この記事は動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。
宮城蔵王キツネ村は、100以上のキツネを収容し、近くでキツネを見られる施設として観光客を集めています。
しかしその一方で
- キツネ同士のいじめで出血し泣き叫ぶキツネ
- 不潔で負担のかかる金網にいられている
- ふれあい体験でキツネにストレスがかかる
など様々な問題があります。
この記事では、調査によって分かった施設の様子をお伝えします。
いじめられて大出血し、鳴くキツネ
キツネがいじめられ、喧嘩で負け、怪我をして血を流して泣いていました。
すぐ近くに飼育員がいたので、止めるか助けるかすると考え、撮影をしたのですが、振り返るといなくなっていました。
すぐに撮影を止め、スタッフの控室に行き事情を伝え、来てもらいました。
しかし飼育員は怪我をしたキツネを捕まえることができず、「動きが鈍くなるのを待つしかない」とのことでした。場合によっては、そのまま命を落とすこともあると言っていました。
これが、管理が行き届いている状況と言えるのでしょうか。
結局は動物たちは単なる娯楽の消費のために利用され、怪我や病気や喧嘩があっても見捨てられているのが現状です。
人工授精で生み出されるキツネたち
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宮城蔵王キツネ村では、キツネが人工授精で繁殖されています。野生のキツネはエキノコックスに感染している可能性があるため、この施設では「エキノコックスフリーのキツネを直接抱っこできる」ことを売りにしています。
さらに、「キツネの繁殖技術を研究し、技術を習得した」とアピールしていますが、人工授精とは、動物に対して無理やり妊娠を強いる行為です。
動物園や水族館では「種の保存」を目的とすることが多いですが、この施設にいる100匹以上のキツネは、野生に戻されることなく、繁殖を繰り返されています。
キツネたちはなぜ繁殖されているのか? その答えは明白です。「種の保存」という名目を利用しながら、実際にはビジネスのために生み出され、監禁されているのです。
強烈なアンモニアの刺激臭が漂う
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蔵王キツネ村では、糞は取り除かれているものの、尿は地面に染み込み、強烈なアンモニア臭が立ち込めています。この環境は決して清潔とは言えません。
動物園の厩舎では、長期間土を入れ替えないことで動物が皮膚疾患を発症するケースがあります。同様に、この環境で暮らすキツネたちにも健康リスクが懸念されます。さらに、施設内の衛生状況だけでなく、周囲の環境への影響も無視できません。
しかし、メディアや公式サイトに映るのは、綺麗に整えられた一部分のみです。実際に現場を訪れなければ、動物たちの本当の暮らしを見ることはできません。
【動画】不自然で不潔な環境に置かれる大量のキツネ 〔蔵王キツネ村〕
生態を無視した金網の足場
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蔵王キツネ村では、一部のキツネが高い位置に設置された檻に入れられています。その足元は金網になっており、自然の土の上で暮らす彼らの生態とはかけ離れた環境です。
長時間金網の上で過ごすことは、足に負担をかけ、怪我やストレスの原因となります。しかし、こうした施設の問題点はメディアにはほとんど映されず、観光地としての魅力だけが強調されています。
怪我をしたまま放置されるキツネたち
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蔵王キツネ村では、怪我をしたキツネが何頭もいました。傷が治らず痛々しい様子のキツネや、出血しているキツネも見られました。
野生のキツネなら、怪我をすれば自分で休んだり、安全な場所に身を隠したりできます。しかし、この施設では逃げ場がなく、怪我をしたまま他のキツネと一緒に過ごさなければなりません。
動物をビジネスに利用するために、キツネたちは産まされ、自由を奪われ、怪我をしても放置される。
人間にとっては楽しいかもしれませんが、キツネにとってはそうではありません。
ふれあい体験は動物にとってはストレス
宮城蔵王キツネ村では、観光の目玉として「キツネの抱っこ体験」が提供されています。この体験に使われるキツネは、「ふれあい専用キツネ」として狭い檻に閉じ込められていました。
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「おとなしいから抱っこしても大丈夫」というのは人間の都合による解釈にすぎません。人間の赤ちゃんであれば、「泣かないから誰が抱いてもいい」とはならないように、キツネも本来は知らない人間に触られること自体がストレスになります。
さらに、抱っこ体験のために、キツネの赤ちゃんはわずか1〜2ヶ月で親から引き離されています。通常、野生のキツネは4ヶ月ほど親と過ごしますが、この施設では人間に抱かせるために自然な親離れのプロセスが無視されているのです。
公式サイトには、「親が子を送り出す姿には考えさせられるものがある」と書かれていますが、実際には動物園側が意図的に親子を引き離しているという矛盾が見られます。
動物の意思や心身の状態を無視し、観光客の娯楽のために抱かせる行為は、動物にとってストレスでしかありません。
動物を人間のために利用するのはやめるべきです。
日本中の動物園・水族館で動物が苦しんでいる
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日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。
様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。
その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。
その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。
あなたにできること
上野動物園で見た動物たちの姿は、動物園が動物のための施設ではなく、人間の娯楽のために動物を利用する場であることを示しています。
では、私たちに何ができるのでしょうか?
✔ 動物園に行かない選択をする
「自分一人が行かなくても変わらない」と思うかもしれません。しかし、動物園の運営は多くの人の選択によって成り立っています。一人が行かない選択をすることで、同じ考えの人が増え、動物を見世物にするビジネスは続けられなくなります。
✔ 問題を広める
多くの人が、動物園の実態を知りません。SNSでシェアしたり、身近な人と話すことで、動物たちの現状を伝えることができます。
✔ 動物を利用しない選択を支援する
動物を利用しない社会づくりをする団体の取り組みを支援することで、動物たちが本来の姿で生きられる未来を作ることができます。
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動物たちは、選択を奪われています。しかし、私たちの選択は、動物の未来を変える力を持っています。動物を利用する社会ではなく、動物の権利を尊重する社会へ、一緒に変えましょう。
調査日:2018年5月14日