水面にただ浮かび続けるイルカ。
のとじま水族館で目撃したのは、野生ではほとんど見られない「異常行動」でした。
本来、イルカたちは広い海で仲間と暮らし、1日に何十キロも移動します。
しかし、水族館では家族から引き離され、狭い水槽に閉じ込められ、生涯を過ごさなければなりません。
ふれあい体験やイルカショーの華やかさの裏で、動物たちがどのような苦しみを抱えているのか。
また、水草も流木もない無機質な水槽に入れられた魚たちや、災害時に命を守られないジンベエザメの姿からも、動物利用の根本的な問題が浮かび上がります。
この記事では、動物解放団体リブが行った「日本一周!動物園水族館調査」で、のとじま水族館で見た動物たちの現状を報告します。
水面に浮かび続けるカマイルカ(異常行動)
調査時、のとじま水族館では、カマイルカが壁に向かってほとんど動かず水面に浮かび続ける様子が確認されました。
本来、イルカは女性を中心とした家族で過ごします。それぞれに名前もあり、人間には聞こえない声でコミュニケーションを取り合っています。また、広い海で、最大160kmも泳いで移動します。
しかし、水族館のイルカは、家族と引き離され、海ではなく狭い水槽に閉じ込められ、命令されて過ごします。
それらによるストレスから、野生ではほとんど見られない「異常行動」を行うのです。
イルカショーはイルカを苦しめる

のとじま水族館ではイルカショーが行われていました。
しかし、イルカショーの華やかさの裏で、イルカたちは自由を奪われ、狭い水槽で生涯を過ごします。
本来、海にいるイルカは人間の命令を聞きません。
人間の命令を聞かせるために、海から連れてきたイルカに対して調教が行われます。
最初は本来イルカが食べない冷凍の魚を食べさせるところから始めます。
最初イルカは冷凍の魚を食べませんが、それ以外に食べ物が与えられないので、最終的にはそれを食べるようになります。
次に、イルカトレーナーは、イルカが手にタッチをしないと魚を与えないようにします。その芸をしないとイルカは食べ物を与えられず、生きることができないので、芸をするようになります。
その繰り返しで、イルカショーでの高度な芸をするようになるのです。

しかし、本来広大な海を泳ぐ彼らにとって、これらは深刻なストレスとなります。日本国内の動物園・水族館でもイルカが水槽の床に頭を打ち続けたり、ガラスに突進したりするなど様々な種類の異常行動が多く確認されています。
人間の娯楽のために、動物を利用しても良いというこの構造そのものに問題があるのです。
ふれあい体験は、動物にとってはストレス

のとじま水族館では、イルカとのふれあい体験も実施されていました。
「ふれあい」という言葉は、あたたかい印象を与えますが、実際には、イルカたちの意志にかかわらず、人間が一方的に体に触れる行為が行われています。
動物側からすれば、
- 抵抗することができず、
- 毎日のように知らない人たちに繰り返し触れられ、
- ストレスや不快感を回避できない
という状況に置かれています。
人間にとっての「楽しい体験」が、動物にとっては「避けられない負担」になっている可能性があることを、私たちは改めて考える必要があります。
「日本一周!動物園水族館調査」の際に、ふれあい体験を担当していたある飼育員にお伺いしたところ、「動物たちは触られるだけでストレスなんです。」と言っていました。動物たちを一番近くで見続けている飼育員は、動物にストレスがかかる事を知っているのです。
水草も、流木も、岩も、砂さえない水槽でモノとして扱われる魚たち

のとじま水族館では、装飾を排除し、LED照明で演出された水槽が設置されていました。
こうした水槽では、水草や流木、岩、砂といった自然環境の再現がされていません。
そのため、魚たちは本来必要とする隠れ場所や休息場所を持たず、常に無防備な状態で過ごすことになります。

魚たちを意識のある存在ではなく、ただのオブジェとして扱っているのです。
人間にとっては美しく見えるかもしれませんが、魚にとってはストレスになり得ます。
目玉になるジンベイザメを入手しようと躍起の水族館

のとじま水族館には、地球上最大の魚ジンベエザメもいました。
ジンベエザメのような広範囲を回遊する種にとって、狭い水槽に入れられることは制限を伴います。
日本の水族館は、客に人気なイルカやジンベエザメを手に入れようと躍起になっています。
日本の監禁施設ではジンベイザメを監禁している施設は4ヶ所あります。
・のとじま水族館 (石川県)
・海遊館 (大阪府)
・かごしま水族館 (鹿児島県)
・美ら海水族館 (沖縄県)
リブが京都で参加した動物園水族館関係者のシンポジウムでは、かごしま水族館の館長があらゆる手をつかってジンベエザメを入手しようとしている姿勢を、別の関係者が怒りを持って諌める場面もありました。
(2024年2月追記)
2024年1月1日に起きた能登半島地震により、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災されました皆様に心からお見舞い申し上げます。
のとじま水族館では、地震の影響で水をろ過する装置が停止するなどして、ジンベイザメのハチベエとハクが死亡しました。
翌月2月には、アドベンチャーワールド(和歌山県)に輸送されたカマイルカも死亡しました。
これまで日本で災害が起こった時に、動物はいつも後回しでした。
施設は動物を大切にしていると言いますが、結局動物は人間よりも下の存在として利用されているのが実態です。
私たちは、動物たちを利用して良いという前提そのものを問い直し、彼らが本来の環境で自由に生きる権利を尊重する社会への転換を目指すべきです。
日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる

日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。
様々な意見はあるものの、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。
リブはその課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。
その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。
あなたにできること
人間以外の動物も、意識があり苦痛を感じることが科学的にも証明されています。
私たちは生活のあらゆる面で動物利用をしてきましたが、これからは動物利用をしない社会に転換するべきでしょう。
では、あなたに何ができるのでしょうか?
✔ 動物園に行かない選択をする
「自分一人が行かなくても変わらない」と思うかもしれません。しかし、動物園の運営は多くの人の選択によって成り立っています。一人が行かない選択をすることで、同じ考えの人が増え、動物を見世物にするビジネスは続けられなくなります。
✔ 問題を広める
多くの人が、動物園の実態を知りません。SNSでシェアしたり、身近な人と話すことで、動物たちの現状を伝えることができます。

✔ 動物を利用しない選択を支援する
動物を利用しない社会づくりをする団体の取り組みを支援することで、動物たちが本来の姿で生きられる未来を作ることができます。

動物たちは、選択を奪われています。しかし、私たちの選択は、動物の未来を変える力を持っています。動物を利用する社会ではなく、動物の権利を尊重する社会へ、一緒に変えましょう。
調査日:2018年11月19日