奥飛騨クマ牧場の檻の中のクマ

娯楽に使われている動物

自然の中の監禁施設。劣悪な奥飛騨クマ牧場の実態【調査報告】

  • 2020/01/09
  • 2023/08/21

この記事はNPO法人動物解放団体リブによる、動物目線で動物園や水族館がどのような状況なのかを調べた「日本一周!動物園水族館調査」のレポート記事のうちの一つです。

岐阜の大自然、奥飛騨温泉郷にある観光スポットのひとつである、奥飛騨クマ牧場。

こちらは100頭ものクマを見ることができ、子グマとの写真体験や餌やりが体験できるなどが売りになっていて、毎年たくさんの観光客が集まっている場所です。

しかし、実際に調査に訪れてみると、施設は非常に劣悪で、クマはあちこちで「異常行動」をしていました。

奥飛騨クマ牧場の様々な問題

日本全国を回った中でも、奥飛騨クマ牧場は非常に劣悪な施設として印象深いです。

コンクリートで覆われた、動物にとっては最悪な環境

コンクリートの中にいる子グマ

施設はコンクリートで作られており、それだけでなく、床が斜めに作られています。

斜めにしている理由は、「上から水を流すだけで、糞尿を掃除しやすい」という人間の都合で作られた従来型の悪しき名残です。

このようなコンクリート張りで床が斜めになっている施設にいる動物には、大きな負担がかかり、体を傷めたりけがをしやすいのです。

クマは、このようなコンクリートの中ではなく、緑豊かな森にいるべき動物です。

不衛生な施設に閉じ込められたクマたち

不潔な排水溝

汚水が下のブロックに流れ込んできています。

上から汚水が流れてくる。

他の施設と比較しても、酷い環境でした。人間がここに一生入れられたら狂うでしょう。人間以外の動物も同じです。

しかし、高い塀の中に監禁されているクマ達は、この状況から逃れたくともできません。

精神が狂ってしまったクマたちの「異常行動」

そこら中で異常行動を起こしていた。

目的を持たず、ひたすらに頭を左右に揺らしたり、ぐるりと振り回したり、右へ左へ行ったり来たりしたり、あるいは、ぐるぐる円を描くように歩いたりしています。

動物の「異常行動」を知らない方が見ると、散歩をしているように見えたり、踊っているように見えるかもしれません。

しかし、これは、動物たちの精神疾患の現れである異常行動の一種、「常同行動」なのです。

人間も監禁下に置かれると、似たような行動を起こします。人間以外の動物も同様に精神病に陥り、異常行動を起こします。

糞が、散らかっていました。

この調査時、クマたちは食べるものがなかった状況下で、食糞をしているクマもいました。

参考:【保存版】動物の「異常行動」とは?動物園や水族館の動物のストレス・精神疾患について解説

クマに冬眠をさせない施設

檻の中のクマ

奥飛騨クマ牧場は、クマに冬眠をさせてくれません。

もしクマを冬眠させてしまうと、その間、施設は儲かりません。

(餌があるから冬眠しなくても良いと施設側は主張していますが)

クマの習性を蔑ろにしている施設と言えるでしょう。

薄暗く、湿って苔やカビが生えたコンクリートから覗く子グマたちの目に、世界はどのように見えているのでしょうか。

奥飛騨クマ牧場のメインは、子ぐまのふれあい

施設に監禁される双子のコグマ

100頭ものクマたちを監禁しているクマ牧場は、子グマを産ませようと躍起です。

斜めに作られた施設

このコンクリートブロックごとに、男女年齢で分けられたクマが入れられていました。

観客から見えない奥の青い檻の中にも、大勢のクマが監禁されており、常同行動に陥っています。

施設は、子グマとの写真撮影や、公開などをイベント事として集客しているため、毎年何名もの子グマが施設内で生まれています。

しかし、疑問も生まれます。

生まれたクマの総数と、今監禁されているクマの総数は合っているでしょうか?

そうは思えませんし、コスト的にも見合いません。

だとしたら、いなくなったクマはどこへ行ってしまったのでしょうか?

奥飛騨クマ牧場のスタッフに何度も聞いたのですが、お答えいただけませんでした。

監禁されている沢山のクマたち

子グマとのふれあいは、人からしたら貴重な体験だと思います。

しかし、親から引き離された子グマはそれだけで不安を感じ、人に触れられることにもストレスが大きいです。

ぜひ、自分ごとにも捉えてみてください。

知らない人にベタベタと体を触られてどう感じますか?

ずっと誰かから見られ続ける生活を強制的に送らされる生活はどうでしょうか?

感情は人間だけのものではありません。

至る所に、クマのおやつが販売されています。

観客は食べ物を投げ与え、取れないクマに向かって「下手くそ!」などと声をかけ喜んでいます。

営業時間の間、常にクマたちが餌を欲しがったり、お腹をすかせているという状態です。

満腹なら、クマたちも餌を欲しがることはありません。

つまり、観客があげた餌をクマが食べる構図を予想し、敢えてクマ達を空腹にさせているのでしょう。

飢えをしのぐための人間への必死にアピールは、見ていて非常に悲しいものです

奥飛騨クマ牧場だけではない!日本各地にあるクマの監獄

クマに特化した牧場は、日本各地に存在しています。

それだけクマの魅力は高いと言うことですが、奥飛騨クマ牧場同様、劣悪な環境下であることは変わりませんでした。

どの施設でも、クマが常同行動をしていました。

《日本のクマ牧場 7施設》

北の森ガーデン熊牧場コーディアックヒグマの常同行動がひどい
サホロリゾート ベア・マウンテン唯一冬眠ができる施設
昭和新山熊牧場毛が抜けたり、鼻を怪我している
のぼりべつクマ牧場至る所で常同行動が見られる
阿仁熊牧場(くまくま園)片手のないクマがいる
奥飛騨クマ牧場今回、報告している施設
阿蘇カドリー・ドミニオン廃墟のような施設に閉じ込められている

秋田八幡平クマ牧場で起きた飼育員死亡事故

2012年、秋田県のクマ牧場から逃げたクマが飼育員の女性二人を殺したという事件が起こりました。

これは、施設に監禁されたストレス、クマのエサ不足等、様々な原因が考えられます。

動物を監禁し続けることで、このような事件が今後も起こりうるでしょう。

「日本一周!動物園水族館調査」とは?

日本の動物園・水族館は、動物たちにとって良いところなのか、悪いところなのか。

様々な意見はあるものの、当初、日本全国の施設が実際にどのような状況なのかという網羅的な調査はありませんでした。

その課題を踏まえ、2018年から2019年、述べ9ヶ月に渡って、日本全国ほぼ全ての動物園と水族館、計283施設を周る調査プロジェクト「日本一周!動物園水族館調査」を行いました。

その結果、日本中で動物たちが精神病の一種である「異常行動」をしていることが確認され、動物たちが監禁下で人知れず苦しみ続けているという実態が明らかになったのです。

私たちが目指す社会

私たちのビジョンは、人間による全ての動物に対する抑圧や搾取がない、緑豊かで平和な地球。

動物たちは解放され、自然の中で自由に生き、愛し合い、子どもを育てています。

人類は動物たちをやさしく見守っています。

このような社会を実現するため、私たちは動物利用問題の解決に努めます。

奥飛騨クマ牧場について

奥飛騨クマ牧場は、志村どうぶつ園でも取り上げられていました。

そういったメディアは、綺麗な部分やストーリーを上手く見せるのが得意です。

しかし、施設の汚い部分や、動物たちの異常行動については触れているでしょうか?

動物のことが本当に「好き」であるならば、動物たちを尊重すべきです。

動物にとっての監禁施設である動物園や水族館が存在し続けるのは、利益があるからです。

動物を尊重するならば、そのような施設に行かないこと。

そして、動物たちのSOSに目を向けて、動物を解放させるために声をあげていきましょう。

<補足情報>

〔情報〕
種類:民
所有:奥飛騨熊牧場(株)
運営者:奥飛騨熊牧場(株)
JAZA:〇

〔調査情報〕
133 奥飛騨 クマ牧場 (181126/岐阜県高山市)
調査日:2018年11月26日
写真:https://photos.app.goo.gl/YP5ywm6FL8ncSqhF8
動画:https://www.youtube.com/playlist?list=PLQT1RmSZIgCr2mYOaJomKF_oZH-8X1tFF

この記事を書いたライター

リブ_シンボル

動物解放団体リブ編集部

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