアニマル」)に関しては、比較的法的に守られていると言えるものの、ビジネスセクター、飼い主、システム全体において深刻な問題が顕在化しています。
現状の法律よりも、さらに罰則を強化したり、対象動物の範囲を拡大することで、さらに動物を守ることのできる法律に改善していくことができるでしょう。
本記事では、動物愛護管理法にまつわる具体的な問題点を整理し、改善のヒントについてお伝えします。
④動物愛護管理法にまつわる問題
前回の記事でも書いた通り、動物愛護管理法は対象を動物一般としているものの、多くの動物に関しては罰則が設けられておらず、どれだけ虐待されたり殺害されたりしても、法的に守られません。
つまり、全ての動物を人間の搾取から守りたいと思う人の視点でみると、問題は山積みだと言えます。
では、動物の中でも比較的守られている犬や猫などの伴侶動物に関しては問題がないかと言えば、全くそうではありません。
以下では、いわゆる「伴侶動物」(ペット、コンパニオンアニマル)に起きている問題を中心に整理します。
ビジネスセクターの問題
ここでは重要な問題に焦点を絞ってご紹介します。
ブリーダー・引取り屋
- 過剰な数の動物を繁殖させ、市場に供給。余剰動物が生まれる。
- 女性の動物に幾度も繁殖させ、心身にダメージを与える。子供との別離や、劣悪な環境によるストレス、過剰な出産によるカルシウム不足や様々な疾患に悩まされている。
- ”優良な”ブリーダーは存在しない。全てのブリーダーは、利益を目的として動物を非倫理的に利用している。
ペットオークション
- 次から次へと動物を市場に供給する
- オークション会場での騒音やライトなど、動物にストレスを与えている
ペットショップ
- 既に供給過剰にも関わらず、動物を販売する
- 動物の生態に関する知識のない客や、動物を飼育できる経済力や環境があるかどうか分からない客に販売する
- 法律の抜け穴を使っての販売。例えば、無許可で繁殖させ、ブリーダーやペットショップに転売する
悪質保護団体
- 善良な動物保護団体と、悪質な動物保護団体が存在しているため、見分けがつきにくい
- 寄付目当てて動物保護団体を設立する
- 利益を目的として保護を行う
- 不適切・劣悪な飼育環境
- 多頭崩壊を起こす
- ネグレクトを行う
- 虐待、殺害などを行う
- 譲渡に関する問題(不適切な飼い主に譲渡する、高額な対価で譲渡する等)
飼い主の問題
- ペットショップで衝動買いしてしまう
- ブームになった動物を購入する。例えば、ハスキー、チワワ、コツメカワウソ、ハリネズミなど
- 安易な理由で捨ててしまう。例えば、大きくなった、病気になった、旅行に行くから、引っ越すからなど
- 自分の能力を超える数の動物を飼育する、産ませてしまう
- Youtubeに虐待もしくは虐待まがいの映像を投稿する
システムの問題
保健所・動物愛護センター
- 場所にもよるが動物の保護に積極的でない
行政(警察・検察・環境省)
- 法令違反があっても取り締まらない
法律(裁判所)
- 動物の苦痛に値しない軽い判決を下す。例えば、こげんたちゃん事件(懲役6ヶ月 執行猶予3年)、税理士猫虐待事件(懲役1年10ヶ月 執行猶予4年)、長野県松本市劣悪繁殖事業者事件(懲役1年、執行猶予3年、罰金10万円)など。
国会議員
- ペット産業、動物産業との癒着
保護団体の問題
- 行き場のなくなった動物が持ち込まれる
- 動物保護団体に、利益を追求するペットビジネスや、不良飼い主の皺寄せがきている
- ペットブームなどで不良飼い主が増え、ペットビジネスが盛んになるほど、保護団体の負担は高まる。飼い主やペットビジネスの動物倫理意識が高まるか、法規制が為されない限り、このサイクルは永遠に続き、保護団体の仕事は増え続ける。
- ペットビジネスは利益を上げ続けるため潤沢な資金がある一方、動物保護団体は持ち出しや寄付が中心であり、慢性的な資金不足に陥りがちであるという不公正な現状がある
- 盛んに保護を行い、SNSなどでアピールし、次々と譲渡していく保護団体には資金が集まる。慎重に保護を行い、動物へのケアやトレーニングを行い、厳しい基準を設けて譲渡する団体は、寄付は集まりにくい。
動物側から見た問題点
動物愛護管理法は、動物一般を対象としていますが、守る程度は動物種やヒトの利用用途によって変わってきます。動物愛護管理法を、動物側から見てみましょう。
動物一般から見た場合
動物一般に関して、動物愛護管理法が適用されるの主な条文は以下です。
第二条 基本原則(みだりに殺してはならない、適正に使用しなければならない等)
第四十条 動物を殺す場合の方法(できる限り苦痛を与えないで殺すこと)
罰則はありません。
つまり(愛護動物以外の)動物が虐待されたり虐待しさせられても、法律は守ってくれません。
愛護動物から見た場合
愛護動物の虐待や殺害には罰則がありますので、動物一般よりは守られます。特に犬猫は、他の動物に比べて守られています。しかし、野良犬や野良猫の場合は、「狩猟動物」ですので、ハンターによって罠で捕殺されたり、射殺される危険があります。
実験動物から見た場合
実験動物に関する条文は第四十一条に記載があります。
できる限り代替し、できる限り数を減らし、できる限り苦痛を与えないようにすべきだといういわゆる「3R」の内容は明記されているものの、実験動物に対する具体的な法的罰則規定がないため、違反があっても処罰することができないのが実情です。
⑤システムチェンジ:動物愛護管理法の改正
これらを解決・改善するために、様々な団体や活動家が、動物愛護管理法を使って、通報・告発・告訴を行っています。
また、現在の動物愛護管理法では規制しきれない問題については、法改正を目指して、ロビイングなどの活動を行っています。
動物愛護管理法は、施行から5年を目途に見直すことになっています。システムチェンジを行う団体は、その改正を目指して、5年間をかけて弁護士などと共に改正の準備を行います。
動物を守るためには、動物愛護管理法を例えば以下のように変更します。
- 愛護動物の対象範囲の拡大を行う
- 動物取扱業者に対する規制を強化する
- 飼い主に対する規制を強化する
- 悪質な動物保護団体への規制を強化する
- 罰則を強化する
- 動物保護団体のバックアップを強化する
- 動物福祉の基準を強化する
- 動物を守るために、動物保護活動や警察、動物愛護管理行政などの権限を拡大する
2025年の改正に向けて、様々な団体が要望を出しています。
例えば畜産動物に関しては、飼育密度の基準を設けることや屠鳥にスタニングを義務付けること、断尾や去勢など痛みを伴う施術には麻酔を義務付けることなどが要望されています。
他にも、動物取扱業を許可制にし、幼齢動物の販売を禁止することや第一種動物取扱業のデータベース化とその管理の強化も求められています。
実験動物に関しては、3Rの理念(代替、削減、苦痛の軽減)をすべて義務とすること、代替法の開発・普及を国の責務とすることが提案されています。さらに、動物実験施設や実験動物販売業を第一種動物取扱業の対象とし、動物を使用した動画配信者なども含めるべきとの意見があります。
犬や猫などの伴侶動物に関しては、虐待した飼い主に動物を返却しないようにするため、所有権の一時停止や動物愛護センターによる保護が提案されています。動物虐待、多頭崩壊、車内や屋内への置き去り、飼い主の認知症・死亡・逮捕拘留などの場合にも、伴侶動物を適切に保護する仕組みの強化が求められています。また、動物の引取り対象を犬猫からその他の愛護動物に拡大することも提案されています。
これらの要望は、動物の苦痛を軽減し、適正な管理を確保するための具体的な改善案として、様々な団体から提示されています。
まとめ
動物愛護管理法を改善し続けることで、動物を法的に守ることができるようになります。法律の改正を通じて、動物たちがより良い環境で生きることができるよう、一人一人が声を上げていくことが重要です。動物解放の理念を広め、実現するために、私たちの行動が必要です。
この記事を通じて、動物愛護管理法の問題点と改善のヒントについて理解を深め、動物たちのためにできることを一人ひとりが模索し、実行して頂けると幸いです。共に動物解放を目指して、行動を起こしましょう。
あなたにできること
1. ヴィーガンになる
動物が苦しまなくて良い社会をつくるためには、まずはあなたの生活から変えることができます。動物製品を消費する代わりに動物性不使用の食事や製品を利用することで、動物に優しい企業を応援しましょう。あなた一人の影響は微力だとしても、決して無力ではありません。動物解放に必ず繋がります。
2. 動物解放アカデミーに参加する
動物解放アカデミーに参加して、動物解放の理念や活動方法を学び、効果的なアクティビズムを実践しましょう。知識とスキルを身につけ、仲間と繋がり、動物解放運動をさらに加速させましょう。
3. リブのサポーターになって活動を支援する
NPO法人動物解放団体リブのサポーターとして、活動を支援しましょう。ご支援があれば、動物利用問題を広く伝え、ヴィーガンの促進、活動家の育成、などの動物解放のための活動をすることができます。継続的なサポートが、動物解放のための重要な活動を支える力になります。
4. ボランティアをして動物に優しい社会を作る
リブのボランティア活動に参加し、動物に優しい社会を一緒に作りましょう。イベントの運営や啓発活動を通じて、動物解放のメッセージを広めることができます。あなたの時間を使って、ぜひ一緒に活動してください。