かわいいヒヨコたち

ヴィーガニズム

ヴィーガンは「完全菜食主義者」ではない?定義や理由、実践法について解説

  • 2023/12/01
  • 2023/12/08

最近耳にする機会が増えてきた「ヴィーガン」という言葉。

しかし、どのような考え方なのか、なぜこれまでの生活を変えてまでヴィーガンを選択するのか、等の一歩踏み込んだ内容は知られていないのも事実。

そこで今回は、動物利用問題について専門的に調査、啓蒙活動をしているNPO法人動物解放団体リブが、ヴィーガンについて分かりやすく解説します。

ヴィーガンの定義

ヴィーガンとは、ヴィーガニズムという考えを実践する人のことを指します。

では、ヴィーガニズムとは何でしょうか?

ヴィーガンという概念の発祥である「英国ヴィーガン協会」によるヴィーガニズムの定義は、これまで何度か見直されてきました。現在のヴィーガニズムの定義は、

「ヴィーガニズムとは、可能かつ実行可能な限り、食物、衣類、その他の目的のために動物を搾取し、虐待するあらゆる形態を排除しようとする哲学であり、生き方」です。[1]

ちなみに、日本語ではヴィーガンが完全菜食主義者と訳されるケースが見られます。

しかし、上述の通り、ヴィーガニズムとは食品だけでなく、衣類や娯楽、実験などのあらゆる形態での動物利用を避ける考え方です。「完全菜食」は、ヴィーガンの食生活の側面のみを表しているため、定義としては不十分と言えるでしょう。

ヴィーガニズムの歴史

倫理的な観点から動物利用を避ける人は、紀元前から存在しました。ピュタゴラスやプラトンなどが有名です。

紀元後も様々な人々が、動物搾取を止めることを主張してきました。

そしてついに、「ヴィーガニズム」という哲学が誕生したのは、1944年のことです。

当時ベジタリアン協会会員であったドナルド・ワトソンは、乳製品の利用も含めたあらゆる動物搾取を行うべきではないと考えていました。そこでワトソンは、新たに「vegan」という言葉を作り、11月1日にヴィーガン協会を設立しました。[2] この時、ヴィーガニズムの明確な定義はされませんでした。

1951年、ヴィーガン協会の初代副会長であるレスリー・J・クロスが、「ヴィーガニズムという言葉は、人間は動物の搾取なしで生きるべきであるとする主義」と初めて定義し、ヴィーガン協会の目的を「人間による動物の搾取を失くすことである」としました。[3] 

それから現在に至るまでヴィーガンは増加し続けており、世界では動物園や水族館への反対運動、動物実験の代替の開発、動物を守るための政治・法律の変化などの動きが進み、経済にも大きなインパクトを与えています。

なぜヴィーガン?

では、動物を食べたり着たりすることが当たり前な現代の社会で、なぜヴィーガニズムを実践する人が増え始めているのでしょうか?

それは、意識や感覚を持つ存在を傷つけるべきではない、という価値観が広まっているからです。

その背景には、2010年以降、SNSの発達により動物利用産業の実態が知られるようになったことも大きな要因として存在します。

二つの事例をご紹介します。

乳牛の悲しい一生

私たち人間と同じように、牛たちも、子どもを生まなければお乳が出ません。

酪農業界では、牛の女の子は生後1歳あまりで人工授精を受けます。その後約10ヶ月の妊娠期間を経て、2歳前後で初めての出産を迎えます。[4]

しかし、苦労して生んだ子牛は、生まれるとすぐに母牛と引き離されてしまいます。

牛は母性が強く、お母さんは、子どもを乗せたトラックを追いかけたり、子どもを求めて何日も何週間も叫び続けたりすることもあります。

ちなみに、生まれた赤ちゃんが女の子の場合はお母さんと同じ人生、男の子の場合は乳を出さないので多くの場合は子どものうちに殺されてしまいます。

その後、母牛は搾乳されます。より多くの牛乳を生産するために、乳牛は品種改変され、その結果、1日で20〜30Lもの大量の乳が絞り取られることになりました。そしてまた人工授精を受け、妊娠、出産をし、一年中搾乳ができるように生殖機能をコントロールされています。[5] 

また、このような品種改変によって「乳房炎」に苦しむ母牛も増えています。乳房炎は、乳牛に最も多い病気です。乳房が腫れ上がり、強い痛みを伴い、場合によっては死に至ります。

↓牛の乳房炎、10日目。緑色の矢印: 乳頭の完全な壊死。黄色の矢印:壊死組織の境界だが、乳房上部では壊死領域の境界がはっきりしない。

乳房炎10日目の様子
By L. Mahin – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4541748

人工授精、妊娠、出産のサイクルを3~4回繰り返すことで、乳の出が悪くなった母牛は、最後には低品質の「肉」として売られるために屠殺されます。

私たちの生活に身近な牛乳やチーズなどの乳製品。その陰では、数多くの母牛と子牛の別れや悲しみ、苦しみ、そして死があるのです。

精神が狂ってしまった、水族館のイルカの一生

広い海で自由に生きるイルカは、ポッドという家族や仲間の集まりで暮らし、1日に50km以上も泳ぐこともあります。遊びが大好きで、イルカにはそれぞれ名前もあります。

では、海で自由に暮らしているはずのイルカたちが、なぜ水族館でショーをしているのでしょうか?

それは、「イルカ漁」で捕まえられ、水族館に売られ、調教されたからです。

イルカ漁とは、イルカたちに対して音を使うことでパニックに陥らせ、海岸に追い込み捕獲・殺害する漁です。その際には家族や仲間が目の前で殺されてしまい、海は血で赤く染まります。

水族館に入れられたイルカは、狭いプールでの不自然な生活や、家族と引き離されたストレスから「異常行動」を起こすことがあります。異常行動とは、精神的な疾患が行動に現れたもの。身体的にもアレルギーや胃腸の病気など様々な疾患を抱えています。

異常行動の例:プールの底に頭を打ち続けるイルカ

ヴィーガンが水族館や動物園などの、動物搾取によって成り立つ娯楽を利用しない理由は、動物たちが精神疾患に陥るほどの苦しみを感じていると知ったからなのです。

動物の異常行動について詳しくはこちら

動物利用の全体像を知りたい方はこちら:映画Dominion

なぜ私たちはヴィーガンではないのか

ではここで、私たちはなぜ動物利用を前提とした生活をし、動物が置かれている現状は意識に昇らないのか、少し紐といてみましょう。

動物の種差別教育

人種によって差別することを人種差別と言うように、動物種によって差別することは「種差別」と呼ばれています。

私たちは、成長の過程で無意識的に動物利用に加担するようになります。なぜなら動物利用を促進する教育があらゆる場面に存在しているからです。

例えば、「畜生」「家畜動物」「雑魚」という差別的な言葉などを学び、動物園遠足、小学校での動物飼育、牧場での乳搾り体験など、動物搾取を肯定する経験を促されてきました。

さらには、動物の種類によっても差別があります。例えば、犬や猫などの動物は優しくしてね。豚や牛や鶏などの動物は食べ物だよ、といったものです。

現在の教育を通して、動物は閉じ込めていい、好きな時に触っていい、乳を絞って飲んでいい、食べ物にしていい、などの意識が幼少期から根付いていきます。

「動物は人間より劣った存在、利用していい存在」という無意識の差別教育が行われています。私たちは差別はいけないという教育を受けている一方で、人間以外の動物を差別してしまっているのです。

権利の拡張=社会的進化

私たちは、動物を利用することが当たり前の社会に生まれ、育ってきました。

では、今ある規範は全て疑いようのない常識と言えるのでしょうか?

例えば、現代の私が当たり前に持っている「人権」。しかし、かつては動物と同様、人間も捕獲され、売買され、使役されていました。

すべての人々には権利があるとの国際的な合意がなされ、世界人権宣言が行われたのはつい最近、1948年です。

つまり、今現在、動物が人間によって搾取されているという事実は、今後も同様にそうであるべき根拠にはならないということが分かります。

権利の拡張=社会的進化

歴史的に人類は、強い者が弱い者を利用し、搾取してきました。

しかし、人類は、より弱い者の立場を守るために権利を使いました。権利の拡張は、人類の社会的進化と言えます。

そして現在、動物に権利を獲得する考えが広まり、実践されつつあります。

ヴィーガニズムの実践

では、動物を搾取せずに生きるヴィーガニズムを実践するには、具体的にどのような生活を送るのでしょうか?

動物利用は、食事・衣類・娯楽・実験・野生の5つの分野に分けることができます。ヴィーガンはすべての分野において動物利用を避けます。

ヴィーガニズムの実践

食品

・肉・魚・卵・乳製品、蜂蜜など、動物由来の「食品」を食べない。

・代わりに…穀物・野菜・ナッツ・海藻、そして植物性代替肉・植物性ミルクなど、植物由来の食べ物を食べる。

食に関する動物利用の規模は巨大です。

そのため、食の消費行動を変えることは、動物利用全体の減少に非常に大きなインパクトをもたらします。

以前はヴィーガンの食生活を送ることは大変でした。近年はインターネットで「ヴィーガン レシピ」と調べれば、多くのレシピがヒットし、ヴィーガン先進国では、肉と区別がつかないほどの代替肉がスーパーで売られています。

動物性食品を食べないと必要な栄養素が取れないのではないかと思う方もいると思います。結論は、健康的でバランスのとれた菜食の構成要素を理解すれば、体に必要な栄養素をすべて摂取できます。

それどころか、植物性の食事による健康的なメリットが最新の研究で明らかになっています。

しかし、当然ながら植物性の食事であればなんでも健康というわけではありません。タンパク質や、微量栄養素(ビタミンB12、ビタミンD、鉄など)の摂取量に気をつけることが必要です。

一方、全世界の死亡者数の約70%を占める非感性疾患(がん・循環器疾患・慢性呼吸器疾患・糖尿病等)を予防し、早期死亡などの重大なリスクを防ぐことができます。[6]

衣類

・皮革・ウール・ダウン・毛皮など、動物由来の衣類(靴・鞄)を使わない。

・代わりに…綿、麻、リネンなどで作られた衣類を着る。

最近では、キノコやパイナップルから作られた人工皮革でできた鞄や財布が開発され、一流ファッションブランドやスポーツブランドもヴィーガン対応の服や靴を販売しています。

娯楽

・動物園、水族館、競馬、動物を使ったサーカスなどに行かない。

・代わりに…インターネットや映像、VR、ロボットなどを利用した動物の生態を学ぶメディアを楽しむ。

テクノロジーの発達により、動物を利用せずとも動物について学べる娯楽製品が開発されています。

実験

・動物実験がされた化粧品や洗剤などは、買わない。

・代わりに…ヴィーガンコスメやヴィーガン洗剤などを買う。

医薬品の開発には動物実験が義務付けられていることも多く、代替医薬品がまだ存在しない場合もあります。ヴィーガンの定義に「実践不可能ではない限り」という言葉が含まれています。現段階において、重大な病気やケガの場合、現状の医薬品を使うか否かは個人の判断とすることが現実的です。動物を搾取しない世界は段階的に実現していきます。

日本をはじめとする世界中で、動物実験を行わない医薬品開発の研究が進められています。

野生

・釣り、狩猟、昆虫採集などをしない。

・代わりに…遠くから触れずに観察する。

動物を尊重する教育は、昆虫採集や標本は当たり前では無いと気がつくことから始まります。動物は自然のままに。動物を尊重しよう。

ヴィーガンはつらい?

ここまでの内容を読んでくださった方は、

「大好きなお肉も食べられないのか」

「レザーや毛皮も着れなくなる」

「友達付き合いどうしよう」

もしかしたら「我慢ばかりしなければいけないのか・・」と思っている方もいるかもしれません。

自分の目線で考えると、失うことばかりに目がいきます。

しかし、大事なのは被害者の目線になること。

もしあなたが動物たちの立場だったら…?

美味しいから、便利だから、そんな理由で自分が苦しめられ殺されることを正当化されたらどう思うでしょうか?

もしつらいと感じたら、自分の不便さと、苦しめられている動物たちを天秤にかけて考えてみてください。

さらに、仮に不便だとしたら、そんな社会を変えるのもまた私たちなのです。まずは動物への暴力に加担するのを止めることから始められます。

過去は変えられませんが、未来は変えられます。

動物を解放しよう。

《参照》

[1] The Vegan Society, 「Definition of veganism」, https://www.vegansociety.com/go-vegan/definition-veganism, (2023.07.29).

[2] The Vegan Society, 「The Vegan Society 70 Anniversary」, 2014.10.31, 

https://www.vegansociety.com/sites/default/files/uploads/Ripened%20by%20human%20determination.pdf, (2023.07.29).

[3] Leslie Cross, 「Veganism Defined」, https://all-creatures.org/, https://www.all-creatures.org/articles/veganism-defined.html, (2023.07.29).

[4] 雪印メグミルク. 「ミルクと牛のお話」. https://www.meg-snow.com/fun/academy/milk/cycle/, (2023.07.29).

[5] 株式会社 明治, 「乳牛について」, https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/milk/cow/, (2023.07.29).

[6] WHO Regional Office for Europe, Plant-based diets and their impact on health, sustainability and the environment, 2021 . https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/349086/WHO-EURO-2021-4007-43766-61591-eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y, (2023.07.29).

この記事を書いたライター

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動物解放団体リブ編集部

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