この記事は動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。
ノースサファリサッポロは、北海道札幌市にある「体験型ふれあい動物園」です。ライオンや様々な動物に「えさ」を直接あげられる、エリア内で放し飼いをされている動物に自由に触れられる、本来アフリカにいる動物を見ることができる等、利用客には貴重な体験ができるのが魅力とされています。
一方で、動物たちは非常に大きなストレスを抱え、精神を病んでしまっており、「異常行動」を起こしている動物もいました。
この記事では、動物擁護の視点から、ノースサファリサッポロの動物たちの状況をお伝えします。
ノースサファリサッポロの施設概要
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私たちは、日本全国の動物園・水族館等の施設ほぼ全て283施設を現場調査してきましたが、本施設は下位3番に入るほど、劣悪な施設でした。
施設は複数のエリアに分かれており、施設の至る所でふれあいイベントや餌やりイベントが行われていました。
動物は鎖につながれたり、狭い檻に入れられていたり、異常行動をしていたりしていましたので、一つ一つレポート形式でお伝えします。
異常行動を続けるシロガオサキ
動物たちの「異常行動」を知っていますか?
異常行動(Zoochosis)は、動物園や水族館等に監禁された動物たちに起こる、精神病の一種です。(動物園・水族館の異常行動について詳しくはこちら)
この動画に映っているシロガオサキは、上下に飛ぶ動きを一日中続けていました。
たった20秒足を止めて見るだけでは、異常行動に気づく事はできません。ジャンプして元気にしているように見えるかもしれません。
しかし、動物たちはもともと住んでいた場所や仲間から引き離され、見知らぬ場所に連れてこられ、四六時中誰かに見られ続けるなどの状況下で、ストレスを感じ、精神を病んでいるのです。心の苦しみが見える形で現れたのが異常行動なのです。
シロガオサキ以外にも、ツキノワグマが異常行動をしていました。
ツキノワグマはストレスを感じやすい動物です。
ふれあい体験は、動物にとってストレス
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ふれあい体験で会える動物の赤ちゃんはとてもかわいいですよね。しかも、見るだけでなく、触ることもできる。私達の目線から見るととても楽しい場に感じられます。
しかし、触られる側の動物たちは、一体どのような気持ちで、どのような状況でこの場にいるのか、そこまで考える方は一体どれほどいるでしょうか。
動物たちは、自分の意思に関係なく、繰り返し捕まえられ、強く握りしめられ、足を引っ張られ、羽をむしられたりします。
実際にリブは現地調査をしていますが、箱に投げられたり落とされたりすることも少なくありませんでした。
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子どもがヒヨコの首根っこを掴んでいました。子どもはどうしても扱いが荒くなってしまいます。
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生まれたばかりのマウス赤ちゃんさえ、触られます。
どんどん増えるマウスの赤ちゃん。
園内には大量の猛獣がいます。
さて、このマウスの赤ちゃんたちはどうなるのでしょうか。
関連記事:ふれあい体験の動物のその後は?動物園の「園内リサイクル」の問題点
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本施設のふれあい体験には飼育員はおらず、利用客が動物を好きに扱える状態でした。
赤ちゃんたちは、人間のおもちゃ扱いになっていました。
日差しを遮ることもなく、水もない場所で放り出されているひよこたち。
・暑ければ日陰に、寒ければ暖をとる。
・喉が乾けば水を飲むし、お腹が減ればご飯を食べる。
そんなことすら、自分の意志ではできない状況に置かれています。
淡水で飼育されるアザラシ
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海洋で暮らすゴマフアザラシを川の水、つまり淡水で飼育していました。
本来ゴマフアザラシは、海で暮らします。塩分濃度が高い海水内で、圧力の高い環境に適応しているため、淡水での飼育は不適切です。
それだけでなく、アザラシのふれあい体験や、餌やり体験など、使えるだけ使われています。
大きな海で自由に暮らしているはずが、狭い環境に閉じ込められ、触られ、食べ物をコントロールされています。
私たち人間に、かれらを閉じ込める権利がなぜあるのでしょうか?
鎖で繋がれる動物たち
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ストレスに弱いキタキツネが、人通りの多い騒がしいところに繋がれています。
逃げることもできず、諦めているような姿。
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タヌキも同じように繋がれていました。
「鎖で繋がれる」
「檻に閉じ込められる」
「常に見られている」
「騒音の中に置かれる」
人間以外の動物たちも、感情があり、ストレスや痛みを感じます。
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ベルトを付けられ、動ける範囲を制限させられているニホンザルもいました。
もともとは自然の中で暮らし、家族や仲間がいたはずです。
しかし、この子はずっとこの場所に繋がれていくのです。
動物園は、かれらの自由を奪うだけの正当性を持つように見せて、実は持ちません。(詳しくは:書籍「動物園水族館閉鎖」)
「ライオン釣り」「クマ釣り」
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自然下の動物たちは自分で食べ物を探し、食事の時間や種類を自分で調整しています。
しかし、動物園でのエサやり体験では、来園者が与えるエサによって、動物たちが必要以上に食べ過ぎたり、本来食べるべきではない種類の食事を摂取したりすることがあります。これにより、肥満や栄養不良、消化不良といった健康問題が生じることがあります。
さらにそれだけでなく、餌やり体験は「人間はそれ以外の動物を支配しても良い」という考えを肯定し、助長します。
人間が動物を支配するという態度は、人間と動物の間に本質的な不平等を生み出します。これは動物を劣った存在とみなし、彼らの権利を無視することに繋がります。動物は単なる物や道具として扱われ、感情や尊厳を考慮されず、結果としてさらに動物利用が促進されていくのです。
足を縛られている鳥たち
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大量のフクロウやタカが足を縛られ、「展示」されていました。
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人間から逃げようとして紐が絡まってしまい、止まり木に戻れずにずっと羽ばたいている子もいました。
本来は大空を自由に飛び回ることができる鳥たち。
立派な羽があるのに、足を拘束され、わずかなスペースでしか身動きができないのは、尊厳を奪われた状態です。
逃げられないように、羽を切られたペリカン
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よく動物園で見かけるペリカンは、空を飛ぶことができる動物です。
ノースサファリサッポロに限りませんが、動物園のペリカンたちは、大抵逃げないように風切羽を切られています。
ですからもう飛ぶことはできず、小さな囲いから外に逃げることはできません。
基本的に狭い場所に閉じ込められている
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ノースサファリサッポロ全体を通して、基本的に動物たちは狭い空間に閉じ込められていました。
キリン、ハイエナ、サーバルキャットが同じ空間に
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キリンとハイエナ、サーバルキャットが同じ空間に入れられていました。
混合展示のつもりでしょうか。
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穴を掘ることもできないアカハナグマ
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アカハナグマは南米に住んでおり、母と子どもたちが一緒に、自然の中で生活します。様々なコミュニケーションを取っており、社会的な動物です。
本来は1日に2kmも歩きますが、ノースサファリサッポロのアカハナグマの動ける範囲は、わずかこの場所だけです。
アカハナグマは本来、穴を掘って虫を食べたりする習性があるのですが、この場所には掘れる土すらありませんでした。
白い動物を見世物にする習慣
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アルビノと呼ばれる、遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある動物は希少とされ、見世物にされることがあります。
本施設でも、「白蛇神社」という名前で白蛇を飾り、賽銭箱やおみくじが置かれていました。
それ以外にも、アルビノのワラビーもいました。
アイリツシユ・ウルフハウンド
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アイリッシュ・ウルフハウンドは、世界で最も大きな犬として有名です。
もともとはヨーロッパの犬で、猟犬として使用されてきました。
小さな柵の中で、見世物にされていました。
ダチョウカレー、クロコダイルカレー、ゲテモノ
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触れ合い体験で、動物の暖かさや鼓動を感じたり、鳴き声を聞いていたはずですが、食べ物になったら動物と認識されなくなります。
様々な動物が使われたメニューが置かれていました。
- ダチョウバーガー
- クロコダイルバーガー
- ダチョウカレー
- クロコダイルカレー
他にも、ヤモリの姿揚げや、サソリの姿揚げなど、「ゲテモノ」と表現されるメニューが並んでいました。
動物園は結局のところ、人が人以外の動物を施設に閉じ込めるのも、食べ物とみなして殺すのも、全ては人間の自由であるという認識を広めています。
これは、命の大切さを伝えるどころか、一部の動物を他の動物よりも価値が低いと見なす種差別を助長し、人々に誤ったメッセージを届けることになります。
日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる
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日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。
様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。
その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。
その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。
あなたにできること
日本全国、ほとんど全ての施設を調査した中でも3番に入るほど劣悪な施設でした。
私達は動物を利用する社会から脱する必要があります。
娯楽に関しては、動物を苦しませない物は山ほどあります。
一人1人の意識を変えてゆき、動物の尊厳を本当の意味で守っていく社会を作りましょう。
では、私たちに何ができるのでしょうか?
✔ 動物園に行かない選択をする
「自分一人が行かなくても変わらない」と思うかもしれません。しかし、動物園の運営は多くの人の選択によって成り立っています。一人が行かない選択をすることで、同じ考えの人が増え、動物を見世物にするビジネスは続けられなくなります。
✔ 問題を広める
多くの人が、動物園の実態を知りません。SNSでシェアしたり、身近な人と話すことで、動物たちの現状を伝えることができます。
✔ 動物を利用しない選択を支援する
動物を利用しない社会づくりをする団体の取り組みを支援することで、動物たちが本来の姿で生きられる未来を作ることができます。
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動物たちは、選択を奪われています。しかし、私たちの選択は、動物の未来を変える力を持っています。動物を利用する社会ではなく、動物の権利を尊重する社会へ、一緒に変えましょう。
調査日:2018年4月28日