娯楽に使われている動物

市原ぞうの国・サユリワールドで起きているゾウへの虐待【調査報告】(アニマルワンダーリゾウト)

  • 2018/07/30
  • 2023/11/27

この記事はNPO法人動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。

千葉の市原にある「アニマルワンダーリゾウト」は、2021年春に「市原ぞうの国」と「サユリワールド」がリニューアル合併してオープンしたリゾート型動物園です。

日本の動物園では最多のゾウがおり、「ぞうさんショー」や、ゾウの背中に乗る「ぞうさんライド」などが目玉として知られてます。

しかし、その裏でゾウたちは「ブルフック」という器具やドリルを体に刺され、ショーを「させられている」という実態があります。また、ゾウたちは精神を病んでしまい、「異常行動」も起こしていました。

この記事では、実際に現地で行った調査によって分かった、動物たちの目線での「市原ぞうの国」と「サユリワールド」の実態を報告いたします。

ゾウは心も体も繊細

ゾウは、高い知能と豊かな感情を持っています。彼らは自分自身を認識する能力があり、仲間との絆を大切にすることで知られています。また、水源の場所や過去の出来事を長期にわたって記憶することができるほど記憶力に優れています。

また、ゾウは低周波の音を使って、10km離れた仲間とコミュニケーションを取ることもできます。低周波の音は、物質に吸収されにくいため、遠くまで届き、そしてゾウの繊細な足の裏から音をキャッチするのです。

ゾウの足の裏には、繊細な神経が通っており、40km先に落ちた雷や雨も分かります。

また、分厚い皮膚は、その分痛みも感じにくいと誤解されています。しかし、実は非常に繊細で、体のどこにハエが止まっているかも分かるのです。

「ブルフック」という名の虐待道具

ブルフックという言葉を聞いたことはありますか?

ブルフックとは、金属製の先端が尖ったフックのこと。

ゾウの敏感な肌に、刺したり引っかけたりして痛みや恐怖を与えることで、ゾウに言うことを聞かせ、ショーでパフォーマンスをさせるための道具です。

ブルフック以外にも、日本ではドリルも用いられています。

ゾウのショーで使われるドリルの写真

先ほどもお伝えしたように、ゾウの皮膚は非常に繊細です。

ブルフックで突かれる箇所は、とても薄く、少しの傷で化膿してしまうほどです。

ブルフックやドリルの使用は、ゾウたちに身体的・精神的苦痛を与える虐待行為です。

アメリカでは、カリフォルニア州、ロードアイランド州、等15の地方自治体において施設内でのブルフックの使用を禁止しています。

ブルフックについて、詳しくは:ブルフックとは

ブルフックは決して「ツボ押し」ではない

市原ぞうの国のアナウンスでは、ブルフックの使用を「ツボを押す」と表現していました。

ツボを押すと聞くと、一般的には、マッサージのような気持ちのいいイメージが浮かびます。

しかし、実際はゾウの「急所」を、鋭い金属のフックで刺したり引っかけたりするため、ゾウにとっては非常に痛みや苦痛を伴います。

ブルフックの使用により、ゾウは痛みと恐怖に怯え、人間の言うことを聞かざるを得なくなります。

ブルフックで与えられる身体的・精神的苦痛

ブルフックやドリルの使用は、ゾウに対して身体的なダメージはもちろん、精神的にも苦痛を与えます。

暴力による支配を繰り返すことで、最初は人間に抵抗するゾウも、次第に無気力になり、人間の言うことをただ聞くようになってしまいます。

これを「学習性無力感」と言います。

人間が同じような状況下に置かれたらどうなるでしょうか。

人間と、人間以外の動物たちの違いは、私達が思うほど大きくありません。

市原ぞうの国のゾウたちは、暴力に怯え、絶望を感じ、苦しんでいました。

精神を病んでしまい、異常行動を繰り返すゾウたち


動物園にいるゾウたちは、「異常行動」をしていました。

異常行動とは、精神疾患が行動に現れたもの。様々な種類があります。

↓詳細はこちらの記事をご覧ください。
【保存版】動物の「異常行動」とは?動物園や水族館の動物のストレス・精神疾患について解説

異常行動に陥る原因は、監禁される事による精神的苦痛です。

家族や友人から引き離され、見知らぬ場所に連れていかれ、閉じ込められ人間に支配される等の状況下で、動物たちは人知れず精神を病んでいるのです。

酷い異常行動をしていた、ゾウの「テリー」

市原ぞうの国の一番奥にある象たちの檻の、さらに奥に「テリー」の檻がありました。

一見して酷い常同行動、トランクスイング(鼻を揺らす異常行動)でした。

テリーの立ち方が不自然です。 映像でも見られる通り、前足と後ろ足が近くなっています。

 いったいどんな「ショー」をさせられてきたのか。 

ぞうさんショーでは、小さい台に乗る「ショー」をさせられている象がいました。

テリーは何を考え、何を想っているのでしょう。人間に虐待され、利用しつくされてきたテリーには、私たちがどう見えているのでしょう。 

「ぞうさんのダンスショー」の仕組み

施設で行われた「象さんのダンス」。

何も知らない人が見ると、ゾウたちは楽しそうに踊っているように見えるかもしれません。

しかし、実際は頭を棒で叩かれたり、繊細な耳の裏をブルフックで刺されたりしながら、命令に従っているだけです。

それに合わせて、施設内には音楽やアナウンスがかかっていました。

アナウンスによって「この行動はこう見るべきだ」と教えられ、観客はショーや動物の見方を教育されます。

つまり、アナウンスにて「これは象のダンスである」、と言われることで、観客は「これは象のダンスだ」と思うという仕組みです。

「ぞうさんのお絵かき」

「象さんのお絵かき」とは、 使役者が、左手で象の耳の裏に指示し、右手で象の鼻を動かすショーです。

売店でも何枚も売っていました。ラインスタンプとしても販売し、資金を新たなゾウを生むために使うというアナウンスも流れていました。

象のゆめ花とりり香は、すでに常同行動も見られています。

これらの絵を購入するということは、ゆめ花とりり香への虐待を支援することになります。

また、バックヤードでのゆめ花とりり香は、足を鎖で繋がれ、動きたくても動けない状況でした。

生まれた瞬間から、私たち人間の奴隷という悲しい運命。

私たち消費者の、象の”ショー”を楽しみ、象に乗り、象に”ふれあい”たいという欲求のために、象たちはたった一度の人生を搾取されているのが現状です。

自分の欲求が弱者にどのような影響を与えているのかを、私たちは認識し、倫理的な選択をすべきでしょう。

自分の足を噛むエミュー(異常行動)

これまでいろんな動物園を見てきましたが、エミューが異常行動をしているのを見たのは初めてです。

自分の足先をずっと噛んでいました。

サユリワールドや市原ぞうの国は、他施設と比べても水準が低い飼育環境と言えます。

ゾウ以外にも約70種類、400名の動物が監禁されている

毛が抜けた動物

市原ぞうの国には、ゾウ以外にも、約70種類、400名の動物たちが閉じ込められています。

例えば下記の動物たちが閉じ込められています。

アメリカビーバー、アライグマ、インドタテガミヤマアラシ、エミュー、カピバラ、クロカンガルー、ケープペンギン、カバ、コツメカワウソ、シセンレッサーパンダ、トナカイ、ニホンザル、ニホンジカ、ビントロング、フサオマキザル、ペリカン、ポニー、ラマ、カピバラ等。

毛抜けや怪我をしている動物が多く、他の施設と比較しても劣悪と言えます。

鶏の顔に傷がある
足がボロボロな鳥
口にけがをしている鳥
体が禿げている
お札を鼻でつかむゾウ
異常行動をしていたエミュー
足の傷
モルモットの施設
汚いプール
鶏がいる檻
檻の中のサル
カバ
顔の毛が抜けている

動物園が行う「動物差別教育」

サユリワールドには「動物同士の共存」「人間と動物の共存」の2つのテーマがあるそうです。

施設はそのように主張しますが、実際は人間が一方的に動物たちを利用し、お金を儲けています。

動物利用問題は、見る側の人間の知識によって解釈が全く異なります。

例えば、ゾウが左右に大きく揺れている異常行動も、動物園側が「踊っている」と言えば、観客はそう認識します。

ブルフックでゾウを刺すことを「ツボ押し」と言えば、観客はそう思います。

逆に、動物の本来の生態や、動物たちの異常行動の知識を付けると、同じ現状に対しての見え方が180度変わります。

動物園は、役割として「教育」を掲げています。

しかし実際は、動物利用を肯定する教育をし、動物に対して優しくない人を育てることになっているのです。

日本一周 動物園水族館調査とは?

日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。

様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。

その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。

その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。

【まとめ】「日本一周!動物園水族館調査」全施設リスト

私たちが目指す社会

私たちのビジョンは、人間による全ての動物に対する抑圧や搾取がない、緑豊かで平和な地球。

動物たちは解放され、自然の中で自由に生き、愛し合い、子どもを育てています。

人類は動物たちをやさしく見守っています。

このような社会を実現するため、私たちは動物利用問題の解決に努めます。

市原ぞうの国とサユリワールド<まとめ>

鎖でつながれたゾウ

市原ぞうの国とサユリワールドでは、動物たちが精神を病み、異常行動を繰り返していました。

また、ゾウ以外の動物も異常行動をしていたり、毛がなくなっていたり、怪我をしており、他の施設と比較しても劣悪な状態でした。

この苦しみの連鎖を止めるには、私たち一人一人の正しい知識と行動の変化が必要です。

あなたにできること

・問題をさらに学ぶ

・動物を利用する施設に行かない

・周りの人にもこの情報を伝える

・施設に対して意見を伝える

リブへ支援をして、動物を解放するための活動を加速させる

<補足情報>

〔情報〕
種類:民
所有:(有)市原ぞうの国
運営者:〃
JAZA:〇

〔調査情報〕
調査日:2018年6月2日
LIBページ:https://animal-liberator.net/animal-liberator/180602-60-ichihara-elephant
写真:https://photos.app.goo.gl/tiDjHibwRWFPt2Gm2
動画:https://www.youtube.com/playlist?list=PLQT1RmSZIgCqDEREzYYgTs6U1clCroace

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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