ゾウの宮子-宇都宮動物園

娯楽に使われている動物

海外からも避難の声が上がる劣悪施設:宇都宮動物園【調査報告】

  • 2018/04/08
  • 2025/01/29

この記事は動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。

宇都宮動物園には、90種400名の動物が閉じ込められており、

  • 50年以上もたった一人でこの場所に閉じ込められ続けているゾウ
  • 本来、土を掘る習性があるアカハナグマの檻には、掘れる土すらなく、匂いもひどく不衛生
  • 近親交配を繰り返すことで産まされるホワイトタイガー
  • 柵をなめ続ける牛

など、人知れず異常行動をしている動物たちが多くいました。

動物は人間から見られ続けることにストレスを感じるため、隠れたがりますが、この施設は全体的に、動物たちが人の目線から隠れる場所が非常に少なかったのも印象的です。

50年間、たったひとりで閉じ込められているゾウの宮子

ゾウの宮子が堀の淵に立っている-宇都宮動物園

栃木県の宇都宮動物園には、宮子(みやこ)というゾウがいます。宮子は50年もの間、たった一頭で狭いコンクリートの囲いの中に閉じ込められています。

話には聞いていましたが、実際に行ってみるとあまりの狭さに驚きました。

狭さだけでなく、堀がある危険な環境は、海外からも大きな批判があります。

ゾウは家族と暮らす社会的な動物です。本来なら仲間とふれあい、1日に100kmを超えるほど広い場所を自由に歩き回ります。しかし宮子には仲間もおらず、足を痛めやすいコンクリートの硬い地面の上で、人に見られ続ける生活を強いられています。

そして、ゾウを専門としている生物学者であるDr. Keith Lindsay氏によると、2023年の宮子は2017年の調査と比較して、足の状態がかなり悪化しており、全体の健康状態も悪化、多くの不快な兆候を示しているとのことです。

死亡したキリンの胃には多数のビニール袋が

キリンの胃にビニール:立て看板-宇都宮動物園

宇都宮動物園では、平成13年にあるキリンが死亡し、その胃の中からビニール袋が見つかりました。施設側は来場者への注意を促す看板を設置しましたが、ここで考えるべきことがあります。

来場者の行動が直接の原因だったとしても、そもそも動物を限られた環境に閉じ込めているのは動物園です。動物たちは自由に移動することもできず、不自然な環境で一生を過ごします。

動物園は「保護」や「教育」を目的に掲げますが、本当に動物を守る方法は、そもそも動物を利用しないことではないでしょうか? 動物を人間の娯楽のために利用することはやめ、動物たちが自然な環境で生きることを尊重する視点が、今こそ求められています。

最悪の環境にいるアカナハグマ

アカハナグマ-宇都宮動物園

宇都宮動物園では、アカハナグマが極めて劣悪な環境に置かれています。飼育スペースは不衛生で、悪臭が漂い、動物が身を隠す場所もありませんでした。

アカハナグマは土を掘る習性を持つ動物です。しかし、宇都宮動物園には土を掘る場所が一切なく、本来の行動をとることができません。その結果、アカハナグマは常同行動(同じ動きを繰り返す異常行動)をしていました。これは、強いストレスや精神的苦痛の表れです。

動物の習性を無視した環境に閉じ込められることで、かれらは心身ともに追い詰められていきます。動物園は「動物を守る場所」と言われますが、実態は「動物を狭い檻に閉じ込め、異常行動を引き起こさせる場所」になっているのです。

障害を抱える可能性が高いホワイトタイガー

ホワイトタイガーはベンガルトラの白変種で、野生でまれに生まれることがあります。しかし、現在世界中で、人間の飼育下にいるホワイトタイガーは全て近親交配によって生み出されたものです。

その結果、斜視や関節形成不全などの先天的疾患を抱えることが多く、飼育下で生まれた約8割が幼くして死亡するとも言われています。それだけでなく、宇都宮動物園のホワイトタイガーは、檻の中を左右に行ったり来たりする異常行動を見せていました。これは、強いストレスや精神的苦痛の表れです。

海外では2011年アメリカ動物園水族館協会は加盟園に対し、ホワイトタイガー、ホワイトライン、キングチーターなどの「異常な」特徴を意図的に得るための繁殖を禁じました。

健康リスクや動物の苦しみを知りながら、「珍しい」見た目のためにホワイトタイガーを生ませ続けることは、非倫理的でしょう。

鉄の棒を舐め続ける牛

宇都宮動物園の牛は、鉄の棒をひたすら舐め続けていました。これは、常同行動と呼ばれる異常行動の一つで、強いストレスや退屈、不適切な環境が原因と考えられます。

牛は本来、広い草地で自由に歩き回り、草を食べながら過ごす動物です。しかし、狭い檻の中でその自然な行動が制限されると、精神的な不安やフラストレーションが異常行動として現れることがあります。

鉄の棒を舐め続ける姿は、単なる癖ではなく、この環境が牛にとってどれほど不自然で過酷かを物語っています。動物を閉じ込めることは「保護」や「教育」とは言えません。

おかしくなってしまったオオタカ

宇都宮動物園のオオタカは、大きな音に過敏に反応し、首を不自然に動かしていました。地面に立ったまま、頭がカクンカクンと後ろに振れ、目が回っているように見える状態でした。

この場所では、大音量のベルや陽気な音楽が鳴り響き、多くの人が行き交っていました。しかし、オオタカは鋭い視力と驚異的なスピードで獲物を捕らえる鳥です。野生では、時速80kmで急降下し、時には時速130kmに達するスピードで飛ぶこともあります。

本来なら大空を自由に飛ぶべき鳥が、人間の騒音に囲まれた狭い檻に閉じ込められ、異常な動きを見せている。この環境がオオタカにとってどれほど不自然で苦痛に満ちたものかは、想像に難くありません。

聴覚の鋭いシンリンオオカミが轟音にさらされている

シンリンオオカミは、遠くの音を正確に聞き取る鋭い聴覚を持っています。わずかな物音や仲間の遠吠えを数キロ先から察知できるほど、音に敏感な動物です。

しかし、そんなオオカミがジェットコースターの轟音が頭上を通り過ぎる環境に閉じ込められていました。

人間でも高架下や飛行場近くでは騒音問題に苦しむことがあります。ましてや、人間よりはるかに鋭い聴覚を持つオオカミにとって、この環境は極度のストレスを生む最悪の場所と言えるでしょう。

生まれて間もないヒヨコたちの無惨な姿

餌にされるひよこ

宇都宮動物園には、まだ生まれて間もないヒヨコたちの無惨な姿がありました。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

動物園では、肉食獣や猛禽類・爬虫類のために餌用のヒヨコやマウスを繁殖させ、生きたまま与える場合もあります。また、一部の動物園では「園内リサイクル」という仕組みが存在し、ふれあい体験で触れられた動物たちが、最終的に肉食動物の餌として回されることもあります。

ふれあい体験は子どもたちに人気ですが、愛でられたヒヨコやネズミが、その後どうなるのかを知る人は少ないでしょう。

宇都宮動物園がこの「園内リサイクル」を行っているかは不明ですが、肉食動物を飼育する以上、「餌」となる動物を確保しなければなりません。しかし、動物園の餌用繁殖は自然の弱肉強食とは異なり、人間が利益のために人工的に作り出したシステムです。

チンパンジーにストレスを与える教育

宇都宮動物園は、日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟し、その役割の一つとして「教育」を掲げています。

しかし、園内では子どもたちがチンパンジーをからかい、怒らせて遊ぶ様子が放置されていました。注意を促すスタッフの姿はなく、動物への配慮が十分とは言えませんでした。

これは「教育」と呼べるでしょうか?

動物を閉じ込めた環境で行われる「教育」は、動物への理解や尊重を深めるどころか、人間本位の関わり方を助長するものになっています。本当に学ぶべきことは、動物を見世物にせず、尊重する姿勢ではないでしょうか。

自分たちの行いは棚にあげ、園の美談にする

2019年、宇都宮動物園は子犬が捨てられたことをブログで公表し、「許さない」という言葉で動物遺棄を強く非難しました。この出来事はSNSで注目され、犬を保護した行動を称賛する声や、遺棄を批判する意見が多く寄せられました。

確かに、犬の遺棄は重大な問題であり、保護することは重要です。しかし、ここで考えるべきなのは、動物園自体も動物を人間の都合で扱っているという点です。

動物園では、ゾウやキリン、ライオン、チンパンジーなど、多くの動物が人間の手によって家族から引き離され、見せ物として生涯を過ごします。犬や猫が捨てられることは問題視される一方で、動物園に閉じ込められる動物たちの境遇には、多くの人が疑問を抱きません。

動物のためを考えるならば、犬や猫だけでなく、すべての動物が人間に利用されるべきではないはずです。動物園の動物たちも、本来であれば人間の支配下ではなく、自由に生きる権利を持つ存在ではないでしょうか?

毎日新聞より:宇都宮動物園に子犬計20匹が捨てられる 「許さない」飼育員ブログで公表

日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる

日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる

日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。

様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。

その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。

その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。

あなたにできること

ゾウの親子

宇都宮動物園で見た動物たちの姿は、動物園が動物のための施設ではなく、人間の娯楽のために動物を利用する場であることを示しています。

では、私たちに何ができるのでしょうか?

✔ 動物園に行かない選択をする

動物園は入場料で成り立っています。私たちが動物園を利用しなければ、動物たちを閉じ込めるビジネスは成り立ちません。

✔ 問題を広める

多くの人が、動物園の実態を知りません。SNSでシェアしたり、身近な人と話すことで、動物たちの現状を伝えることができます。

✔ 動物を利用しない選択を支援する

動物を利用しない社会づくりをする団体の取り組みを支援することで、動物たちが本来の姿で生きられる未来を作ることができます。

リブのメンバー募集中!

動物たちは、選択を奪われています。しかし、私たちの選択が、動物の未来を変える力を持っています。動物を見世物にする社会ではなく、動物の権利を尊重する社会へ、一歩を踏み出してみませんか?

調査日:2018年4月3日

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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