青い海を自由に泳ぐイルカたち。その姿は多くの人に愛されています。しかし、和歌山県太地町では、毎年600〜900頭ものイルカが追い込み漁で捕獲され、水族館のショーや食用として利用されています。
この漁法の裏側では、イルカたちの家族が引き裂かれ、彼らが受ける苦痛は想像を絶するものです。本記事では、特に「追い込み漁」の方法やその問題点に焦点を当て、なぜ廃止が必要なのかを詳しく解説します。
イルカの知性
イルカは高度な知能を持ち、社会的な繋がりを大切にし、豊かな感情を持つ存在です。
例えば、子育ては家族で協力して行い、子育てが初めてなお母さんが疲れた時は代わりに親戚が交代して助けてあげます。
他にも、イルカは遊ぶのが大好き。海藻を腕に引っかけて相手の目の前で落とし、それをまた別のイルカが腕に引っかけて、まるでキャッチボールのように遊んだりもします。
イルカ漁の概要
イルカ漁とは、その名の通りイルカを捕獲する漁のことです。
かつては多くの国で行われていましたが、国際的な鯨類保護の潮流の中、現在は日本、デンマーク、ロシア、インドネシア、ソロモン諸島、カリブ海諸国、ペルーでイルカ漁が行われています。
日本では、現在は和歌山県の太地町でのみ行われています。
太地町では、例年9月〜2月末までの半年間、イルカ漁が行われており、近年は毎年約600〜900頭前後のイルカが捕獲・殺害されています。
捕獲されたイルカは水族館に高値で売り飛ばされ、それ以外のイルカは殺害され「イルカ肉」として販売されたり、ペット用のフードとして使用されたりしています。
イルカ追い込み漁の方法
イルカ追い込み漁は、イルカの群れを囲むように8隻程度の船を配置し、イルカが苦手な騒音を鳴らし続け、音や恐怖から逃げるイルカを岸に追い込み、群れごと捕獲・殺害します。
育児をするイルカの群れを狙う
ポッドという群れの中には、ナーサリーポッド(育児の群れ)と呼ばれる女性と子どもが中心のポッドがあります。ナーサリーポッドは、子育て経験の浅い女性に、年長の女性、母や祖母や仲間の女性が子育ての仕方を教え、食べ物を獲りに行っているときは代わりに面倒を見るなど、協力して子育てをするポッドです。イルカたちはかつての日本の家族やご近所のような助け合いをしています。イルカ漁師は、そのような子連れのポッドを狙います。理由は、逃げるのが遅く捕まえるのが容易だからです。イルカ漁師に追われたとき、若くて体力のあるイルカたちは逃げられますが、子イルカは驚きパニックになり、母親たちは赤ちゃんや子供の両脇を泳ぎ、守りながら逃げます。母親のイルカは本当は逃げることができるのですが、子どもを守るため逃げません。現地でイルカ漁を見ると、子どものイルカを守るため両側にイルカが寄り添い、守る姿が見られます。
イルカ漁師にとって、そのようなイルカの家族をコントロールし、追い込み、捕獲殺害するのは造作もないことです。そしてまた、若い女性がいる確率が高いので捕獲して水族館に高く売ることもできますので一挙両得です。
太地町のイルカ追い込み漁では、まだ 1m にも満たない子イルカを殺しています。子イルカたちはまだ甘えたい盛り。しかし母親やサポートする女性たちごと殺されてしまいます。もしかしたら、食べられてしまっているかもしれません。
水族館用の捕獲
イルカ漁が一番儲かるのは、水族館用に捕獲し、世界中の水族館に売ることです。
その際に選ぶのは、若くて肌つやが良い女性のイルカです。
若い女性のイルカは従順で、人間の支配下に置きやすく、技を仕込みやすいからです。また、女性のイルカの場合、妊娠して子どもを産んでくれる可能性があります。
そうすれば、無料でイルカという「商材」が手に入るため、水族館にとってより都合がいいのです。
イルカを水族館用に販売する場合、200万円から、高いと1000万円以上の値段がつきます。イルカ漁が続いているのは、この利益のためです。
食用の殺害
イルカを和船のエンジンで脅し、あるいはダイバーが後ろから追い、イルカを影浦湾に座礁させます。そこには屠殺道具を持ったイルカ漁師が待ち構えており、次々とイルカの頭頂部に銛を突き刺していきます。屠殺道具を引き抜いた後にできた傷には、血が出ないようにコルクのようなものを詰めます。
殺されるとき、イルカは痙攣し、尾鰭で水を叩きます。たかばべからは影浦での殺戮は見えませんが、イルカの呼吸音や水を叩く音が聞こえてきます。
泳ぎの早いイルカが、なぜ逃げられないのか
泳ぎが得意なイルカたちは、なぜ沿岸まで追い込まれてしまうのでしょうか。
それは、バンガーという爆音を発する道具によって、音の壁が作られ、音から逃げようとするイルカたちは音と逆の方向である岸に逃げる為です。
バンガーからは、170〜205dB(デシベル)の音が発せられています。
人間では、120dBで聴覚障害を起こし、150dBで鼓膜が破れ、198dBでは死ぬ可能性があります。
人間よりもはるかに優れた聴覚を持つイルカにとっては、どれほどの苦痛か、人間にははかり知れません。
イルカが受けているであろうとされている被害は、身体的には聴覚機能へのダメージ、鼓膜の破壊、エコーロケーションに関わる機能へのダメージ。精神的には、切迫感、恐怖などのストレス。たとえ捕獲されずリリースされたとしても、聴覚障害、高血圧、心拍数増大、生殖機能への障害、コミュニケーション機能への影響、睡眠障害、トラウマなどの被害、そして出生前の胎児がダメージを受けている可能性が指摘されています。
イルカ漁を廃止すべき理由
イルカを捕獲し、利用することは、単なる文化や伝統として正当化されるべきでしょうか?
結論は、廃止すべきです。
イルカだけでなく、動物は意識を持ち、苦痛や喜びなどを感じる能力があることは、近年科学的にも分かってきています。
そのような存在を人間の娯楽や利益のために利用することは、倫理的に正しい行為とは言えません。また、捕獲されたイルカたちは、狭いプールに閉じ込められ、自然の中で生きる本来の姿とはかけ離れた生活を強いられています。
イルカは比較的知能が高いがゆえに、精神疾患を患いやすく、水族館では頭を床に打ち続けたり、水槽のガラスに衝突し続けたりするなどの「異常行動」をしています。
あなたにできること
イルカ漁に反対するために、今あなたにできることがあります。
- 水族館に太地のイルカを購入しないよう働きかける
- 水族館をに行かない、お金を落とさない
- 問題について知識を広めるため、リーフレットを配布する
- 動物解放団体リブに寄付をしてイルカを守る活動を推進する
イルカたちが二度と人間に利用されず、家族と大海原で自由に生きる事ができるようにするためには、私たち一人ひとりの行動が必要です。彼らの苦しみを知り、そして行動を起こすことで、未来を変えることができるのです。
イルカ漁の問題を扱ったドキュメンタリー『The Cove』はこちら
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